「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
龍野小唄でYoi!Yoi!Yoi!


発売元の楽器屋さんは既に絶賛廃業中です。

 ------〽山は鶏龍、流れは揖保よ
     龍野よい町 あの春がすみ
     通う白帆も いそいそと いそいそと
     タタタ 龍野はよいよいよい

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 ワリと最近のハナシなんだけど、ちょっとした縁で「Yoi!Yoi!Yoi!」ってイベントを観て来た・・・・・・っちゅうたら正確ぢゃないな。体験して来た・・・・・・う~ん、そぉ言っちゃうと何だかアート臭くて高踏気取ってるみたいだい。まぁ平たくゆうと、ライブを観て会場に設置されたテントサウナに入ってノー天気にみんなでダベりましょう、ってな「飲んで騒いで踊ろうや」的ユル~いイベントに行って来た。主催者の方はシリーズものにしたい意向だけど、まだまだ試行的で至らぬ点があるってコトで、Ver0.8っちゅうてたっけな。1.0にはまだちょと足んない、みたいな。謙虚やね。

 「ゐの劇場」っちゅうて、龍野の旧市街の廃業した醤油蔵がそのまま再利用されて今では町おこしのイベントスペースになってて、そこが会場だった。日本最大の淡口醤油の町である龍野界隈には明治の最盛期には60軒もの醤油蔵がひしめいてたそうだが、醤油消費量の減少や寡占化、再編等が進んだ結果、今はガリバーのヒガシマルが一人気を吐くだけで、後はもぉ数軒しか残ってない。会場となったここも数年前についに力尽きて、販売会社のみ残して生産は近所の蔵に委託っちゅうか統合っちゅうか、要は自前で作らなくなっちゃったらしい。OEMっちゃぁ今風で聞こえは良いんだが、要は醸造元としては廃業だわな。

 そぉいや30年以上前に城跡の上の方の公園周辺に立ち寄ったくらいで、これまでマトモに旧市街を歩いたことがなかった。ちょっと早目に着いて、狭い通りが縦横に走る街中をブラブラしてみる。時が止まったような廃市の佇まいは変わらない。恐らく30年後も変わらないだろう。その時にゃおらぁもぉおらんだろうが。そこに今も人々が暮らし、世代だって変わって行ってるにもかかわらず、全てが何十年もそのままに退嬰の中でユックリと朽ちて行っているような独得の雰囲気・・・・・・って、昔は何か工事現場の足場の鉄パイプを組んだような薄暗いアーケードがあった気がするんだけど、おれの記憶違いかはたまた撤去されたのか、秋の朝の陽射しに白々と照らし出された人通りの殆どない道が続くばかりだ。
 そんな道をタラタラ歩くうちに目的地のゐの劇場に到着。リハやってるのか、閑静な街並みにドラムとベースの音が響いてる。う~ん、ちょっとばかし早く着き過ぎちゃったな~。おらぁヘンな所で生真面目っちゅうか癇性病みっちゅうか、こぉしたイベント事はとにかく遅れるのがイヤでいっつもマージン見過ぎて早く着くのだ。
 でも、メイキングのビデオがおもろいのと同じで、実のところこうしたイベントにいっちゃんリアリティを感じるのは本番前後だったりするんだけどね。

 しっかし敷地内、これ醤油蔵そのまんまやん。土蔵の巨大な蔵がまぁハコに転用されてるのは分かるけど、レンガ造りの煙突とか殺風景な事務所とか倉庫とか全て現役の時の姿で残してある。シャッターが開いて醤油の一升瓶の木箱をパレットに積み上げたフォークリフトがヌッと出て来てもおかしくない。良い雰囲気だ。まぁ実態は資金不足でそこまで改装に手が入れられないだけなのかも知れないが、偶然にもそれがひじょうに好印象を与えてるように思えた。
 昨今レトロブームとやらで旧い建物を活用するのが流行ってるけど、ゆうたら悪いがガワだけ最低限残してホレホレ!昔の姿で保存してんでっせ!ウリウリィ~!みたいな安っぽいケースが目立つ。しかし、レトロなんて周囲のストラクチャーまで全部ひっくるめて歴史が感じられるのだ。だから横浜の赤レンガ倉庫なんて最低だと思う。周りに何も無いんだもん。
 そんな片隅から煙が出てる。見ると目隠し替わりの塀の向こうにテントがポンと張られてあって、そこがどうやらサウナらしかった。出たトコにはステンレスの浴槽も置かれてある。これが汲んだ井戸水の水風呂なんだろう。

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 ほぼほぼ定刻通りにイベントはスタート。仕掛人の口上で、このイベントタイトルが往時の龍野の隆盛を伝える小唄から採られたことを知った。冒頭に上げたのがその歌詞だ。何でもたつの市民は踊り含めて今でも小学校で習うことになってて、運動会とか夏祭りで踊るらしい。何と地元の神社にまで色々ナシ付けてたみたいで、続いては録音だったけど神主さんのイベント成功祈願の祝詞奏上まで流された。

 登場したバンドは神戸のExiotic Skates。チャージそれなりなだけあって、チャンとしたプロのバンドだ。この手のローカルイベントでバンド出て来るっちゅうと、往々にして地元のアマチュア連中のカバーソングの発表会、それも「いつまでそこで止まってんねん!?ジジィ!」って茶々の一つも入れたくなるようなビートルズやらベンチャーズばっかしになりがちなのを、かなり気合入れてイベントをオーガナイズしたことが伺える。
 音はジャズ+ファンク+スカ/レゲエみたいなミクスチャーっぽい感じ。「リンゴ追分」をカバーしたスカタライツをさらにカバーしたのもやったもんな。ジャンル的にはあんまし詳しくない方面なんだけど、とにかくMC含めてむっちゃ巧い。ドラムはシンプルな3点セットにベースは漢なプレシジョン、余計な小箱も殆どなしっちゅうリズム隊はヘンなオカズ入れまくることもなくガッチリ骨太やし、キーボードはオルガン1台なのに複雑なディレイの操作でシンセみたいな音まで出してバキバキだし、サックスはフリーキーなようでオーセンティックにも吹き倒すし・・・・・・結成はつい最近なものの、流石メンバー各人のキャリアがスゴいだけのことはある。
 な~んてむつかしいことはまぁどぉでもエエよね。言うだけ野暮や、っちゅうねん。やっぱしデカいPA通したライブっちゅうんはエエもんやなぁ~。ライブはとにかく腹に響く音とノリやな。音楽はやっぱし音が楽しいから音楽なんやろなぁ~。自然と身体が揺れる。

 何曲くらいやったかなぁ~・・・・・・途中かなり長い休憩挟んだりもしながら、最後は件の龍野小唄をダンサブルにアレンジしたので終了。〽タタッタ、龍野はヨイヨイヨイ~、ってみんなで踊るのはぶっちゃけ少々恥ずかしかったっす。右手上げて、左手上げて、ちょっと下がって両手を八ノ字末広がりに広げて、最後にポンと手拍子みたいな。芸者の座敷踊りみたい(笑)。

 演奏は熱かったが、それにしてもやはり土蔵ゆえ底冷えして寒い。当たり前やわな。酒にせよ醤油にせよ味噌にせよ、発酵させる場所は低温が基本なんだから・・・・・・でももぉ作ってへんねんからストーブくらい置いといてーな。
 実はこの日は一つ前の駄文で書いた通りで、風邪だかコロナだか知らんが引いたのがいつまでも長引いててあまり本調子ではなかったのだ。ぶり返したらヤバい。ヌルかったらどうしようとそれまでは入ってなかったサウナに向かうことにするが、如何せん定員あるんですぐには入れない。これはガソリン入れて身体の中から熱するしかないな、と焼酎ロックをちびちび啜ってたら順番が回って来た。
 ・・・・・・スンマセン!ナメてました。テントやからヌル~い低温サウナを想像してたらじぇんじぇんちゃいました。フツーに高温のドライサウナと変わらない暑さ、もとい熱さだ。先程までの胴震いする寒さはどこへやら、全身からブワーッと汗が噴き出す。酒もアッちゅう間に抜ける。先程のバンドメンバーの人たちも入れ代わり立ち代わりやって来た。

 思えばこんな風にバンドの音をハコで生で聞いたのは何年ぶりだろう?狭いサウナで知らない人と世間話に花を咲かすのも何年ぶりだろう?社畜とまで卑下する気はサラサラないけど、何だかんだで組織に搦め取られ、いつの間にか自宅と職場の無味乾燥な往復に終始するだけのいささかオールドスクールな会社人間になって沢山のことを置き去りにしてたよな・・・・・・水風呂に首まで浸かって暮れなずむ空に聳える煉瓦煙突を見ながら、ボケ―ッと色んな思いが去来する。

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 サウナっちゅう外圧のムリヤリだったせよとにかく大量に汗をかいたのが功を奏したか、その日以来、風邪はウソのように良くなった。

 ところが、治ったのと入れ替わるかのように何だか妙に目がボヤ―ッと霞む。眼鏡いくら拭いても拭いても風景が滲んで見える。おっかしいなぁ~?数ヶ月前に眼鏡は新調したばっかしなのになぁ~?・・・・・・と、よぉ~く目を近付けてレンズの表面見てビックリ仰天。
 まるで割れた自動車のフロントガラスみたいに細かい格子状の亀裂みたいなんがビッシリ一面に入ってるではないか。慌てて近所の眼鏡屋に持ってくと、店員のオネーチャンに冷めた調子ですぐさま指摘された。

 ------最近、眼鏡掛けたまま、サウナ入ったりとかされませんでした?
 ------あっ!入りました。
 ------このレンズ、ブルーライトカットだとかいろんなコーティングされてるんで、すごく熱に弱いんですよ。
 ------そうだったんですか・・・・・・。
 ------自宅のお風呂も良くないくらいなんです。
 ------えっっ!?そぉなんですか!?
 ------はい・・・・・・って、ご存じなかったですか?
 ------いや、一応は知ってましたけど、そこまで繊細とは・・・・・・。
 ------分かりました。では「ウッカリ」ってコトで今回は保証期間内なんで半額になります。

 しょえあぁぁ~っ!ナンボ半額っちゅうたかてレンズ交換に1万円くらい掛かってしまった。浪々の今の身にはぶっちゃけそれほど安くはない金額だ。そらまぁ迂闊に眼鏡掛けたままサウナに入ったおれがはアホだっただけなんだけど、う~ん、意外と高く付いちゃったな。トホホのホでヨイヨイヨイ。


中はホンマ、「スペース」。この素っ気なさが気に入った。

2023.11.16

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