「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
続々・カタストロフィーの予感


最晩年のニコラ・テスラ。かなりキてますな。
偉大な発明家なのに名声には恵まれず、結構可哀想な人でした。



 ・・・・・・ってか、今回は何か大地震や火山の噴火がありそうだ、っちゅう話ではなく、そぉいった予知をする人たちに対して素朴に感じる所を書き連ねてみたい。

 一昨日だったか、週刊現代のWEB版にいかにもセンセーショナルな「来年1月、伊豆で大きな地震があるかもしれない」ってなタイトルで一つの記事が載ってた。経産省のお役人とかゆう藤和彦なる人物が、埼玉大学名誉教授・角田史雄っちゅう人の提唱する「熱移送説」(本人がそう呼んでるんぢゃなくて取り巻きが名付けたのかも知れない)によるならば、あと1ヶ月くらいで伊豆半島東岸から大島辺りでデカいのが来るだろう、という穏やかでない内容だ。どうやら藤氏は角田氏の熱烈な信者のようである。
 ぢゃ、熱移送説とは具体的にどぉゆうことかというと、地球内部から上がって来た熱エネルギーがあるルートに乗って動きながら火山の噴火や地震を引き起こす、ってな主張だ。そいでもって数年前に西ノ島を12倍の面積にまで巨大化させた熱エネルギーがオゾオゾと伊豆諸島沿いに北上してって、来年の1月くらいには件の地域に到達するのだ・・・・・・と。

 なかなかに面白い主張だとは思う。実際、地震の震源地や火山噴火がある方向性を持って段々移ってってるように見えることもある。だから何が何でも否定しようとは思わない。
 しかし、記事は余りに雑すぎてゾッキで眉唾の域を出ないのも一方で動かしがたい事実だ。例えばこの熱の塊りみたいなんが動いてく速度は年に100kmと述べられたすぐ後で月に16kmなんて出て来る。それだと年に約200kmで倍違う(笑)。こんなオッサンが経産省にいて日本の経済や産業予測は大丈夫なのか不安になってしまうで。
 大体、「熱の移送」って何やねんな!?とも思う。熱伝導のコトを言いたいのならまだ分かるが、何となく読んでるとどうにも「熱の塊りが移動して行く」みたいな表現が多い・・・・・・太歳かよ!?(笑)
 そんなバカなことは絶対に、ない。例えば他に熱損失も新たなエネルギーの供給もないと仮定して1000℃で1km立方の岩の塊がある横に0℃の同じ大きさの岩の塊を置くとどうなるか?その内、どっちも500℃になるだけである。熱交換みたいなことは起こってはくれない。熱交換がそんな簡単に出来たら、アッちゅう間に世界中の現在の内燃機関は駆逐されるって。

 また、「方向性を持って熱が伝わる」ってのがそもそもひじょうに怪しい。そりゃぁそのルートに金や銅が大量に含まれてればただの石くれよりは熱伝導率は若干は良いだろうし、だからEPIガスの銅で出来た燃焼ブースターなんかが売られてたりするワケだが、それでも何百キロ何千キロもの距離を他に熱が拡散することなく一方向に伝わって進んで行くなんてトンデモ系な主張だと思う。それとも何かマホービンみたいな構造の断熱トンネルでも地下にあるのか?(笑)。ひょっとしたら、この学者もお役人も減衰に関する「逆二乗の法則」だって御存じないのかも知れない。
 他にも「岩が熱せられて膨張して割れて地震が起きる」なんて言ってるけど、地中奥深くの超高圧でマグマでさえ溶けることが出来ずにいるのにそんな簡単に「膨張」なんてできるんですか?そんなんやったらとっくの昔に地球割れてまっせ。

 とにかく文系野郎のおれが読んでもツッコミどころ満載なのだ。大体、東日本大震災の数日後の富士山近辺での地震当てた、っちゅうんなら、震災そのものを当ててみろよな。

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 今日書きたいのはしかし、恐らくは大真面目に研究されてるであろうこの老科学者を罵倒したり貶したりすることではない・・・・・・まぁ、雑な提灯記事書いてる藤ナントカは叩く価値が大ありだろうが(笑)。

 おれが書きたいのは、どうして地震予知に関しては、色んな、それもそれなりに専門分野で功成り名を遂げた学者が晩節を汚すような事態に陥ってしまうのだろう?ってコトだ。本当に不思議でならない。

 以下敬称略でズラズラッと書いてみよう。

 来る来る詐欺とまで言われて逆の意味で有名な串田嘉男は元は在野の天文家として世界的に有名な人だった。所謂「コメットハンター」ってなカテゴリーの人で、これまでに見つけた星は数多い。余談だけど夫唱婦随で奥さんもまた在野の天文家として有名だったりする・・・・・・で、流星観測に用いてるFM電波の変動と地震との関連を「発見」し、今はむしろ天文家よりそっちが本業になっちゃってる。それにしても高価な機器類が大量に必要なのに、一体全体どっから収入得てるんだろうね?パトロンがいるんかな?
 それはともかく、この人の予知は大層で学術的な表現のワリにいっかな当たらない。何年前だったか勇み足で大地震が来るぞ〜!って大々的にやっちゃって結構な騒ぎになったもののダダ滑りでホトホト懲りたか、腰が引けたか、今伝えられてるNo.1778と名付けられた中部地方にM8クラスのが来るぞ〜!って公開情報は何と2008年の夏から発生日を訂正/先延ばししながら未だに継続してる(笑)。無論その間、東日本もあれば熊本もあった。御嶽山も焼岳もチョロッとだけど噴火した。新島も出来た。フツーに考えても何やねんこれ?って思うよね。

 電気通信大学名誉教授の早川正士も同じくFM電波による地震予知を行ってる・・・・・・が、この人はとにかくセコくてM5〜6クラスの予想しかしない。それが何よりまず胡散臭い。そしてそんな予知情報をいつも3ヶ所くらい流す。そりゃぁそれなりに起きますって、当たりますって。何だか、漢に大穴を狙わず堅実に枠連で、それも流して馬券買うタイプの人を思わせる。本来の専門は電磁環境学って良く分からないけど、その世界では随分なオーソリティーらしい。

 もっとひどいのが東京大学名誉教授にして日本測量協会会長(そんなんあるんやね!)の村井俊治で、本来の専門は土木工学で測量のプロ・・・・・・で、この人は国土地理院が発表してる全国のGPS情報から予知を行っている。
 この人のはそもそも予知になってない(笑)のが最大の特徴だ。だってしょっちゅうほぼ日本全土が警戒区域になってんだもん。笑かしてくれるのは熊本での大地震が起きた時、この人の乱発しまくる警戒区域に唯一入ってなかった地域がその熊本だったっちゅうエピソードだ。ここまでの大ハズレをかましたにも拘らず、相変わらずGPS頼みでひねもす地震予想を垂れ流してる。
 ・・・・・・で、この人、国土地理院がGPS情報を発表するのが遅すぎるなんて文句を言ったりしてんのね。もっとリアルタイムに発表してくれたら救える命はもっとあるはずだとかナントカ鹿爪らしいこと言ってた。たしかに観測日から発表までに2週間くらいのタイムラグがあるのは事実だ。しかしその間、国土地理院だって別に遊んでるワケではない。何をしてるのか?っちゅうと補正してるのである。地面って実は月や太陽の引力によっても日々僅かながら変動してるから厳密なデータのためにはどしたって補正が必須なのはおれでも知ってる。ホンマに測量のプロなのか?ちょっと問いたい。

 かつて取り上げた弘原海清も元は大阪市立大学の理学部長まで務めた人だったが、大気イオンにハマッて誤報トバしまくりのまま本人は5〜6年前に鬼籍に入った。最後まで怪気炎を上げてたのか失意の中だったのかは寡聞にして知らない。それでも立ち上げたNPO法人は本人の遺志を継いで、っちゃぁ聞こえは良いが、要はイマイチ鳴かず飛ばずのままで今も運営されており、観測点もそれなりに増えてはいるようである。

 ・・・・・・とまぁFM電波、GPS、大気イオンと大体こんなところだろうか。貧乏人が雲やら電卓に頼ってるよりはまだマシなようにも見える。外国には地中を流れる微弱電流から予測しようとする流派もあるようだけど、日本は狭い国土のあちこちがあまりに拓かれてるもんだからノイズだらけでムリらしい。

 もちょっとみなさん協力体制を作って情報交換しながら総合的に予知すればよいのに、そういった動きは今のところ聞かない。ともあれ色んな要素が絡まりあってるであろう大地の動きの予測に、一つの解法のみを充て込もうって姿勢には、料理の美味さを説明するのに、その中に使われてる一つの素材の良し悪しだけでやろうとしてるようなナンセンスさとズレをおれは感じる。「このきつねうどんは美味いです!それはうどんが美味いからなんです!全てはうどんの良し悪しです!」っちゅうたらみんなから嗤われるでしょ?。出汁も美味けりゃ、あげだって美味いんちゃいますのん?っちゅうこっちゃね。

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 閑話休題、肝心の話だ。どうしてこんなコトになっちゃうんだろう?

 1つには純粋な科学者としての未知の事象に対する飽くなき好奇心・探究心が根底にあるだろう。ヲタクっちゃヲタクとは申せ彼等が大マジメかつ粘り強くやってるのは事実なんだし、否定する気はサラサラ無い。
 その次に考えられるのは、何とかして科学の力で人を救いたいっちゅう崇高なヒューマニズムだ。もし自分の学んできたことが多くの人の命を救えたらなぁ〜、と願うのはもちろん悪いコトではない。とても良いコトだ・・・・・・おちょくってるワケではないよ。

 そぉは言いつつ一方では、ひと山当てたい!ってなスケベ根性もぶっちゃけどっかにあるだろう。だって地震予知に継続的かつ安定的に成功してる例は世界的に見てもないのだから。もし成功すれば空前絶後・前人未到の偉業であり、後世に間違いなく名を残せる。
 さらには老いの手遊び・余技、ってのも考えられる。串田嘉男以外は学者ったって、みんな大学を定年退官したような高齢者ばかりだ。息苦しい大学組織の中で小心翼々まめまめしく勤め上げ、やっと晴れて自由の身だ。念願のセカンドライフだ。年金だって一杯貰える。さぁこれから何をしよう?って考えてた時にたまたま大地震なんかが起きて、自分の専門分野で何か変な前兆なかったっけかなぁ〜?、なんて調べてるうちに・・・・・・っちゅうのもあるだろう。

 ・・・・・・こうしてあれこれ考えてく内に、ちょっと暗いトコに考えが行き着いてしまった。

 おれは常々、老いの諸相の一つに「狂う」ってのがあるんぢゃないかと思ってて、自分自身の心配なんかもしてるのだけど、ひょっとしたら彼等の行動は学者が老いて行く中での狂いの発現ではないのか?って思ってしまったのだ。
 若い頃から頭を働かせまくって鍛えてるオカゲかどうか、学者で認知症になってボケた人ってあんまし聞かない。しかしだからって最後までマトモである保証もない。探究心がナカナカ成果の出ない中でいつしか偏狭で自閉的な執着になり、妄想と願望がないまぜになった自説に拘泥・固執して正常な判断が出来なくなることだってあるのではないか?・・・・・・と。
 阿呆な大衆では、せいぜいゴミ屋敷を拵えたり家の前を通せんぼしたり制止も聞かずにハトに餌やるくらいしかできないが、痩せても枯れてもそこはやはりインテリゲンツィア、学究的に狂ってってんぢゃねぇのか?と。

 トーマス・エジソンは晩年、当時隆盛を極めてたのもあるけど、オカルトブームにハマって霊界との通信機を作るのに熱心だったと言われる。送電方式を巡って直流と交流で火花を散らすライバルだったニコラ・テスラも何たる偶然か、同じように霊界通信機を作ろうとしていた。もちろん実現するハズもなく、ハッキシ言って二人ともいささか常軌を逸した晩年を過ごしたのだ(まぁ、テスラは元々かなりフツーぢゃなかったけど・・・・・・)。
 サイエンティストが進化して、もとい老いてマッド・サイエンティストに変態することは十分にあり得るコトなのである。

 そんな過去の歴史と今の学者OBみたいな年寄りたちが地震予知にハマってる姿は、何だか妙に符合してるような気がする。いささか残念ではあるが、人的な面からもまだまだ地震予知っちゅうのはむつかしいのではないかと言わざるをを得ないのが現状だと思う。

 来年の1月、果たして伊豆半島近辺に来ますかねぇ〜・・・・・・。

2017.12.17

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