貧なれど困ならず・・・・・・日本の貧困問題の本質 |

貧困を取り上げた作品としては極北の一つだろう・・・・・・山野一「貧困魔境伝・ヒヤパカ」
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http://www.suruga-ya.jp/より
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------風雑じり雨降る夜の雨雑じり雪降る夜は術もなく
寒くしあれば堅塩取りつづしろひ糟湯酒うち啜ろひて
咳ぶかひ鼻びしびしにしかとあらぬ髭かきなでて
我除きて人はあらじとほころへど
寒くしあれば麻襖引きかがふり布肩着ぬ
有りのことごときそへども
寒き夜すらを
我よりも貧しき人の父母は飢え寒ゆらむ
妻子どもは乞ふ乞ふ泣くらむ
このときは如何にしつつかながよはわたる
天地は広しといへど吾がためは狭くやなりぬる
日月は明しといへど吾がためは照りや給はぬ
人皆か吾のみやしかる
わくらばに人とはあるを
人並に吾れもなれるを
綿も無き布肩衣の海松のごとわわけさがれるかかふのみ肩に打ち掛け
ふせいおのまげいおの内に直土に藁解き敷きて
父母は枕の方に
妻子どもは足の方に囲みいて憂へさまよひ
竈には火気吹きたてず
甑には蜘蛛の巣かきて
飯炊く事も忘れて
ぬえ鳥ののどよひ居るにいとのきて
短き物を端切ると言えるが如く
しもととる里長が声は寝屋戸まで来立ち呼ばひぬ
かくばかり術なきものか世の中の道
世間を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば |
山上憶良「貧窮問答歌」 |
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万葉集の時代ならいざ知らず、経済大国・先進国とは思えぬほどに現在の日本には貧困な人で溢れ返ってるのだという。
幸か不幸か現在の自分の身の回りには該当する人はいなさそうなんで(あるいはひょっとしたら実情は火の車ってのはいたりして!?笑)、そう聞かされてもも一つピンと来ないのだけれども、TVだけでなく新聞、雑誌といったメディアがシリーズ化して取材ルポみたいなのを連載してたりすることからすると、居るところにはスゴく沢山居るんだろうな、って思う。
実はOECD(経済協力開発機構)による貧困の定義っちゅうのがあって、それによると「等価可処分所得の中央値の半分の金額未満の所得しかない人口が全人口に占める比率」を「相対的貧困率」と呼ぶらしい。でもって「等価可処分所得」っちゅうのは、「世帯の可処分所得を世帯人数の平方根で割って調整した所得」・・・・・・何だか良く分からないが、物凄く乱暴に言って一人暮らしなら年収およそ140万円未満くらいが貧困層ってコトになるんだそうな。月に12万弱である。2人暮らしなら200万弱、ってトコだ。あ!これ、可処分所得だから税金とか引いた後の金額ね。えーっと、何ちゅうんだったっけ総額のコト、アレで言やあそれぞれ180万円とか250万円くらいだろうか。
この割合が日本では実に15〜6%に上るというのである。人口のおよそ1/6である。でも6人に1人が貧困層ってニワカには信じがたく、ホンマかいな?ってやっぱり思ってしまう。それに基準がちょっと甘いようにも思う。大体、一人暮らしで月に12万円手取り残って、そらまぁ決してラクではないし贅沢も出来ないだろうけど、そこまで生活苦しいのかな?って思ってしまう。だって1日4千円くらいは遣えるんですよ。食てチョンどころか工夫次第で増やせますよ。
ここでビンボー人を守る次なる言葉が出てくる。「絶対的貧困」と「相対的貧困」ってヤツだ。前者は説明するまでもなかろうが、後者がどぉゆう意味かっちゅうと、要は「人並みに暮らせない」ってコトである。上の数字もこの相対的貧困についてのモノだ。1日4千円で暮らせなくはないけど、人並みぢゃおまへんがな、ってコトだ。
だから給料をもっと上げろ!最低時給を1,000円にしろ!ベーシックインカムだ!ってな意見が出て来るワケだけど、おれに言わせればバカも休み休み言え、って思う。どこまで欲やねん!?と。デモとかテレテレやってるヒマがあんならその分どっかでアルバイトでもしてろ!と。
ロクに働きもせずに格差だけ埋めてくれっちゅうのはいくらなんでも甘い。働いても給料が安いとか働き口がないとかについても、中学ぐらいでグレてヤンキーになってできちゃった婚で両方とも中卒かなんかで10代で一緒になって、で案の定男の方がクズで別れて・・・・・・ってな風に何だかんだで過去の積み重ねが大いに影響してコトが多いんであって、そこを全部スッ飛ばしてゼニだけ寄越せ、的な姿勢には本来の税金以外に酒だの煙草だの多額の税金を払ってる身としてはどうにも釈然としない。
そう、ここまでの言辞からお分かりかと思うが、おれはどうも今の日本の貧困問題に対していささか懐疑的にならざるを得ないのだ。
末野謙一という男がいる。かつて浪速のバブルの帝王、地上げ王、借金王・・・・・・ありとあらゆるありがたくない綽名を付けられた大阪の土建屋の元・社長だ。新大阪駅の北西、今は高層のオフィスビルが建った辺りが随分長い間更地になってたのはこのオッサンが絡んだいわく付きの土地だったからだ。
96年に逮捕され、不正融資によって焦げ付いた6〜7000億からの金は結局税金から補填されたっちゅうバブルのキーパーソンの一人である。出所後、何故か未だに西宮かどっかで優雅な御大尽暮らししてるっちゅうから世の中不思議だ。
まぁ野卑と粗暴と強欲が服着て歩いてるようなロクでもない男ではあることには間違いないが、一つだけ良いコトを言ってる。このオヤジ、万博景気に沸き返る大阪で裸一貫のし上がるためにダンプの運転手やって「1ヶ月に45日働いた」のだと言う。要するに昼間の30日は全く休まず、夜は1日おきにしか寝ないで15日働いて、それでその後の商売の元手を蓄えたんだ・・・・・・と。
実態は零細な掘っ立ての土建屋やって、若いボンクラ集めてプレハブのタコ部屋に押し込んで土方やらせて、マトモに給料も払わずに巻き上げたのを蓄財に励んでた、っちゅうのが正解との噂もあるが、まぁそれでもその頃は本人自身も不眠不休で働いてたのはまずまず事実だろう。
バクシーシ・バクシーシと喜捨ばかりを乞うクレクレ坊主な連中はちょっとこのコッテコテでギラギラのオヤヂをちったぁ見習った方が良いと思うな、おれは。
・・・・・・え!?過労死だって!?そんなん1年くらいなら死にません、ってば。それに自らの欲望に衝き動かされてりゃ、火事場の馬鹿力で案外頑張れるモンだ。それで死んだら、自然淘汰に遭ったくらいに思ってろ!って。グズグズいう前にとにかく働け。まずはそっからだ。
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でも本当に運悪く貧困に陥ってしまう人だっているではないか!?頑張って真ッ正直に働いてるのに貧困だ、働きたくても働けない、稼ぎたくても稼げない人だっているではないか!?という指摘は当然あるだろうし、おれだってこうして毒吐きながらもやっぱしそう思う。
徒然に考えたり色んな貧困のルポとか読んでるうちに、どうやら「貧困」と十把一絡げにされてる人々が、経済的に苦しいっちゅう結果だけを唯一の共通点として、実際は大きく二つに分かれてるのではないかということに気付いた。すなわち、救うべき貧困と、テキトーにどっかで野垂れ死んでくれたらいいような貧困の二種類だ。残念だが貧困にだって貴賤があるのだ。さらには「貧困」って言葉自体をそんなに軽々しく使って良いのだろうか?って気さえしてきたのだった。
「貧困」とは「貧しくて困ってる」という意味なんだろうけど、反対語は一体何なんだ?やっぱし「裕福」か?しかし、貧しくても困ってない人もおれば、ごく少数だろうけど幸せな人だっている。逆に豊かだけど困ってたり不幸せな人だって同時にいるだろう。「貧しくて困ってる」って何だか逆立ちした拝金主義の言葉にさえ思えて来る。むしろ昔ながらの「貧乏」の方がニュートラルな表現ではなかろうか。「貧しくて乏しい」だけだもんね。ここに余計なお世話の感情論は欠片もない。
貧困に陥るキッカケは人それぞれだろうが、やはり就職の失敗、失業、離婚、病気/怪我、また最近では親の介護あたりが多い。安易に借りた奨学金がキッカケって話もあるし、古典的な所では前科者でマトモにお天道様を拝めなくて、な〜んてのもある。もちろん、生まれながらに貧困一直線なんてぇ残念な人もいるだろう。つまり入口は様々だ。
自慢ぢゃないがおれだって決して豊かにこれまで過ごして来たワケではない。どうだろ?金回りが良かったのは大学の数年間くらいで、ようやくちょっと落ち着いたのは不惑を迎えてくらいからだ・・・・・・ってな個人の事情はともかくとして、貧困状態の中でメンヘルだのなんだのいろんなゴタク並べてセルフネグレクトっちゅうか緩慢な自殺状態な連中は「賤」の方の存在だとやはり思ってしまう。繰り返しになるけど財源厳しいご時世でもあるし、この際こぉゆう連中は放って置いて良いのではないかと思う。
なぜなら、この人たちはたしかに「貧」ではあるが「困」ではないのである。かといって「福」でもない。だってアパシーで感情が無いのだから。生ける屍のようなモンである。有名な太宰治「人間失格」のラストシーン、主人公の独白を引用してみよう。
------いまは自分には、幸福も不幸もありません。
ただ、一さいは過ぎて行きます。
自分がいままで阿鼻叫喚で生きて来た所謂「人間」の世界に於いて、たった一つ、真理らしく思われたのは、
それだけでした。
ただ、一さいは過ぎて行きます。
そう、まさにこんなカンジに感情を喪失して茫然としたままの人間失格な人がウダウ・ダグズグズと貧困層の中には沢山いるのだ。それが元々備わった、あるいは段々と形成されてきた形質によるものか、何らかの外的要因によるものかをイチイチ議論する気はない。申し訳ないけど前者は詰まる所ただの出来損ないであり、後者は要は他力本願の裏返しの他罰・他責に過ぎないからだ。ショック療法でピラニアを放った池にでも突き落せばちったぁヤル気だすかも知れないが(笑)。
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ショック療法でさらに想い出したんだけどさらに、今のこの貧困って豊かさの果てに生み出されたものなんぢゃねぇの?って気も実はしてる。上に挙げた貧困に陥るケース見てても、あまりに見通し甘いんとちゃいまんのん?とか、プライドなんか早よ捨てなはれ!とか、もぉちょっと世の中の厳しさに耐える力付けはった方がエエんちゃいます?とか、まぁツッコミ入れたくなるようなケースがとても多いのである。なんかもぉ生きて行く上で必要な芯柱が2〜3本欠けてるような人とも言えるだろう。そんな人が増えてるような気がする。
その背景は月並みではあるけれどやはり、戦後の経済発展によってもたらされた豊かな生活、少子化、医療水準の向上、行き届いた教育の名の下のほぼ誰も彼もが享受できるぬるま湯なモラトリアム期間といったもによるストレス耐性やバイタリティの低下を挙げざるを得ないが、これ以上書き連ねるには少々おれは酔い過ぎてしまった。
続きはまたいつか、ってコトで今日はココまで。 |
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2017.06.03 |
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