「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
デント・デンター・デンティスト


VOWで一躍全国的に有名になった高松の歯医者さん(本文とは関係ありません)。
ちなみに「ウマ歯科」、「ルパ歯科」はないけど、「ハナ歯科」はある(笑)。ヒネリが利いてるので「もみじ歯科」「バンビ歯科」なんてのも実在する。


http://usalog.cocolog-nifty.com/より

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 昔から歯だけは丈夫なガキだった。

 母親は自分の歯が弱かったことの反動で、おれにロクに歯が生えぬうちから一生懸命歯を磨いてやってたんだって、ことあるごとに言い聞かせるのだった。まぁ実際、チクロやサッカリンといった人工甘味料に様々な人工着色料等がバンバン使われまくって、子供の虫歯が社会問題化してた当時、歯磨き習慣は物心ついた時点で既にシッカリ植え付けられてたんで、そこは大いに感謝せんとアカンだろう。でもあんなにもクドクドクドクド繰り返されてはありがたみもちょと失せる、っちゅうのも偽らざる気持ではある(笑)。
 ちなみに歯の強い弱いって、実のところ生まれ持った体質によるのが大半らしい。もちろんそっからの栄養状態やケアはとても大切なんだけど、元々弱い歯はどれだけ頑張ってもどしたって虫歯になりやすいし、折れたり欠けたりもしやすいもんなんだそうな。

 10年ほど前、自分に忍び寄りつつある「老い」、っちゅういささか寂しいテーマで書いたことがあった。その中で、上の歯の一番奥の親知らずと手前の歯の間がちょっと痛いんで、糸楊枝でシキシキと隙間をコスッてる・・・・・・なんて書いてる。今日はそっから後の状況についてだ。

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 実はもうその時の親知らずは抜かれてしまって、ない。

 いや〜、あれ書いて僅か数ヶ月後、秋も深まったある日、ついにどうにもならんくらい歯が痛くなった。慌てて小学2年生以来くらいの久しぶりで歯医者に行って診て貰ったら、やはりっちゅうべきか、歯と歯の間の歯ブラシの届かないところから親知らずの内部に向かって齲歯が拡大し、神経にまで到達してたのである。そら痛いハズやわ。
 その場で「すぐ抜きましょう」ってなって、何かチクチクやられて口の中がジーンとしたな、と思ってたらペンチみたいなんでグニグニ捻られアッサリ抜けた。10分かそこらだった。術後に見せられた抜かれた歯は、見事に中がガランドウになってる。「どんだけ歯磨きしてたとしても、こりゃかなり防ぎにくいパターンですね」・・・・・・な〜んて、慰めにもならんコトバを医者から掛けられてしまったっけ。

 親知らずとは申せ折角綺麗に整列して生えてたのが無くなってしまったので、なんだかちょっとスカスカして違和感がある。それでも痛みが無くなったのはたいへん気分が良いモンだ。それでしばらくは調子良かった。歯を気にせずなんでも飲み食いできるのは実にありがたい。
 ・・・・・・などと喜んでたら、半年くらいしたあたりからだろうか、今度は何だか歯全体の篏合っちゅうんですか、噛み合わせっちゅうんですか、それに段々と違和感が生じて来た。まず、前歯でモノが咬み切れなくなった。チャンと合わないからハムや刺身でさえ咬み切れない。その内、他の場所もチャンと上下が合わさらなくなって、何本かの歯だけが接してるような具合である。そうなると肉とか歯応えのある貝類なんて咀嚼できなくなって来る。
 そこで想い出したのは、「歯は動く」ってコトだ。1本抜いたコトで歯の収まってるスペースに余裕が出来てしまい、少しづつ歯が元の位置から移動してこんなことになってるに違いない。

 再び慌てて歯医者に行く。症状を訴えると、大体予想した通りだった。おれの場合、なまじこれまでが歯並び良くてキッチリ合い過ぎるくらいに合ってたおかげで、ちょっとのズレでも全く噛み合わせがズレるんだとかナントカ、分かったような分からないような説明を受けた。なるほどカオも性格も悪いけど歯並びだけは良いのは事実だったんで、何となく納得したのだが、今更ながらにあの医者ちょっとヤブやったんとちゃうか?って気もしてる(笑)。
 何故なら、その場で合ってない面をグラインダーみたいなんでビャビャーンと削って、ムリクリ面取りして擦り合わせていっちょアガリだったのだ。歯はこれからも少しづつ動き続けるんだろうし、そんな現時点の状況だけで合わせてどぉすんねん!?もっと根本的な解法はないんかい!?って誰だって思うよね!?これが本当に正しい処置だったのかどうか、未だにおれには分からない。

 結局、この歯医者がヤブかどうか見極める前に、おれはそこには行かなくなった。いや、行けなくなった。実はこれらは北海道での話で、しばらく後に再び東京に戻ったからだ。

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 プラモデルぢゃあるまいし、グラインダーで面取りっちゅうのはやはり正しい処置ではなかったんぢゃないかと思われる。東京に戻って以降、再び少しづつ歯の篏合はおかしくなって行き、それでなくても元々ひどかった肩凝りが余計に悪化したり、食べ物の租借にさえ難渋するようになってきたのだった。それだけならまだ良いが(・・・・・・って、良くは無いけど、笑)、さらにはこれまでになかったパターンで、歯が何となく浮いてグラグラする感じにさえなって来た。クソッ、あのヤブめ!

 今度は自宅近所でワリと評判の良い歯医者を訪ねた。歯のレントゲンを撮られ、その写真をジーッと見ながら医者は言う。

 ------前は左上の親知らず抜かれたんですよね?その時、右は何も言われませんでした?
 ------はい、特になかったですけど。
 ------おかしいなぁ〜・・・・・・右上見て下さい。これ、フツーの歯の2倍の高さにまで伸びてますよね。大きいし。
 ------エッ!?あ、まぁ、たしかに素人目にもデカいっすねぇ。
 ------下に歯がないからここまで伸びたんでしょうけど、これが虫歯になってます。奥過ぎてブラシも届かなかったんだと思います。
 ------ぢゃ、歯がグラグラしてたのは?
 ------要はそれで全体的に腫れてるのと、あとは特定の歯に力が掛かり過ぎて歯茎が弱ってるんです。
 ------そぉだったんですか。
 ------それに、この1本が突っ張って他の噛み合わせの邪魔をしちゃってますね。咬み合わせの問題にこれがかなり影響してます。

 ・・・・・・そんなこんなでめでたく反対側にあったもう1本の親知らずもオサラバと相成った。

 評判通り医者は悪くなさそうだったけど、当たった歯科技工士のウデは間違いなく悪かった。いや、何となくこのネーチャン乱暴だな〜、大丈夫かなぁ〜?って一抹の不安はあったのだ。そして不幸なコトにそれは的中した。
 ついでだか何だか、「歯のお掃除もしときましょう」なんて言われて、歯周ポケットって全ての歯の付け根全体をガリガリゴリゴリやられたのはまぁお決まりのコースではあるとは申せ、翌日、全然関係ない場所の歯茎が猛烈に腫れ上がったのである。昨日の治療前よりよほど熱持ってるしズキズキ痛む。押してみるとキモッ!あろうことか膿さえ出て来た。化膿しちゃってるのである。ゾッとした。

 急遽会社休んで、怒り狂って歯医者に行くと、順番待ちも全部スキップの急患扱いで医者も平謝り。サービスだか何だか、歯の磨き過ぎ(!?)で削れてるトコに紫外線硬化樹脂か何かでパテ埋めまでしてもらって、何かそこまでされたらまぁ受け入れざるを得ない感じになって、それ以来、月イチでそこに通ってメンテナンスとやらを受けている。こちらからチェンジとか言ったワケぢゃないけど、歯科技工士の担当は別の人が付くようになった。

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 結局、歯にしたってやはり身体の一部である以上、どれだけ丈夫ちゅうたかていつかはどしたって衰えて行くのである。それに歯だけではない。誰しも齢取ると土台の骨自体までが下がってくモンらしい。別に入れ歯が外れてるワケでもないのに、年寄りがクシャおじさんみたいになってることが往々にしてあるのにはそんな理由があるんだそうな。
 そこで出来ることはと言えば、その進行をどれだけ遅くするかだけのようだ。治すどころか食い止めることさえできない。せいぜい遅くするのが関の山だという。ほれ、ありますやん。8050問題・・・・・・ぢゃなかった、「8020運動」って。80歳で歯を20本残しましょう!とかさ。
 以前は他人事のようにボンヤリ眺めてたそんなスローガンも、いつしか切実に頷いてしまってるおれがいる。それが偽らざる現実だ。謙虚に受け入れるしかない・・・・・・う〜む、おれにゃまったく似合わんコトバだな(笑)。

 そんなんで月イチの歯医者通いは細く長く継続中である。コロナ騒ぎで診る方も診られる方もイモ引いちゃってるみたいで、営業時間は短縮だわ、それでも閑古鳥は鳴いてるわなんだけど、気にしてたって始まらないんで、おれは変わらず先日も行って来た。
 どうして歯科技工士のオネーチャンたちっておれたち患者に幼児コトバっぽく話しかけるのか謎だな〜と思いつつ、「はぁ〜い、では右上の前から診て行きますねぇ〜。お口空けて下さぁ〜い」なんて言われながら、マヌケに大口開けてされるがままになってる。良く分かんないが、ある種のノギスみたいな器具で歯周ポケットの深さを毎回測ってるようである。どうやら3mm超えるとアカンみたいに言われ、おれも一生懸命磨いてんだけど、奥歯はあまり数字が改善してないらしい。
 済むと今度は錐みたいな器具で歯の付け根あたりや歯間をゴリゴリやられ、今度は超小型高圧洗浄機みたいなんでジュージューやられ、最後に全体にムチャクチャ苦い消毒薬を塗られて定番メニューでのコース終了となる。いっちゃん最初のオネーチャンには口の中を血だらけにされ、うがいで吐き出した水はまるで吐血したかのように真っ赤になったが、あれ以降ズッと担当してくれてるオネーチャンは上手なような気がする。エラい剣幕で行ったから、クレーマーと思われてエース級の人材を当ててくれてるのかな?(笑)

 家でもホント丁寧に歯を磨くようになった。朝な夕なにフツーの歯ブラシ、電動歯ブラシ、スウェーデン式とかいうサインペンの先みたいな歯ブラシ、歯間ブラシ、糸楊枝、液体歯磨き・・・・・・全部を毎回ではないとは申せ、実に6種類を使い分けてる。我ながら驚くマメさだ。もちろんそれで何か劇的に改善された、なんてコトは上述の通りでない。ただ調子悪くなることはたしかになくなったから、決してムダではないのだろう。

 ・・・・・・以上、オッサンの辛気臭くもイケてない話をグダグダ書いたのは他でもない。マジでみなさまも歯だけは大切にした方がエエと思いますよ・・・・・・って、ただそれだけを声を大にして言いたかった、それだけだ。

2020.06.16

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