「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
24時間電波衛生博覧会


今年はこんなデザインらしい。

 嗚呼、またもやこの季節がやって来る。

 朝は時計代わりにTVを点けっ放しにしてるんだけど、どぉゆうワケかうちは昔から日テレ系だったりする。大阪時代は読売テレビで10チャンネル、東京に住まう今は4チャンネルだ。前の晩にヨメが違うチャンネルのドラマとか観てそのまま消してると、朝の情報番組なんてどこも似たり寄ったりであるにも拘らず、ワザワザ4チャンネルに変えたりしてる。思うに、CMや天気予報の入るタイミングとかにもう馴染んぢゃってるんで、今さら違うチャンネルにすると何となく違和感があって落ち着かず、朝の慌ただしい時間が余計に忙しなく感じてしまうからではないかと思う。

 ・・・・・・で、この時期になると段々と番宣が増えて来やがるのである。言うまでもなく日テレの今や年中行事と言える「24時間テレビ 愛は地球を救う」の宣伝だ。
 いやもう、この時期だけ違う局のニュースにしようかな?って思ってしまうくらいにおらぁこの番組がニガテだ。有り体に言って不快でさえある。だから決して自発的には観ない・・・・・・んだけど、家族は一生懸命観てたりするんで結局は否応なしに目に入って来てしまう。本番の放送はともかく、とにかく事前告知がしつこいからそれだけでもぉお腹一杯、後生だから勘弁してつかぁさいお代官さまぁ〜、ってな気分に起き抜けの朝イチから叩き落されてしまうのはホント、すごくイヤだ。

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 今さらおれが偏屈者で狷介固陋な性格であることを否定する気はサラサラないし、そんな人間に共鳴してくれる人を欲しいとも思わないけれど、実は同じ思いをしてる人が世の中には相当数いることは絶対に間違いない。何故なら試しに「24時間テレビ」ってググッてみたら、2番目に「マラソン」、3番目に「ギャラ」、4番目に「偽善」と出て来たんだもん(笑)。ほーれほれ、みんな密かに思ってたんだよ。
 そう、このバカみたいな大騒ぎのチャリティショーに対して、おれだけでなく多くの人が偽善の腐臭しか感じていないのだ。

 ナンボ途中のドラマの放映中とかで仮眠してるとは申せ、それでなくても超売れっ子で休日どころか日々の睡眠もロクに取れてなさそうな枡やら水卜やらのアナウンサー、ジャニーズ系のアイドルとかを一昼夜どころかリハから考えれば1昼夜半くらい拘束して、ビジネススマイルをひたすら振り撒かせて、その間ブレイクしかけのお笑い芸人(欽ちゃんとかダイゴ、城島茂の時もあったけど、笑)を膝ツブすくらいにヘロヘロに走らせて、よくもまぁこれだけ色んなパターンの障碍者の子供を見付けて来たよな〜!って呆れるほど次から次に出演させて、挙句の果ては遠泳させたり富士山に登らせたり、公器を使って一体何をやっとるんだ!?って言いたくなりません!?おれは言いたくなるで、マジで。

 こんなモン、ソフィスティケイトして当たり障りの無いようにしてるだけで、その本質は往年の衛生博覧会と何ら変わらないのである。
 衛生博覧会とは何か?っちゅうと、「衛生思想の啓蒙」っちゅうそれらしい名目で、明治から1960年代くらいまで開催されてたエログロ大炸裂でムチャクチャに悪趣味な展覧会のコトだ。不思議なコトに戦前は主催者が取り締まる側たるべき官憲であることも多かったらしい。詰まるところ暗いファシズムの時代へ傾斜して行く中で国が採った一種の慰撫策としても機能してたのだろう。
 展示されるのは、蝋人形による各種の人体・内臓・性器標本、梅毒やら淋病といった性病患者の患部の様子、寄生虫、義手やら義足、何故か猟奇殺人の現場の再現・・・・・・余談だけど、これら展示品の精巧な蝋人形を作ってたのが、何と今の島津製作所のルーツだったりする。もちろんそれだけではなく、蓄電池とかスゴい発明も沢山してんだけどね。
 実は現在でも姿形を変えてしぶとく衛生博覧会は開催されている。「人体の宇宙展」あるいは「人体の不思議展」なんてぇのがそれだ。尤もらしい文句並べてはいるものの、要するに死体の展覧会である。人間は本質的にどぉしようもなく悪趣味で猟奇的なのだ。

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 ちなみにネット上では集まった募金の行方とかについて、根も葉もない憶測による批判が飛び交ってるが、実際そこは明朗会計らしい。福祉車両の寄付なんかも掛け値なしでやってるようだ。誰かがピンハネしてるとかはないみたいなんで取り敢えずは安心である。大体、毎年集まるのが平均すると10億円弱ってトコだから、そんなモンをピンして業界関係者や芸能人が寄って集って山分けしたらアッちゅう間に無くなってしまうし、1人当たりの取り分なんて微々たるものになってしまう。リスクに見合わない。税金や社会保険料のヒドい有様を見れば分かるように、薄く広く集めたものは、一部の人間が特権的に遣ってこそ旨味があるのだ。
 それにそんな後ろ暗いコトせずともチャンと応分の、出演者にはギャラが、制作会社には製作費が支払われてるのである・・・・・・そ、そこはじぇ〜んじぇんチャリティでもボランティアでもないのだ。金出してるのはバカな視聴者とスポンサーだけなのだ。

 テレビの広告料収入って日テレだけで俗に1日8億円くらいと言われてる。このくだらないお祭りには何十もの系列の地方局もこぞって参加してるから、全部の局を合わせた1日の収入はもっと多い。ここは当てずっぽうで申し訳ないけど、多分その倍近くの13〜4億くらいにはなってるだろう・・・・・・え!?読みが弱気すぎやしませんか?って!?いやいや、地方局の財政事情は想像以上に厳しいハズだ。人口分布等から想像するに近畿地方はまだしも、もう中京あたりになるとちょっと怪しくなって来て、後はもうドングリの背比べではなかろうか。だからそんな何十億にはならない。
 それはともかく、賢明なる読者諸兄に於かれては言わずもがなでもうお分かりだと思うが、何のこっちゃない、これを全額返上して寄付すれば、ムリに大騒ぎして募金を募らなくたって、遥かにそれ以上の金額になるのだ。自分たちのハラは一切痛めることなく、喜捨だけを募ってるってコトが良く分かる。そして「良いイメージ」だけは総取りだ。これを偽善と言わずして何と言おう。

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 放送は始まり、紋切型のプロパガンダが垂れ流され続ける。

 不幸ダヨネ?
 大変ダヨネ?
 辛インダヨネ?
 デモ生キテルンダヨネ?
 生キル、ッテ素晴ラシイヨネ?
 生キナクチャイケナイヨネ?
 夢ヤ希望ヲ持ッテンダヨネ?
 夢ヤ希望ハ叶エラレルヨネ?
 立派ニ頑張レルンダヨネ?
 幸セニナレルンダヨネ?
 幸セニナラナクチャイケナイヨネ?

 「感動ポルノ」なる言葉が近年生まれてるけれど、専ら障碍やら何十万人に1人の奇病に冒された、大抵は子供に対し、これらの記号化されて実は全く感情の籠ってない言葉を掛けてノー天気に励ますことの本質的な侮蔑や暴力性は、ホンマもっと厳しく批判されるべきだろう。この点で感動ポルノ問題を特集して、24時間テレビの裏番組としてぶつけたNHKはナカナカやりよるわ。

 この番組には「愛は地球を救う」というサブタイトルが付いている。ツラツラ考えるにこの「愛」とは要するに「人道」のことなのだろう。いささか話はまた脱線するが、そこで想い出したのがドイツのメルケルのオバハンだ。おらぁワリと良くこのオバハンを取り上げるんだけど、何でか?っちゅうとその浅はかなおめでたさと狡猾さが大嫌いだからだ。
 難民受け入れ政策の顛末を見れば分かるじゃん。カッコ付けて「ナンボでも引き受けまっせ〜!」な〜んてブチ上げて、慎重な態度を取る国には民主主義が分かってないとばかりに三文安く見下して、それで難民ブワ〜ッと押し寄せてどうにもならなくなったらコロッと態度変えて、自分たちは手を汚さず周辺国の鎖国政策におんぶにだっこで見事にほっかむりだもんな。
 要はその程度の「愛」であり、「人道」なワケだ。TV業界の場合は「視聴率」によってどうにでも転ぶ。

 いっそこんなプログラムはどうだ!?

 まずチャリティマラソンのランナーはマツコ・デラックスでキマリだ。彼はTVの寵児にして同時に性的マイノリティであるし、昨今のLGBTの権利って点からピッタリではないか(・・・・・・って、極めて聡明な彼は性的マイノリティが声高に権利を主張することには批判的みたいだけどね)。それにあの百貫デブの巨体だ。100kmどころか10kmも走らないうちに心臓が悲鳴上げて絶命するだろう。どうだ?マイノリティの権利のための殉死だぜ!?感動しないか!?
 アンピューティーの極みの五体不満足な乙武洋匡は血が全部チンポに集まってとんでもなく絶倫みたいだから、AV女優沢山集めて24時間で何人とヤレるかに挑戦させる。何なら素人から希望者を募ったって良い。「障碍者の性」という問題への直截な回答にもなる・・・・・・かも知れない。
 ドラマは監督にバクシーシ山下とか引っ張って来て好きに撮らせてみるのはどうだ?あるいは本人自身が辺境に逝っちゃってる渡辺文樹でも構わない。貧困に荒みまくってメンヘラな元ヤンのシングルマザーなんかを主人公にでもすれば宜しかろう。
 最低限の福祉の回路からもこぼれ落ちて、元々なのか、或いは過酷なストリートでのサバイバル生活がもたらす精神的退行なのか、とにかく壊れたホームレスはその辺に一杯いる。そんな彼等を集めて合唱の特訓でもやらせてみたらどうだ?いや、集団行動なら組み立て体操でも人文字でも群舞でも合奏でもいいや。あ!そうだ!レゲエんなんだからレゲエをやらせたら良いんだ!
 夜中の時間帯はスタッフも休憩しなくちゃなんないだろうから、比較的手間暇の掛からない洋画の再放送が良いのではなかろうか?もちろん流すのは、トッド・プラウニングのグロテスクだけど哀しく切ない傑作「フリークス」、これしかなかろう。あぁ、性的マイノリティを取り上げたいんならユルグ・ブトゲライトの「ネクロマンティック」でも良いかも知れない。

 ・・・・・・そうしたら、如何にTVというメディアが自分たちの都合だけで、社会的弱者と言われる人々さえをも階級化し、好き放題に取捨選択してるかが浮き彫りになるだろう。

 ともあれまたもやこの季節がやって来る・・・・・・正直ウンザリする。憂鬱だ。愛なんかで地球は救えまへん、って。

2018.07.20

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