「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
Strange Cigaret Blues


これがIQOS。

 つい最近、タバコを流行りの加熱式煙草の一つである「IQOS」っちゅうのに変えた。それで改めておれの周囲を見渡してみると、昔ながらの火の点く煙草を吸ってる連中の方が少数派になりつつあったりする。エラい時代になったモンだ。

 ちなみにこの加熱式タバコ、現在市場には3つの方式が流通している。ニコチンを含まない電子煙草だったら有象無象の怪しいのがそれこそ星の数ほどあるけれど、所謂税金の掛かる・・・・・・つまりタバコ葉を使用してニコチンを含有するモノホンではこれら3種類だけらしい。
 元祖はおれも買ったフィリップモリスの「IQOS」で、短い煙草を葉巻状の加熱器の中に突っ込むと、ヒートブレードっちゅうカッターナイフの刃みたいなものが中心に刺さって葉っぱが過熱される、っちゅうモノだ。めんどくさいのはそれの充電器が別にあり、白金カイロをちょっと小さくしたくらいのサイズがあって、大体20本吸ったらそれ自体を充電してやんなくちゃいけない。オマケに結構ヤニみたいなのが内部に溜まって来るから、これも大体20本吸うごとにチマチマと掃除してやんなくちゃいけない。さらには「6分以内・14吸いまで」って制限がある。イライラ喫うタイプの人だとアッちゅう間に終わってしまう。ただし喫った感じが最も従来の煙草に近くガツンと来るのはコイツだろう。

 IQOSの欠点を克服したと言われるのがBATの「GLO」である。紙パックの牛乳を一回り小さくしたような本体にマルボロやケントで見掛けるのと同じような細いタイプのを突っ込んで吸う。IQOSがタバコの中心から暖めるのに対して、これは紙巻の外から暖める方式なのが最大の違いだ。掃除がひじょうに楽だったり、吸い込む回数の制限がなくて3分以内なら何回でも吸えるっちゅうのがメリットだけど、喫い始めて1分くらいすると急に味が失せて来て、紙の焦げる臭いがキツくなってくるのが欠点だと思う。あと、喫ってる姿が紙パックの牛乳をストローで吸ってるみたいでいささかマヌケなのも挙げて良いかも知れない。ただ、今はこれを逆手に取った紙パック牛乳デザインのケースがサードパーティーで売られてたりする。いっそタバコ部分も蛇腹で折れ曲がるようにするともっと楽しいかも知れないな(笑)。
 いずれにせよこれらは最初にスイッチ入れて喫えるようになるまでに数十秒掛かる。パッと火を点けてフゥ〜・・・・・・なぁ〜んて芸当はムリで、いささかまどろっこしい。

 これら先行製品の欠点をさらに研究して出されたのが、発明は下手だけど改良の上手い日本らしく、JTの「PLOOMTECH」で、どちらかっちゅうと以前から存在した電子煙草に近い印象がある。気化させる何か液体の入ったカートリッジとタバコ成分の収まったカプセルの2段構えになっており、細い本体に繋いで使う。その姿はタバコちゅうよりは昔の煙管を想い出させる姿だ。1つのカプセルで50喫い(これをJTは「パフ」と呼んでる)まで出来て、オマケに待ち時間ゼロ、喫いたい時に喫えて止めたい時に止められる。掃除も全く不要・・・・・・と好いコト尽くめなんだけど、何だかちょっと喫った感じが上の2つに比べると上品すぎてパンチに欠けるのが最大の欠点だろう。まぁ、「一服付ける」って感じが最も強く、ホント見た目含めて煙管っぽい。

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 そうそう、どうして乗り換える気になったのか?ついて書いてなかった。

 ウソかマコトか、早くに乗り換えたヤツに「これにしてから息が上がりにくくなりましたよぉ〜。喉の調子も良いですし、絶対替えた方が良いですよぉ〜」なんて強く勧められたのと、初期の本体の供給不足が解消されてだいぶ入手が容易になったことがある。
 思えば長年の喫煙が祟ったか、おれも声が段々と出にくくなって来てたのだ。自慢ぢゃないけど若い頃はハイトーンボイスがいくらでも出せて、「Child in Time」のシャウトだって出来たのだ。それが今やもうカラオケでちょっとサビで声張り上げる段になると、噎せたりしてどうにもならなくなってる。ゲホゲホ。ホント、オッサンとは不細工な生き物だ。
 喫ってたのは1mgでそんなヘヴィな代物でもなんでもないし、本数にしたって1日一箱も行かないくらいだったのに、洟かんだらティッシュはヤニで真っ茶色になる。咳することだって多い。歯科検診があると歯の裏のヤニの沈着を指摘される。オマケにどしたって服とかに匂いも付く。

 そんなんでちょっと観念したような気持で、繁華街を裏手に入ったところにある教えてもらった店に出掛けてったのだった。店の中は何か白を基調にしたミョーにガランとしたSFチックな雰囲気だ。

 手続きはとてもカンタンで、何かi−Padをコチョコチョ操作させられて15分くらいで入手できた。何となく紙巻タバコのイメージで白にしてしまったが、後から知った噂によるとプラスチックの擦り減るのがネイビーの方よりも早いらしい。葉巻みたいなんだし、茶色ヴァージョンとか作れば良いのに。

 ともあれ、従来のと併用では乗り換えも上手く行かないだろうって気がして、その日を以てスッパリと紙巻タバコは止めてしまった。買ってあったのがリビングの小物入れに2〜3箱残ったままになってる。もっと感傷的な気持ちになるかと思ってたら意外にならなかった。まぁ、火のない加熱式とはいえタバコはタバコなんだしね(笑)。

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 今はもう、火の点く煙草には戻れないなぁ〜、って思ってる。だって臭いんだもん。乗り換えてから後も2〜3本は試してみたんだけど、ちょっと匂いに耐えられなくなってしまってた。

 そして、実際に変化が現れた。まずはタールが無くなったのか鼻の中が綺麗になった。鼻での呼吸がしやすい。そして嗅覚が戻ってきて、細かい匂いの違いが分かったり微かな臭気に敏感になった・・・・・・って、同時にこれは困ったことでもある。電車の中で隣に座る人の匂いがこれまで以上に気になるようになったのだ。
 まずはデブ、ホントに臭いヤツが多い。動物園みたいな獣っぽい臭いさえ漂わせてるのまでおる。最近とみに増えた外人の体臭も気になる。腋臭のような、汗臭さのような何とも言えない臭いを強いコスメで誤魔化しててキモチ悪い。シャワーなんかでお茶を濁さず風呂にチャンと入れ、って。オバハンの化粧臭さは言わずもがな、若いオネーチャンでも身の回りの始末がだらしないのか何なのか、堪らない悪臭を振り撒いてるのが多い。
 一方でおれはちょっと安心した。何だ、ノネナールだなんだとオッサンばっかしが迫害されるべき臭い存在ではなかったのだ。みんな臭いやんけ(笑)。

 さらにしばらくすると声にまで変化が現れ始めた。そりゃぁ昔みたいには行かないけど、高い声が少しづつ出るようになって来たのである。家に戻ってギター弾きながら歌ってたりすると、いつの間にかこれまで出せなくなってた音域に再び届くようになってる。ちょっと嬉しい。
 息が上がらなくなった、なんてコトは流石にまだ無いけれど、ヨメと出掛けて山道上がってもたしかに以前ほどにはゼェゼェと息切れしなくなったような気がしないでもない・・・・・・そりゃ鼻の通りが良くなって、口で息することが減ったんだから当然か。

 ・・・・・・しかしここに至って、実はある疑念が首をもたげて来てるのである。

 それは血圧だ。これはもう遺伝もあって、5〜6年前から降圧剤が手放せなくなっており、2ヶ月に一度薬を処方してもらってるんだけど、ちょうどIQOSに変えた辺りから、上も下も若干上がってるのだ。それまでは120台半ばだったのが130台半ばに、80前後が85前後だから結構な上がり方である。
 ただ、ちょうどその時期あたりに、従来の薬が強すぎる気がして医者にちょっとユル目にしてもらったのももちろん影響してると思う。とは申せ、同じような話を他の人からも聞いてるので、加熱式タバコは従来の煙草に比べて良くないことに変わりは無い・・・・・・どころか、むしろ血圧には悪いのではないかって今は疑ってる。

 理由はニコチンの強さにあるのではなかろうか。ニコチンは血管を収縮させ、血圧を上げる働きが強い。

 加熱式タバコにはニコチン量が明記されていない。理由は計測できないかららしいが、明らかに従来のタバコよりも強く感じる。それが証拠に1日の本数が以前よりも減って10本ちょっとになった。巷間囁かれてる噂では「タバコは止めれてもIQOSは止められない」などとも言う。要は従来のタバコよりも依存性が強いのだ・・・・・・と。それに考えてみれば、煙に含まれるよりも水蒸気に含まれてる方が何となく体内への吸収も早いのではないかとも思えるし、この点は今後ひょっとしたら問題になるのではなかろうか。もちろん、そうなったらなったで喫煙者がますます肩身の狭い思いをするだけなんだろうが。

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 ふと、火の点く煙草の無くなった世界を想像してみる。

 タバコの火の不始末で家が火事になって焼けることは無くなるだろう。とても良いコトだ。
 火を落として服に穴開けることもなくなる。これまで何度もやらかしたな。
 根性焼なんかもできないわな(笑)。これまた良いコトだ。

 しかし・・・・・・

 咥えタバコでギターも弾けなけりゃ ストラトのヘッドに焦げ跡の残ることもなくなっちまう。
 タバコを指に挟んだままの闘牌シーンも成り立たん。
 女に別れを告げてトレンチコートの襟立ててタバコに火を点けて立ち去る、なんて気障なシーンもムリだ。
 ゴロワーズの香りを漂わせた裏町のギャングも居れなくなる。
 ただでさえ儲からないマッチ売りの少女はそもそも商売が成り立たん。
 今際のキワの兵士の口に咥えさせても、加熱時間を待ってたらその間に息絶えてしまうわ(笑)。
 「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」の意味が分からん。
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 何だかとても寒々として味気ない世界だなぁ〜・・・・・・紫煙が無いのも。 


金ない時は良く喫ってたなぁ〜・・・・・・学生時代はたったの40円でした。ん!?良く喫ってたのは「しんせい」だったかな?

2017.11.24

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