「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
青箱男子


青箱と赤箱。ちなみにバスサイズがあるのは青の方だけ。

https://www.cow-soap.co.jp/より

 ぎゅう〜にゅぅ〜せっけん♪良いせっけん〜♪

 最近、「赤箱女子」なるコトバがあるらしい。文字通り牛乳石鹸の赤箱を愛でて、それをアピールすべくインスタなんかに上げる女子のコトで、どうやらロハスだエコだってな流れの中で、温故知新っちゅうか自然派志向っちゅうかレトロ趣味っちゅうか、今ではむしろ専ら一般的になったポンプ式の液体石鹸とかボディシャンプーには目もくれず、シンプル極まりないコイツをタオルやアタマにゴシゴシ擦り付けてるらしい。

 ハハハ。自慢ぢゃないが、おらぁもぉ30年以上と年季の入った「青箱男子」である。そんなミーハーなネーチャン達と一緒にしてくれんなや!とドヤ顔したいくらいに永年に亘ってほぼ青箱ばっかし使ってる。

 牛乳石鹸の代表作であるこの青箱と赤箱について(・・・・・・他にどんな製品あったっけかな?、笑)、店頭で見掛けたことはあっても実は良く知らへんな〜、って人が多いのではなかろうか。大体箱の色の違いって何なんだ?ってのもあるわな。
 平たく言うと、青箱の方が戦後に出されたもので値段的にホンのちょと安く、赤箱の方がオリジナル製品として戦前からの歴史がある。箱を良く見ると、今では隅っこに青は「さっぱり」、赤は「しっとり」と表示されてあって、赤の方が保湿性が強い配合となっている。また大きさが青と赤では微妙に異なってたりして、バスサイズは赤には存在しない。香りも異なっており、青はジャスミン、赤はローズの香りとなっている。ちなみにパッケージデザインは牛の柄とかロゴとか少しづつ変遷があるらしい。
 ついでに製造元の牛乳石鹸共進社(←シブい名前やったんやね!)についても調べてみると、今は大阪は城東区の今福に会社がある在阪企業だが、何とその発祥の地は上本町の北の清水谷っちゅうから、何とまぁ、おれん家が戦前にやってたって化粧品会社と同じ町内やったワケやね。ひょっとしたら同業の寄り集まりとか近所付き合いくらいはあったのかもしれない。いずれにせよあの辺にそうした関係の会社が沢山あった、っちゅう父親の話はあながちガセではなかったってコトだ。

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 それはともかく、おれは赤箱より青箱の方が好きだ。何もケチだからではない。どだい価格差ったってマコトに微々たるもので、気にするほどのものは何もない。要は性能差の問題で、青の方が強力に脂っ気を落としてくれてるような気がするからだ。両者の違いを表す「さっぱり」と「しっとり」は言い得て妙だと思う。
 そんなんで在庫が無くなるとイヤなんで、おれん家の洗面所の下には大量のバスサイズの青箱が常備してある。たまに気分転換にラックスだとかホワイトだとかナントカ、他社の固形石鹸とかを買ってみることもあるんだけど、どうも油っぽいヌメリ感があるようで気に食わない。やっぱし何かこのエバーグリーンな超定番である青箱がおれにはシックリ来る。

 そもそも論でおらぁ今はもう風呂では固形石鹸しか使ってないのである。液体石鹸どころかシャンプーもリンスも一切使わない。こぉ話すと大抵の人は驚くのだけど、おれにはそれが一番合ってんだから仕方ない。

 ではいつから全身青箱オンリーになったのか?っちゅうと、学生時代のバイト前後、当時はまだまだ京都旧市内に多数残ってた銭湯に立ち寄るようなことを始めたあたりからだったと思う。ぶっちゃけそれまではフツーに液体石鹸やシャンプー、リンスを使ってたのだ。シャンプーについては如何にも当時の若者にありがちな、黒いラベルに白抜き文字のスーッとするトニックシャンプー使ってた記憶がある。
 しかしそれだとどしたって荷物になる。洗面器はまぁ風呂屋に黄色いケロリンが並んでるから要らないとして、バスタオル・タオル・着替えとかバッグに詰めてくと、それだけでも結構嵩張ってしまうのだ。あ、そうそう、そうだった。当時は単車に乗っててマグネット式のタンクバッグをペトッと載っけて使ってたから、そこにコンパクトに入ることが大事だったんだ。

 それで生来のめんどくさがりもあって、思い切って全部止めて固形石鹸だけにしてみたのだ。

 ほしたらメッチャこれがチョーシ好いのである。荷物は少なくなるし、アタマもそんな心配するほどボサボサになったりもしない。ノープロブレム。大体おれは猫っ毛な方なんで、むしろちょっと脂気が抜けたくらいの方が髪の毛にボリューム感も出るのだ・・・・・・って、今みたいに薄くはなかったけどね(笑)。相前後して、パーマ掛けたロン毛を止めてたのも功を奏したかもしれない。あれで石鹸で洗ってちゃ、絡みまくって手を焼くことになってたろう。
 それに加えてお肌の具合だって宜しい。ツラの皮の厚さのワリにおれは肌が弱い方で、子供の頃からすぐにカブレたりする方だったのが、石鹸にしてからはそんなことも滅多になくなった。

 ついでにカラフルな化繊で出来たワシワシしたボディタオルも止めて、年末の挨拶とかで配られるような、昔ながらのごくフツーの白いタオルに変えてみた。そしたらさらにチョーシ好い。ゴシゴシタオルに比べて、何度も濯がないと石鹸が落ちにくいのはいささかめんどくさいものの、むしろこっちの方がシッカリ身体を擦れてるような気がする。

 爾来、おれは一貫して固形石鹸党である。青箱なのは実はその初めに於いてはさほど積極的な意味なんてなくて、どこに行っても大体赤か青は売ってて、それでいつの間にかそうなっただけだと思う。理由は後から付いて来た。

 まぁとにかく、予断だけで使いもせずに「うぇ〜!石鹸ですかぁ!?」なんて言う人には一度試してみて欲しいモンだ。

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 思えば、往年の定番製品のリバイバルはいろんな分野で起きてる・・・・・・って、やっぱし食料品や日用雑貨の世界に多いか。え!?スープラが18年ぶり、カタナが19年ぶりに復活って?そりゃ名前とロゴや意匠の一部だけっしょ。

 例えばチキンラーメン。そりゃ誕生何周年とか朝の連続テレビ小説の影響だとかあるんだろうけど、このところかなり勢い付いてる。いや〜、やっぱしタマに食うと美味かったりするんだわ、これが。あと、どん兵衛シリーズに赤いきつねや緑のたぬき、等々カップ麺系には不滅の定番で、消えかけたと思ったら復活するのが多い。他にパッと思い付くトコだとバーモントカレーとかゴールデンカレーなんかも目新しいのに押されて消えそうになっても、いつの間にか復活してる超定番だな。
 化粧品関係では紺色の缶に入ったニベアのハンドクリームなんてのが思い浮かぶ。一時は新製品に押されまくってたのが、今やスーパー等の棚を占有してる状況だ。

 それを守りに入った時代ゆえの事象であるとネガティヴに捉えることももちろん可能だろう。しかし、昔ながらの製品の良さは確かにあるように思える。それに昔ながらでやってて消えてったモノだって世の中には沢山あるワケで、これら生き残っただけではなく、未だに高い人気を誇る製品には、やはりそれなりの優れた点が多々あるんだろう。どれだけ色んなギターが出ても、レスポールとストラトが生き残ってるようなモンだな(笑)。

 ・・・・・・ああ、青箱・赤箱についてだった。青箱の登場は1948年と戦後だが、赤箱の登場は1928年(昭和5年)のことらしい。米寿どころか90年以上の永きに亘って続いてる恐るべき超ロングセラーだ。実は途中で白箱とか緑箱なんてのもあったみたいだけど、今はこの2種類だけが残った。もちろん他社だって黙って指を咥えて見てたのではなかった。追い付け追い越せでいろんな改良を施したものが登場している。「わっわっわぁ〜♪輪がみっつ♪」のミツワ石鹸、「エッメロン♪お〜エッメロン♪お〜エッメロン♪」って連呼するエメロン石鹸、「クリームみたい♪」な花王石鹸・・・・・・最後に挙げたのは今でもあるし、たまにおれも使うけど他はみんないつの間にか消えてしまった。特段どれかが殊更に劣ってたワケでも努力を怠ったワケでもない。

 長く続くモノを作るのはとてもむつかしいことだけど、頑張るだけではどぉにもならないことだってある、っちゅうこっちゃね。

 ・・・・・・なぁ〜んて今日はマジメに書く気なんてなかったんだった。アカンなぁ〜。

 いささか晦渋な方向に話が行きそうなんで、そろそろこの辺で切り上げて風呂に入らせてもらうことにしますわ。もちろん、青箱で一日の汚れも憂いもサッパリ洗い流して、っちゅうこってすな・・・・・・あ!その前に脱ぎっぱなしのワイシャツの襟をウタマロ石鹸で擦って洗濯機に放り込んどかなきゃヨメに叱られますわ(笑)。

2019.07.12

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