「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
関金温泉の巻

 かつて「がきデカ」で一世を風靡した山上たつひこのマンガに、脱衣場が男女一緒で、浴室は男女別になっている温泉宿の話が出てくる。描いた本人も、まさかそんな温泉が実在するとは思わなかったのだろう。
 実際、脱衣場は男女別々で、中に入ると混浴で、あ〜ビックリ、あ〜嬉しい、あ〜恥ずかしい(人によってそれぞれだろうが・・・)という例は沢山ある。「あ〜嬉しい」ということはほとんどこれまでなかったけれども。
 人間心理の不思議さで、脱いだり着たりしてる途中の方が、素っ裸になってる時より恥ずかしい、といった気持ちが働くからなのか、それとも、何か日本特有の歴史的意味でもあるのか、寡聞にしてそのワケは知らない。しかし、田舎の温泉には、結構この「中だけ混浴」は多い。

 ところが、あるのだ、逆パターンが。笑っちゃいますな。

 鳥取は三朝温泉の近く、廃線になった倉吉線の終点から少し奥、関金温泉の「地蔵湯」という小さな共同浴場がそれなのだ。細い坂道を下りた谷川の横に、めり込むように建っている。
 文章であれこれ説明するより、図解した方が手っとり早い。



          



 上の通り。こんなケッタイなのは他に例を見ない。もし、他にもあるというなら教えて頂きたい。必ず行って確かめることをお約束する。

 しかし、ここは中々ひなびた、田舎の湯治場の雰囲気があって好感が持てる温泉だと思う。またもひとつ申し添えるならば、この関金、ラジウム含有量では三朝についで日本第二位、つまり世界第二位という放射能泉の名湯でもある。
 「温清楼」という数寄を凝らした有名旅館や、簡保の宿もあったりして、迷湯なのは、この共同浴場だけなので、念のため。

 興味のある方、蒜山や大山にも近いので観光がてら立ち寄ってみられてはいかがでしょうか?



2004補足
 実は女湯の壁に脱衣棚がこしらえられてあることが、その後再訪して判明した。エッセイのテーマがコケてちょっと残念である。
Original 1996 Add 2004
----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
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