「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
やっぱし住みたいぞ、古民家





北摂、丹波から播磨方面を考えてます。

 最近、毎日のように見てるポータルサイトがある。

 全国の不動産情報を一括表示できる「ニフティホーム」ってトコだ。名前から推察するに、元々はあの「ニフティ」関連の何かだったんだろう。流転の人生でいつしかこんな姿に変わっちゃったんかい!?時の流れは残酷だなぁ〜、って気もするが、それはさておき都道府県別・マンション/戸建てといった住居形態別に仲介業者の枠を超えて一発検索できるんで、気付くと時間を忘れてズーッと物件情報を追いかけてたりする。ちょとヤバい。

 今日はそんな話だ。半分はまぁおれ自身によるおれ自身のための覚書みたいなモノでもある。そんなんで一話に仕立て上げたのもちょと気が引けるんで、だからどうかヒマな方だけお付き合いください。

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 実のところ、「家らしい家」ってのに生まれてこの方住んだことがない。

 生家は当時の大阪ではひじょうに一般的だった五軒長屋の文化だった。ストリートビューで見たら、一部2コイチになったり改装されたりしながらも今でもシッカリ残ってて、子供心にもボロ家だったのに案外丈夫なんだなぁ〜、って感心してしまう。今でも風呂は無いんだろうか?
 そいでもって次が公団の3DKの4階。さして広くもなかったけど駅の目の前だったし、金剛山、岩湧山、東葛城山といった紀泉国境の山々が遠望できて、今から思えばそれなりに良いロケーションだったのかも知れない。ただおれにはどうしても、あの豆腐を立てて並べたような画一的で無機質な空間が馴染めなかった。そぉいや先日、「大阪Deep案内」ってちょっとアングラなサイト見てたら「廃墟ニュータウン」のルポとして金剛団地が取り上げられてたっけ(笑)。でも難波まで急行で30分くらいだからベンリなんだけどねぇ。
 大学に入ってからは過去に何度も書いたように、京都・修学院の鷺ノ森神社の鎮守の森の隣にあった3階建て、日当たり最悪で死ぬほど寒くてジメジメした、RCである以外何一つ取柄のないハコのようなアパートの1階。その次は音羽川に掛かる小さな橋から路地をちょとだけ入ったトコにあった木造下宿の2階。ここは古かったけど、日当たり良くて実に快適だった。今なおチャンと現存してるのが嬉しい。それなりに学生の入居者がいるのかも知れない。
 就職してからは、まずは会社の寮に取り敢えず転がり込んで、ほどなくヨメと暮らすようになって引っ越したのが、千里丘駅近くのドアを開けたらいきなり急な階段っちゅうシュールなアパートだった。壁が薄くてクーラーも何もなくて、西向きの台所なんて夏場、あまりの暑さに冷蔵庫で氷が作られなくなる、っちゅう凄まじく劣悪な部屋だった。玄関前の狭い砂利は近所の野良猫のトイレになってた。
 さすがにこんなトコに暮らしてちゃ身重のヨメにも負担だろう、大体ハシゴみたいに急な階段から落ちたらどぉすんねん?ってコトで、摂津の鳥飼新幹線基地近くに相場より安い「住宅金融公庫特別融資物件」とかゆうマンション見付けて引っ越した。5階だった。ここはまぁマンションとしてはかなりマトモな方だったけど、近くを通る近畿道にはホンマ閉口させられた。そんなすぐ傍でもないのに夜中でも絶えずザーッとかゴーッってな走行音が間断なく聞こえてくるし、ベランダに洗濯物干してたら、排ガスのせいで何となく黒ずむんだもん。
 こちらに来てからもマンション暮らしは続く。まずはマコトに奇妙な形で、曲がりくねったベランダだけが異常に長い3DKの3階。間取りもヘンで、6畳のDKに4畳半が2つ、ナゼか残り一間は9畳って配分悪すぎだよね?多分、4畳半2つを2コイチにしたんだろうな。ドアも2個あったし・・・・・・でもまぁ会社で借りてくれてタダ同然で暮らせるんだから、そんなに不満は無かった。台所を含むすべての部屋からベランダに出れるんで、とにかく風通しが良いのがここの長所だった記憶がある。7年くらい住んだろうか。
 狂乱のバブルが崩壊して10数年、ようやく首都圏の不動産価格が下がるのと相前後して、こうして暮らす近所でもニョキニョキと大型物件が増え始めた。その訪問販売でやって来たセールスマンの口車にヨメがスッカリ乗せられて、まぁ苦労ばっかし掛けてるし、たまにはワガママ聞いても良いかな〜、な〜んて仏心出したのが運の尽き、実に高い買い物と相成って今のマンションに引っ越したのだった。タワマンとまでは行かないが、そこそこの高層階に住んでる。ヨメは田舎の出なので、おれとは真逆で背の高いマンションに強い憧れがあったのだ。何だかんだでもう15年くらい暮らしてしまった。これまで住んだトコでは一番長くなった。

 両親が希求して止まなかった一戸建てとはちょと違うんだけど、一生に一度くらいは「家らしい家」に住みたいなぁ〜、って気持はおれにもある。だからってニュータウンの造成地の雛壇に櫛比する一戸建てに住みたいワケではない。そんなんなら今の空家になった実家を多少手直しして住めば良いだけの話だ。これならほぼタダだ。
 「日本的な建物で日本的な暮らしをしてみたい」、ってのがいっちゃん近いのかも知れない。その「日本」って何やねん?と問われたら、明快な答えに窮してしまうが、まぁ「日本の古い原風景」なんて言う場合の「日本」が最も近いだろう・・・・・ベタやなぁ〜(笑)。

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 物件サイトの話に戻る。

 当然っちゃ当然のコトながら、まぁしかし日本中至る所で不動産は惨憺たる状況やねぇ。三大都市圏でさえも周辺部になるとかなり怪しい。投げ売りされてるのは所謂「古民家物件」ばっかしだ。土地2〜300坪に母屋と離れと納屋、土蔵まで付いて400万とかビックリするような値段のがいくらでも見付かる。

 もちろん、そぉそぉ美味いハナシなんて転がってないワケで、激安物件には大抵の場合、トラップがある。老朽化しまくってて居住可能な状態にするにはものすごい補修費用が発生するとか、解体して新しいの建てようにも新参者には地域の制約があってムリとか、駅下車17kmとかもぉメチャクチャに辺鄙な限界集落にあるとか、家までの道路が狭すぎて軽自動車しか入れないとか、セットバック量(公道幅は今は最低4mが義務付けられてるので、それに満たない場合、建替発生時に不足した幅の分の土地を召し上げられる)が多いとか、実は未登記の建物が敷地内にあるとか、境界を越えて建物の端っこが隣家に飛び出してるとか、下水道管への接続がチャンとされてないとか・・・・・・まぁホンマ、騙してナンボみたいなひでぇ罠だらけだ。

 いっちゃん困るのが、農地・山林・雑種地等が漏れなくオマケで付いて来るパターンだろう。8千坪800万円!とかで売られてるのは全部このパターンだ。笑ったのでは「墓地4坪含む」ってのまであった。知らん人の墓譲られても困る、っちゅうねん。軽トラ・脱穀機・トラクター・田植え機も付けますっ!・・・・・・て、立つ鳥跡を濁さず、自分で処分して行けや(笑)。
 山林にしても田圃にしても、生活や経済のサイクルがそれらを基盤にシッカリ噛み合って回ってた時代なら大いに価値あったんだろうけど、その価値を生むための膨大でたゆまぬ地道な作業には村落共同体での地縁・血縁の力が不可欠なのであって、そんなモンこれっぽっちも持ち合わせないおれには無用の長物以外の何物でもない。だからって山とか農地部分は要らんから自治体に物納します、っちゅうても市区町村は受け取ってくれなかったりする。つまりタダでも引き取り手がない。なのに僅かとはいえ毎年固定資産税は発生する・・・・・・正に「負動産」なのである。

 加えて、都合の悪い物件ほどチャンとした所在地を示してないコトが多い。画像は豊富に載せてるのに、巧みにカモフラージュして都合の悪いポイントは極力見せないように写す、な〜んて姑息な手段に出てるのも多い。それでも限られた情報からGoogleMapで特定してみると、すぐ裏手を貨物列車が昼夜問わずバンバン走ってる線路が通ってるとか、道路挟んで向かいは聳え立つようなため池の堤防だとか、南向きと言いながら南は目の前に山の斜面が迫ってるとか、つい数年前に氾濫した川の近くだとか、高速道路の橋脚の真下だとか、ほぼ波打ち際だとか・・・・・・もぉ笑っちゃうくらいに阿漕な宣伝してやがるのだ。ホンマ、小狡いヤツばっかしだわ。

 そんな中から気になったのは取り敢えずマップピン置いて、コメント欄に広さと価格、印象を入力して行く。もうずいぶん増えて100ヶ所くらいになった。どれもこれも帯に短し襷に長しなのは仕方のないコトだろう。そんなすべてを満足するような物件ならば、そもそも売りに出されることもなく住み続けてたんだろうしさ。

 一方では古民家を夢見て、そして本当に実現させて手に入れ、多額の改修費用を突っ込んだ挙句、資金が尽きたか、実際に住んでみて不便さに音を上げたか、病に倒れたか、寿命が来たか・・・・・・それぞれの事情は分からないが、とにかくナンボも暮らさないうちに夢破れて手放したと推測される物件ってのも良く見掛ける。これはキチンと手が入ってる分グッと高くなって、ケッコーなお値段(3千万弱くらい)がする。
 大体そんな風に古民家をオシャレな和モダンに作り直そうなんてぇ人には、それなりに財力あって趣味人な方が多いのか、必要以上に贅沢に作り込んであるコトが多い。床が単板の無垢材だったり、本物の漆喰壁だったり、断熱材にベラボウな値段の天然素材使ってたり、鋳物の薪ストーヴを土間に置いてたり、露天風呂拵えてたり、庭だけイギリス庭園風にしてたり、エラく高いシステムキッチン入れてたり・・・・・・3千万以上の価値はあるのかも知れない。とても買えないけど(笑)。

 そんなんが現在の古民家の現状だ。良い物件は当然ワリとすぐに買い手が付く。だからって「おれも早よせんと!」などと焦る気持ちはちょっとも湧いて来ない・・・・・・何故なら、それ以上に新たな売り物件が次々と出て来るからだ。

 日本は地方から確実に崩壊して行ってる。それは厳然たる事実だろう。

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 思えばこれまでの人生、全部が全部ではないとは申せ、また偶然とは申せ、色んな流行りモノが最後の光芒を放ってた時期を看取って来たような気がする。汽車やローカル線、ワビサビな温泉・鉱泉、廃墟、DTMに取って代わられつつあるアナログなエレキギターやベース、アコースティックドラムだってそうだ。ランドナーにハマッたのも後から思えばそうしたカテゴリーがMTBに取って代わられ過去のものとなる少し前だった。デジタル一眼のカメラだって同じような感じがある。明確に違うのはどうだろ?アウトドア関係とスノボ、最近の巨石・磐座くらいちゃうやろか。

 ならば、こうした古民家におれが惹かれ、向かおうとしてるのは、ある意味、必然的な一種の運命なのかも知れない・・・・・・悪運か幸運かは知らんけど(笑)。

2021.03.25

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