「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
不如意版、徒歩記・・・・・・新型コロナだより(1)

 4月になって、年明け以来何とか持ちこたえてた国内での新型コロナウィルスへの感染拡大が決壊して、誰がどう見たってユルい「緊急事態宣言」とやらが「発出」された。そんな奇怪なコトバ初耳だが、「発令」だと命令になっちゃうから「発出」なんだってさ、強制力は無いんだってさ・・・・・・政府にいるのはドイツもコイツもみんなバカなのか(笑)。
 自分で拵えた方が余程マシそうなアベノマスクを全国民に2枚づつとか、いずれツケを払わされるのは国民自身なのに一人10万円づつバラマキとか、大衆を愚弄してるとしか思えない、政策とも呼べないような幼稚な対策が次々と打ち出される中、気が付くとなんともグダグダで奇妙で中途半端極まりない軟禁状態におれたちは置かれてしまっている。人込みを避けるコトに努めるだけのハズだったのが、いつの間にか「STAY HOME」にすり替えられちゃってるし。
 なのに日々の通勤の電車・バスは駅に停まる度にドアを開閉して換気が出来るから、これは「三密」に当たらない、うん!OK!とか、実にご都合主義でありがたい(笑)ルールが出来たりもして、オカゲで何とか経済活動は止まってない。
 しかしウィルスは極めて平等かつ公平だ。通勤中だから、仕事してるからって何か特別ルールを適用して感染を免除してくれるワケではない。

 いや、だらしないのは官民両方だ。あれほど行政が「働き方改革だっ!テレワークだっ!」って騒いでも、出来ない理由並べるばかりでいっかなソヨとも動かなかった各企業も今や手の平返しで、掘っ建てで急ごしらえな在宅勤務に切り替えるところが軒並み続出している。そんな急激な需要増に加えて中国からの輸入のストップもあって、PCやウェブカムは在庫が払底してるんだってさ。何だかんだでおれも急に風向き変わった会社のおかげで、部下たちは自宅に留めてるもん。でもおれ自身はアホみたいに毎朝、これまでと何ら変わるトコなく会社に出掛けて行ってたりする・・・・・・管理職がいっちゃんヒマで家で仕事できるのにねぇ。中高年の方が重症化リスクあるのにねぇ〜・・・・・・って全然気にしてないけど(笑)。
 スーパーやホームセンター、ドラッグストアは最初は何だったっけ?あぁ、トイレットペーパーだったな、そいでもって今は消毒用アルコールが払底して、長蛇の列が出来たり押し合いへし合いになったり、ホントもぉアホばっかしだと思う。そぉいやマスクはずっと品薄だな・・・・・・他人事みたいに書いたのは他でもない、実は我が家ではどれもちっとも困ってないんですよ。
 ともあれそんなおれたちにパチンコ狂いの一部の愚民を非難する資格はあるんだろうか?目クソ鼻クソ嗤うぢゃないのか。電車のシートに並んで座り、今でも結構スシ詰めなエレベーターでオフィスに向かうのと、パチンコ屋の椅子に座るのにどれだけ合理的な差異があるんだろう?・・・・・・まぁ、おらぁやらんのだけどね、パチンコ。あんなん時間のムダだし、北朝鮮への寄付にしかならんもん。

 ・・・・・・と、考えるほどに気鬱になってく中、これまたありがたいことに(笑)、ナゼか近所の散歩はやってもOKなんだそうな。囚人の日光浴みたいなモンだろう。でも普段の撮影行の方が余程人に出会わない・・・・・・っちゅうか出会わないようにしてんだけどねぇ(笑)。

 ともあれそうして仕方なく不承々々、休日はヨメと散歩に出掛けてる。

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 思えばこっちに越して来て20年以上が過ぎ、これまで暮らした街では最も長くなってしまった。途中で引っ越したりもしてるんだけど、子供の転校とか考えた結果、同じ学区内で数百m動いただけだから、殆ど暮らしぶりは変わってなかったりする。
 無秩序に宅地化の進んだ新興住宅地の外れで、何の変哲もない薄っぺらで没個性な戸建てやマンションが建ち並ぶ。ホント、何か特徴を挙げてみろと言われると答えに窮してしまうような風景だ。
 そんな近所をウロウロしてても始まらないので、クダらないお喋りをしながらとにかくひたすら北なら北、南なら南とできるだけ真っ直ぐ歩いて行く。今はGooogleMap等、スマホアプリがあるから道に迷う心配は殆どない。二人とも歩くのは全く苦にならない方なので、かなりの速足だったりする。そうして何kmか行けば段々と風景も変わって来る。

 関東平野はローム層、っちゅうんだったっけ?厳密には富士山やら箱根から噴出した火山灰の台地が広がっており、その末端部は急に切れ込んで平べったい谷になってることが多い。赤土で軟らかいから雨の浸食を受けたり、地下の深い所からの湧水でドンドン谷が削れて深くなるのではないかと思う。これを谷戸とか谷津、あるいは谷地、そして切り立った部分をハケ(「崖」の古語らしい)と呼ぶのだが、いつしかそんなところに行き当たる。
 台地の上には畑や宅地が広がってるのだが、谷底の方は一面の荒れ地になってたりする。おそらく元々は綺麗に手入れされた水田が広がってたんだろうけど、農業人口の減少と減反政策の結果、耕作放棄されてしまったのだ。
 崖の下に降りて尚も歩いて行く。パッと見はまぁ緑豊かっちゃぁたしかにそうだけど、あちこちに電化製品だの自転車やバイクだの、いろんな不法投棄された粗大ゴミがあったり、「痴漢に注意」なんて看板があったり、廃車のヤードや廃材置き場があったり、何とも殺伐とした風景が続き、夜なんか追い剥ぎが出るんぢゃねぇのか?って思ってしまう。ひょっとしたら人の2〜3人埋められてたりしてね(笑)。

 それでもまだ若干は農業を続けてる家もあるのか、ホンの僅かとは申せキチンと田起こしされ、あとは水を張るだけになった水田が残ってたりするのを見ると、少しだけホッとする。
 しかしそれもその家のジーサンが存命中のうちのことだけだろう。亡くなってしまえばどうせ子供たちはどこかに勤めちゃってるモンだから今更農業なんて継いでくれないだろうし、首都圏ゆえに相続税もそれなりに掛かるだろうし、それに継ぎたいと思ったところで昔みたいに「長男は竈の灰まで貰える」ような相続の仕組みではないから財産分与でゴタゴタ揉めるだろうし、結局手塩にかけた田圃はそのまま塩漬けになって周囲と同じ荒れ地になるか、売りトバされて見るからに安普請な建売が並ぶかだろう・・・・・・でもこんな湿地帯みたいなトコの家に住んだら、ジメジメして冷えてカラダ悪くしそうだよな(笑)。

 そんな旧くからの住民たちの家はどこにあるかというと、全部が全部ではないけれど台地の縁近くに固まってることが多い。多分、水の確保と水害時の安全、最大限の農作物の収穫、崖崩れの危険回避なんかを巧みに考えて工夫しながら長い年月をかけて出来上がって来たのではないかって気がする。立地そのものが生活の知恵の産物なんだろうな。
 村の中は昔からのクルマ一台が通るのもやっとみたいな細い通りが複雑に曲がりながら走っており、そんな中にひどく立派な田舎作りの豪邸が建ってたりもする。敷地の中には意外な高級車、ヤン車、軽トラあるいは軽ワゴン等々、3〜4台が停められてるのが普通だ。やっぱ土地持ちがいっちゃんリッチなんだよな〜、って思ってしまう。

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 それにしても自粛要請の悪影響なのか、おれたちと同じように散歩してる人の姿が明らかに多い。家族連れや老夫婦の姿が最も目立つが、30前後の若夫婦、あるいはもっと若そうなカップルなんかも歩いてる。不思議なくらいにみんな男女のペアばっかしで、一人あるいは同性同士はほぼ見掛けない。
 そしてその殆どが厳重にマスクしてる。おれたちもしてる。実のところマスクに他人から伝染されるのを防ぐ効果なんて皆無らしい。しかしながら逆に自分が他人に感染させるのを防ぐ効果はまぁまぁ高いとのコトだ。合理的に考えるとそれが事実なんだけど、4月のアタマくらいからかな?おれも世間の同調圧力に負けて(笑)、それに潜伏期間の間に伝染すこともあるみたいなんで、自分たちが多少なりとも保菌者なんぢゃないかとムリヤリ自分を納得させて、外出時はマスクをするようになったのだ。

 そんな中、未だマスクをしてない率が圧倒的に高いのはジジィである。連れ立って歩いてるババァはしててもジジィはしてない。逆のパターンは見たことがない。いやまぁおれもあと何年かしたらその仲間入りするこたぁジューブン分かってんだけど、この世でオバハンの次くらいに横着かつ横柄で独善的な存在って、ジジィっちゅう生き物ではなかろうか?って思ってしまう。それで熱出して寝込もうもんならクレーマー気質丸出しでピーピー騒いで文句タレるに決まってるのに。
 そぉいや泉南市の梶本茂躾って下品なクソジジィを地で行くような市会議員が、「新型コロナウイルスの感染者が殺人鬼に見える」などと、知性の欠片も感じられないアホ丸出しでSNSに投稿して物議を醸してたけど、コイツの歳が72って記事で読んで、「いっちゃんそぉなりそうなんはオマエやんけ!」って思ったな(笑)。ある研究結果によると、年寄りの撒き散らすウィルスの方が強力ってな説もあったしねぇ。

 谷を海の方向に向かって下って行くと、隣の谷が迫って来て、その出合に行き当たったりもする。そっちの方はどうなってんだろうと、今度は隣の谷を上がって行ってみる。
 いつの間にか自宅からはずいぶん遠くまで来てしまったけど、まぁ暗くなるまでに帰れりゃいいやとズンズン進んで行く。何のこっちゃない、先刻と変わらぬ物憂い風景が広がるばかりだ。春の日は溢れ、荒れ地の中にも新芽がそこここで顔を出しているが、やはり一度は人の手が入ったにも拘らず放棄されてしまった土地だけが持つささくれだったような感じが一貫して漂っている。
 谷の突き当り、住宅地が近付いた辺りはちょっとした公園になっていた。ハケからの湧水が豊富なのか、意外に広くて水の澄んだ池があったりもする。最近流行りのビオトープってのかも知れない。あくまで人工的に拵えた「自然」ではあるが、荒れるに任せるよりは、まだ幾許かはマシだろう。

 タバコを咥える・・・・・・いや、言葉が正確ぢゃないな。iQOSを加熱機本体に挿してスイッチを押した、っちゅうのが正確な表現だ。タバコを咥えて両手で囲うようにして火を点ける、って行為をスッカリしなくなっちゃったモンな〜・・・・・・実に味気ないし、絵にもハナシにもならない。
 あれ!?そぉいやニコチンに新型コロナ感染を防ぐ効果があるかも知れないとか話題になってたっけ。たしかフランスの研究だった。ケケッ、事実ならまったくもって大笑いだぜ。嫌煙運動家はザマミロだ。ニコチンだけでタールのない電子タバコのおれなんてもぉメッチャ勝ち組やんけ!(笑)。

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 スマホで歩いた距離とか歩数を見てみると驚くほどの数字になってる。これだけ歩きゃ、ちったぁ運動不足も解消されるってモンだろう。フィットネスマニアなヨメはまだ物足りないような顔してるが、そろそろ引き返さないといけない。いや〜、おれより全然タフやん。

 陽の傾きかけた中を家に向かう。歩いてるココは間違いなく、お笑い国家・ニッポンだ。黄昏が近い。

2020.04.29

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