「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
孤立せよ!


・・・・・・名盤なのか迷盤なのか、いささか判断に苦しむ怪作だとおらぁ思ってますが。

 ---吾十有五而志於学
   三十而立
   四十而不惑
   五十而知天命
   六十而耳順
   七十而従心所欲、不踰矩

 有名な孔子の言葉であって、特に40歳での「不惑」はよく使われる・・・・・・って、いやいや、大上段に振りかぶりたいワケぢゃない。「天命」ってコトを否応なしに考えざるを得ない年齢を既にいくつも過ぎて、自分の思考回路や立ち方みたいなんが少しは分かって来たのかなぁ〜、って言いたいのだ。もちろん、幾許かどころかかなりの諦念と共に。

Day after day, alone on a hill
The man with the foolish grin is keeping perfectly still
But nobody wants to know him, they can see that he’s just a fool
And he never gives an answer

But the fool on the hill sees the sun going down
And the eyes in his head see the world spinning around

Well on the way, head in a cloud
The man of a thousand voices talking perfectly loud
But nobody ever hears him or the sound he appears to make
And he never seems to notice

 続いては有名なビートルズの「フール・オン・ザ・ヒル」。「マジカル・ミステリー・ツアー」に収められた佳品・・・・・・っちゅうか妙に弱々しくてピッチの覚束ないフルートがほぼ全編に亘ってヒョロヒョロ鳴り続ける、何ともヘンテコリンな感触の曲だ。メロトロンっぽいけど本物のフルートで演奏されてるらしい。まぁポール松川流の少々アシッドでおサイケによじれたトラッドフォークやね。

 自分がここに歌われるような賢者だと自惚れる気はサラサラないが、どうにもおれはこの歌の主人公のように周囲から理解されにくい点が多々ある。おれ自身はさほどカッ飛んだ話をしてる気はないのに、周りからすると意見が極端過ぎたり、あまりにストレートに結論を言ってるように見えて、「そんなんゆうてもぉ〜」って引かれてしまうんだそうな。まぁ極端ではないけれど、少し「近寄りがたい変人」っちゅうカテゴリーにいるらしいのである。

 そらまぁおらぁたしかに、徒党を組むとか連帯するとか、団結とかオーガナイズとか大嫌いだ。しかし、だからって自分自身は日常生活でムリに孤立してたいワケではないし、なるほど狷介固陋で平明ではないかも知れんが、そこまでややこしいキャラクターでもないと思ってる。まぁ若干の人嫌いは認めるものの、仲の良い友人とかはそれでもケッコー沢山いるワケで、付かず離れず程度に誰とでもフランクにやってければエエなぁ〜とさえ思ってる。なのになのに嗚呼それなのに、世の中そうカンタンには問屋が卸してくれない。困ったモンだ。

 ・・・・・・って、はて?何が困るんだ!?

 そこまで考えて分かんなくなった。今回の話はそっから始まる。あんまし纏まらんまま書き散らかすんだけどさ。

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 一方ではもぉこらぁ持論なんだけど、「孤独は人を狂わせる」って、ずっと昔から思ってたりもする。何だかワケ分かんないから説明すると、自分なりに「孤立」と「孤独」には次のような違いがあるんぢゃないか?って今は思ってる。

 「孤立」は、ある特定の組織の中で浮いた状態と言えばいっちゃんニュアンス的に近いかも知れない。組織には幼稚園から始まり、小〜中〜高、、大学、会社等が当てはまる。時に社会そのものってコトがあったりもするから厄介だ。もちろんクラブやサークルなんかも含まれる。要はある共通の目的なり条件を持った人の集合体、ってコトになるだろうか。それ言い出したらバンドもそうなんだろうけど、不思議とそこは上手くやれてたな。あ!家族もまぁ最小単位の組織体って言えるんだろうけど、これもまぁチャンとやれてる・・・・・・と思う。ちょと自信ないな(笑)。
 「孤独」はかなり感覚的なことではないかと思う。絶海の孤島に一人流れ着いたり、「ポツンと一軒家」みたいなトコにいても孤独を感じることなくノホホンとやれてる人もおれば、沢山の人に囲まれいろんなコミュニケーションはあるハズなのに耐えがたい孤独に苛まされてる人もいる。組織に属してようがいまいが、孤独はあるっちゅうこっちゃね。

 もちろん孤立と孤独は地続きだったりするコトある。卑近な例としてイジメの基本テクの一つに「シカトされハブられる」っちゅうのがあるくらいで、悪意で以て集団の中でコミュニケーションを断たれるのは人によっては実に堪らんコトだろう。まぁ、その根底にあるのは集団に帰属していたい・・・・・・すなわち「群れていたい」っちゅう欲求ではないかと思うが、それが理不尽に叶えられないってのは辛い・・・・・・と。
 それを嗤ったり否定したりする気はない。ただまぁ、元々そんな欲求が薄い・・・・・・っちゅうか、群れることによって得られるであろう様々な安心と引き換えの様々な他の我慢を天秤に掛けて、我慢してる方がやっぱしんどいや、ってすぐに思ってしまうおれみたいなんもいるワケで、一概に地続きとも限らないのがいささかややこしい。

 ネチネチ回りくどく書いてしまったな〜・・・・・・ま、要するに必ずしも「孤立=孤独」なこともあれば、そうでないこともあるっちゅうこってす。連続性は約束されてない。

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 もう40年近く前のことだから書いちゃっても構わんと思うが、大学生の初めの頃に所属してた自転車クラブでのエピソードを書いてみよう。

 その日は来たる学園祭の模擬店で何やるか決めよう、っちゅうコトで部員は招集されたのだった・・・・・・って、決めるも何も完全に出来レースやんか。上級生の誰かが言い出した「手作り餃子」ありきになっちゃってる。前日に大量に仕込んどけば、昼間はバンバン焼きまくるだけなんでカンタンでエエやろとかナントカ、太平楽が並べられる。
 アホではないかと、おらぁ即座に思ったね。出来合いを仕入れるならともかく手作りって、キャベツや白菜、ニラといった材料の膨大な切り込みと仕込み、素人が餃子を包む大変さ、どんな環境で一晩置くのか分からんけど、冷蔵ならナンボ打ち粉をしようとも餡から水が出て皮がグジュグジュになってしまうこと、また、タコ焼きやお好み焼きに匹敵する回転効率の悪さ・・・・・・どこをどぉ考えたって思い付きだけで上手くやるにはハードル高すぎるやんか。
 ボードメンバーの中に自分でイチから餃子作ったことのあるヤツがおらんかったのか、それともみんなエラい先輩が言い出したことだからなのか、何も言わずチマッとなって黙ってる。たかが2つ3つ年嵩ってだけで、どうしてあんなにクラブの先輩って権力を握れるんだろうね。

 余りに誰も何も言わないんで、おらぁ上記のようなコトを率直に申し上げた。みんなサーッと引いて行くのが良く分かった。そうして非難の眼差しは結局おれに集中してしまったのだった。もちろんおれも若かった。いささか識ってるだけでなく実際に経験があるが故のどこか不遜で尊大な態度が見え隠れしてたであろうことは認める、ハイ、そこは認めます。
 でも結局は何を言うか?ではなく誰が言うか?なんだろう。新人が上級生に対して反対意見述べるなんてアナタ!百万年早くってよ!ってな空気を読まなかったおれが悪いワケだ。それも新入生らしく先輩の勧めに素直に従ってアイバサイクルでガンウェルにサンツァーやスギノではなく、いきなりカタオカでビゴーレのフレームにカンパやTAで組むような(←この時もちょっと色々ヤッカミ半分でイヤミ言われたりもしたな)、そんな鼻持ちならないヤツが先輩に意見するなんてありえねぇ〜!キィィ〜ッ!

 ・・・・・・知るかボケ!ビゴーレもその時おれが欲しかったから死ぬほどバイトして組んだだけだ。自分の甲斐性でやったコトにガタガタ言われる筋合いあらへん、っちゅうねん。ともあれこんなキモチ悪い集団に帰属していたくねぇ!ってホトホトおらぁ思ったね。ここまでもそうして時折コンフリクトはあったものの、それでも新参者なんだからとしおらしく我慢してたのだったが、いよいよアホらしくなったおれはこの一件を機にそのド腐れなクラブを辞めた。その後の学園祭でめでたく餃子は強行され、危惧した通り原形を留めない団子状のモノが売られてたけど、それをとやかく言う気も起きなかった。どだいもう辞めて部外者なんだし、言う権利もなかろう。
 最近流行りのコトバで言えば「忖度」なしにおれは意見し、そして誰もそれに耳を傾けなかった。それだけのことである。だからその後の顛末については知らない。

 客観的に言えばおれはクラブ内で孤立したんだろうが、ちっとも孤独は感じなかった。むしろ清々した。こんな連中に与してお付き合い続けたって無意味だし、ストレス溜まるだけだと少なくともその時はそう思ってた・・・・・・今でも思ってるな(笑)。

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 そうそう、10年ほど前に社外のとある大事な会議に出席した時のことも想い出す。

 150人くらいは人いたかなぁ〜?まぁあんまし詳細に書くと後憂の種になっちゃいかねず、フワッとボカしてしか書けないのが申し訳ないけど、要はその会合で、しばらく前から危惧されてた無理体な方向に大きな決め事が向かいそうになったのだ。
 それまで、そっち行ったらヤバかろうってみんなで噂はしてたし、ヒドく憤慨してる者さえ数多くいたのに、いざとなったらドイツもコイツも良識的な多数派でいたいのか波風立てなくないのか何なのか、大人しくすました顔で黙ってる。主催者側も主催者側で、「どうせこの雰囲気の中で正面切って反対意見なんて言えやしねぇだろう。言えるモンなら言ってみやがれ!ウリウリィ〜!」ってタカ括った態度をどこか漂わせて、「何かご意見ございませんでしょうか?」な〜んて慇懃無礼にシレ〜ッと抜かす。うっそぉ〜!?こんな大事なことがナァナァで押し切られてまうのん?少なくともおらぁそら困るわ。

 堪らずおれは立ち上がって、断固とした反対意見を珍しく理路整然と述べたのだった。内心もちろん、「あ〜あ!やってもた!これでみんなから浮いてしもたやろなぁ〜」っちゅう胃液がこみあげてくるような苦くて酸っぱい感情は少しあったけど、もぉ口の端に載せた以上、今さら止めるワケにもいかない。とにかくおらぁそんなん絶対にヤバい!ここで止めんかったらマズい!と思って必死だったのだ。単純にそれだけだ。

 本当にハラが立ったのはその後である。

 おれが意見を言い終わるや否や、会場の何ヶ所から「そうだっ!」の合いの手、パラパラと疎らな拍手が段々と大きくなって会場全体に広がってアプローズ・・・・・・はぁぁ〜、バンドやってた時にオーディエンスの反応がこんなんだったら良かったのになぁ(笑)。
 シャンシャンの予定がダダスベりになった進行役議長は困惑して平静を装いつつ少し顔を歪め、後方では事務方何名かが慌てて小声で何やら囁き合ったりスマホでどっかに電話したりしてる・・・・・・って、おい!ちょっと待たんかい!オマエ等!オマエ等って、雁首揃えて客席に並んでる方だよっ!誰かが発言しなきゃ最後まで黙ってるツモリやったんかい?それってめっちゃズルくね!?日和って卑屈なカオしてみんなの出方の様子見で、付和雷同で金魚の糞みたいになってたクセに、それが流れが変わった途端のバケツで急にドヤ顔で「義は我にあり」みたいになるのはちょっとちゃうやろ!?流れ変えんかったらタイヘンなコトになっててんで。言うんならもっと早よから自分のコトバで語れや!勝手に尻馬乗んな!拍手すんなヴォケ!

 ともあれこうして目出度く圧倒的多数決にて主催者側提案は卓袱台返しで否決されたのだった。それはもう快哉を叫んでも良いくらい見事な逆転劇・・・・・・だったハズなのに、ぶっちゃけおれは少しも気分が晴れなかった。それどころかひじょうな苛立ちを感じ、無性にハラが立ったのである。
 客観的にその時のおれは多くの賛同者を得てたんだから、孤立はしてなかったんだろう。しかし、とても孤独だったのは間違いない。

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 コロナ禍もそろそろ終わりが見えて来てるのに、国だってそろそろ止めようやっちゅうてんのに、未だみんな従順にマスク着用に励んでることなんかからも指摘される通り、日本人は極めて同調圧力に弱い。面白いコトに、最近つとに増加中の外国人も大人しくマスクしてたりする。郷に入っては郷に従えっちゅうコトなのか?はたまた未知の風土病な「同調圧力ウィルス」が蔓延してて、たちまち感染してるのか?良く分からない。

 どこかのアホな市会議員みたいに幼児的自己顕示欲丸出しで。マスクする/しないみたいなしょうもないコトで突っ張って孤立するのは如何なモノかと思うけど、余りに何でもかんでも群れたがったり、多数派に流されたりするのはとてもマズいだろう。いずれその先にはぬるま湯のようだけど致命的な陥穽が待っている。

 孤立せよ!
 孤立せよ!
 孤立せよ!

 もっとみんなだって孤立して良いんだよ・・・・・・いや、ま、その後の約束はできないけどさ。

2022.06.25

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