「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
報われない努力


使ったことない人は是非一度試して欲しい逸品。

 突然は急にいきなりだしぬけに、唐突にここで一つなぞなぞを・・・・・・。

 ---すればするほど報われない努力って、なぁ〜んだ!?---

 答えは「企業努力」である・・・・・・一つ但し書きを付けるならば、アタマに「日本の」って加えても良いかも知れない。

 新製品開発や性能あるいは品質、安全性向上のための努力ならまだ分かるが、一般的に「企業努力」っちゅうのは価格を可能な限り抑制、それどころか下げるための様々な、そして往々にして涙ぐましいまでの努力の事を指している。だがおれは常々、こんなことばっかしてちゃ絶対に日本は先細りになるよな〜、って思ってた。努力ってのは頑張るってコトなんだから、報われなきゃナンセンスだし、こんなバカなこと続けてたらいつかどこかで大きな歪みが顕在化するに決まってる。そしたら実際そんな風になって来たからシャレになんない。

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 一例を挙げてみる。

 襟袖の汚れが良く落ちるんで、おらぁかなり昔から「ウタマロ石鹸」ってのを贔屓にしてる。水色のカタマリのヤツね。洗濯機にカッターシャツとか放り込む前に適当に擦り込んどくとホント良く落ちる。ケチャップやらカレーを跳ねさせたんとかもちょっとヌリヌリすればOK。そんなすぐに減るモンでもなし、一個洗面台のトコに備えとくとホンマに便利だ・・・・・・で、かつてはコレ、一個200円前後で売られてたように思う。んん〜、もちょっと高かったかな?
 そらまぁ通常の固形石鹸よりは全然値段高いけど、一回り以上サイズ大きいし、かなりカチカチで減りにくいし、そこまで目クジラ立てるほどでもない・・・・・・どころか、その絶大な効き目からすりゃむしろ安いくらいぢゃないかって思ってた。
 そもそもその存在を何で知ったのかは忘れた。が、とにかくそうして最初に情報仕入れて買った頃は、マトモな大手スーパーとかにはあんまし置いて無くて、ちょっと怪しいバッタ屋っぽい店のコーナーの片隅に地味にあるだけだった。だからいっちゃん初めの買い始めた頃は、ケッコーあちこち捜し歩いた記憶がある。

 ・・・・・・それが、ですわいな。そうしてかつては知る人ぞ知るマイナーな存在だったのが、あちこちのメディアに取り上げられるようになって購い求める人が増えたせいか、どこでもフツーに見掛けることが増えた。そしてここが大事なんだけど、値段はいつの間にか半額近くになってる。先日なんて特売で98円で山積みになってるのも見たな。
 いやまぁそれが大量生産によるコストダウン、っちゅうコトなんだろうし、今まで愛用の品が安くなったんだからただもう素直に喜んでりゃエエんだろうが、何かおらぁとってもフクザツな気分になったのだった。だってさぁ、今までの何倍か忙しくなったのに、それだけ儲けが付いて来ないって割り切れまへんやん。
 半値で売ってやってけるっちゅうことは、恐らく数では3倍以上とか売れてるんだろう。だからグロスでの儲けは増えてるんだと思うし、設備その他、生産性の向上で利ザヤが取れるようになったんだろうが、それでもその生産体制を実現するための機械類の投資とか、新たに雇い入れたスタッフ、増産のためにあーでもないこーでもないと傾注された工夫、ヘタすりゃ拡張のための土地取得や建屋の建設とか考えると、いささかワリが合わないような気がするのだ。それに、今までと同じ儲けを確保するには今まで以上の数を売らなきゃなんないワケで、こりゃどう考えたって損益分岐点は上がってる。なのに誰もおかしいとは思わない。

 つまり、「大量生産によるコストダウン」ってロジックには、本質的にどこか大資本は悪で、薄利多売の豊作貧乏は当然なんだ、ってな価値観がその底流に大きく横たわってる。

 いや、別に中小企業を擁護しようってツモリは毛頭ないし、件のウタマロ石鹸が零細な町工場に毛の生えたような存在であり続けた方が良かった(・・・・・・って、実際この会社がかつてどぉだったか、今はどぉなんかは知らんよ)、と言いたいワケでもない。あくまで分かりやすい例として取り上げただけだ。
 え〜っと、誰やったっけ?外人のシャチョーがゆうてる「日本は中小企業を保護し過ぎておかしくなった」って主張は正鵠を射てると思う。ホント、根拠が曖昧な補助金まみれでズブズブやもん。
 おれが言いたいのは、企業が真っ当に頑張って、それで売上やら生産量が増えるほどに率でドンドン利益が出にくくなってくようなのはおかしいんちゃうやろか!?ってコトだ。

 そしてこうした豊作貧乏なモノって、食料品や生活雑貨といった元々値段の安い生活必需品ばっかしってのも如何なモノかと思っちゃうよね。おれがスイスの高級時計やLVMHの高ビーな商売に感じる苛立ちと裏表である。日本中がこんな商売の仕方続けてちゃぁ、どれだけ高品質なモノ作ったって、そらブランド価値やステイタス性は上がりませんわな。上がる方がおかしい。

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 この10月から色んなモノが一斉に値上がりした。言うまでもなくロシアによるウクライナ侵略と、今や世界で孤立状態になった低金利再作継続による円安がもっぱらの原因だ。生活必需品もまた例外ではないが、そんないきなり何倍にもなったワケではない。件の「企業努力」とやらによっても吸収しきれなくなった分、金額にしたところで僅かに10円とか20円とか、遠慮しぃしぃマコトにいじらしい限りである。これほど理由のハッキリした物価高も珍しいと思うし、西側社会はそれくらいのガマンは応分にすべきではないかと思うんだけど、阿呆なメディアは「庶民の台所を直撃」だのなんだのと相変わらずの使い古されたチョーシで報じている。霞食って生きろ!っちゅうんかねぇ・・・・・・。

 ・・・・・・ってか、おらぁもっと値上げはあって良いとさえ思ってる。特に上に挙げたような生活必需品については10円20円などとケチ臭いコト言わず、水準調整のためこれを機に思い切って2倍とかに上げるべきだろう。大体今までがおかし過ぎたのだ。安過ぎたのだ。だって、永年に亘ってホンマあらゆるモノが値上がりしてへんかってんで。玉子とモヤシだけちゃうで。

 それでどうなるか!?もちろんタイムラグはあるだろうが、追っ付けそれこそ中間層以下での財布が潤うようになって来るハズだ。そうなれば景気は必ず上向く。

 個人的におれはアベノミクスとやらは日本の貧困を加速させただけの救いようのない下策だったと思ってんだけど、その初期のキーワードの一つに「トリクルダウン」ってのがあった。まず富裕層が潤えばそのおこぼれ(雫=トリクル)が貧困層にも落ちて来て社会全体が潤うだろう、ってな考え方らしいが、それ知っておらもぉ引っくり返りそうになったね。
 ちなみに、このアベノミクスによって雇用が拡大したって意見もある。一面それは事実だが、しかしその大半が低賃金のパート・アルバイト・派遣といった流動層だった、ってコトももぉちょっと知られるべきではないかと思ってる。要は不安定なその日暮らしの貧乏人が増えただけなのだ。

 さてさてトリクルダウン、どうして引っくり返りそうになったか?っちゅうと、こんなおめでたい言説が21世紀の日本で通用すると踏んだのがそもそもどぉにかしてるからだ。ここまでの脳内お花畑も珍しい。もぉアホか!?・・・・・・と。
 現代の資本主義国家に於ける真の金持ちって、そんなバカな消費をそもそもしないのだ。ガチの富裕層は吝嗇とまでは言わないまでも、おしなべてみなその所得水準からすれば普段はエラく倹約家である(・・・・・・だから金貯まる、っちゅう説もあるが、笑)。ちょと財を成したからって嬉しくなって、しょうむないコトにバカスカ金遣うのは成り上がりな人たちだけと言っても過言ではない。散財は今やノーブル・オブリッジには含まれとらんのであって、つまり富裕層をナンボ潤わしたって、ペーパーマネーが増えるばっかでトリクルなんて滴り落ちて来ないのだ。まぁお湿り程度は落ちて来ないこともないだろうが・・・・・・そして事実そうなったのは、今の世の中を見ればよく分かる。

 ここまで書けばもうみなさん分かっていただけるだろう。

 生活必需品の大半は、それなりの装置産業で作られてる。つまりそれなりの大資本・大企業によって作られてる。そして全てではないだろうが国内生産だって依然として多い。加えてそれに従事する人は未だにひじょうに多い。統計的な数値があんのかないのか知らんけど、労働人口全体の何割とか、そんなかなり膨大なレベルではないかと思う。もちろんこれまで生産拠点の海外移転等で国内生産の空洞化なんてことが叫ばれたりもしたが、それは御家芸だった白物家電であったり糸ヘン産業だったりで、全てではなかった。
 これまでそうした層が「企業努力」とやらのシワ寄せを喰いながら、その品質に見合わない異常なまでに低価格な事業構造に甘んじて来てた。モノだけではない。サービスなんかもそうだ。低価格であるってコトは、やはりどれだけ一人当たりの生産性を上げたって、畢竟低賃金に寄ってかざるを得ない。

 ここが・・・・・・まさに中間層がハマるんだろうが、真っ当なそれこそ努力に見合う値上げによって潤えば、金が回る。しかし、言っちゃぁ何だがやはり中間層ははだから中間層、所詮は庶民、ちょっとお給料が上がれば嬉しくなって自分に御褒美だとかナントカ金遣っちゃうのである(・・・・・・もちろんおれもここにいる、笑)。そんなセグメントでガンガン金が回り始めるって算段だ。

 トリクルダウンなんかより絶対効果ありますって。いや、マジで。

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 この、「努力なのにすればするほど報われない」っちゅう奇妙で馬鹿げた「企業努力」を無理強いしてきた流通業界については、これまでも散々書いてきてるんで、今回は割愛させてもらおう。これについて書き始めたら紙幅・・・・・・ったってHTMLシートだから延々と書けるんだけど(笑)、終わらなくなる。

 繰り返す。ヘンにここで競争原理とか神の手とか言わず、国主導で思い切って生活必需品の価格水準全般を引き上げると同時に、労働分配率ガッと引き上げさせれば、「企業努力」っちゅう一種のおためごかしの下にボロボロになった日本の色んな産業や労働者も少しは復活できるだろう。

2022.10.15

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