「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
衆愚の時代


プラトンはアテナイの衆愚政治に嫌気がさして哲人政治を唱えた。

 近年何だかとても世の中が騒然としてる。

 イギリスは国民投票によってまさかのEU離脱が可決されてしまった。んなこたぁ絶対ないない!ってタカ括ってたキャメロンは辞任に追い込まれてしまった。ファラージだったっけ、離脱派の急先鋒自身が離脱可決になるなんて本気で思ってなかったもんだから、いざ離脱が決まると急にイモ引いちゃってこっちもとっとと党首を降りてしまった。無責任極まりないとんでもないデマゴーグ野郎だ。コイツは厳しく断罪されるべきだろうとおれは思う。

 アメリカ大統領選挙では、ヘタすりゃ泡沫候補にしかなれなかったような粗野な成金オヤヂのトランプが、大方の予想を裏切って国民の支持を集めまくってる。言ってることはメチャクチャで暴言・舌禍の嵐であるにも拘らず、所謂白人の中産階級・・・・・・それもプアーホワイトに片足突っ込んだような層からの支持がとても厚い。アッパーミドルからの支持が厚いクリントンのオバハンはちょっと劣勢に見える。当然だわな。いつの時代も富める者は貧しき者より数では劣るのだから。それはともかくモニカ・ルインスキーだったっけ、不適切な旦那の浮気相手がどっちを支持してるのかについてはちょっと訊いてみたいモンだ(笑)。

 ちょっと前はドイツが難民受け入れでアホみたいに沸き返ってた。国民全体が人道主義に自己陶酔してりゃ世話ないわな〜。受け入れ態勢も何も出来上がってないのにメルケルのオバハンが勢いでナンボでも受け入れまっせ〜!なんてやっちゃったモンだから100万単位の、ついでに言えば相当数の過激派メンバーも混じり込んで難民を名乗る連中がワラワラ押し寄せて収集つかなくなって、流石にこりゃイカンと焦って虫の好いコト並べてたのは今年の初め頃だったか。

 もちょっと遡るとアラブの春とかゆうて、何だか良く分からんままに民主化運動とやらが盛り上がったりもした。始まりはチュニジアだったかエジプトだったか、それは燎原の火のようにアッちゅう間にアラブ諸国に広まり、あちこちの政権が倒れ、カダフィ大佐のように悲惨な末路を辿る例まで現れた。その挙句のIS台頭だ。長期独裁政権を倒してもっと自由で幸せになれるはずだったアラブ諸国は今や、とんでもない状況に陥ってる。目の前をぶっ壊したいだけで、その後の戦略も何もないからこんなことになる。

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 国内に目を転じても、そりゃぁ大量に難民が発生したり、死人が出たりなんてなってないのはありがたい限りだけど、騒がしいことは騒がしい。

 専ら出所が文春砲と呼ばれる特ダネスクープに端を発してるのばかりなのがウソ寒い限りだが、舛添要一が仇名の「ねずみ男」そのままなセコい行状を暴き立てられて都知事辞職に追い込まれ、その後の都知事選の立候補者も何だか取って付けたようなムリクリ感ばかりで全くパッとしない。野党4党に至っては何を血迷ったか、統一候補として鳥越俊太郎なんてピーマンのジャーナリスト崩れを担ぎ上げて来た。一体全体何をしたいのか、お飾りでもどうにかなる参院選ぢゃねぇぞ、って思ってたらまたもや文春砲だ。10何年昔に女子大生のオネーチャンを食おうとしたとかつまもうとしたとか・・・・・・まさに大砲乱射状態やな(笑)。
 ちょっと前のその参議院選もそら参議院の議員なんてナンボお飾りで良いとはいえもぉグダグダだった。今に始まったことぢゃないとは申せ、今井ナントカとか朝日ナントカなんて議員にしてどないすんのん?・・・・・・あ、高樹沙耶には是非とも当選していただいて大麻解禁して欲しかったかも(笑)。

 文春砲っちゃぁベッキーと「ゲスの極み乙女」の川谷ナントカっちゅうのんでワイのワイの大騒ぎしてたっけ。大体、扁業の極北である芸能人とかミュージシャンにお綺麗な倫理やモラルをなんでそこまで求めんとアカンのか?おれにはどぉしても分からない。どぉでもエエやんかと思うけどな。それにそもそも1度か2度ヤッたくらいっしょ!?そんなん「股座の握手」っちゅうヤツやんか。
 乙武クンをスクープしたのはどこだったっけ?世間からボッコボコに袋叩きにされて、元から手足ないのに、ホント手も足も出せないくらいにやられて消えちゃった。五体は不満足だけどチンチンは十人力だったんだから好きにさせたったらエエんちゃうん、っておれは思うぞ。
 芸能人のゴシップに対して文句を言える資格があるのはCMに起用してた企業だけやで。だってイメージに大金払ってたんだから。

 衣食足りて礼節を忘れるどころかすっかりバカになってしまって、アタマの悪い大衆の熱狂が世の中を覆い尽くしているようにも思える。騒ぎたいから騒ぎたい、叩きたいから叩きたい、後先考えない短慮ばかりでホント、衆愚の時代だなぁ〜、ってつくづく思う。

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 よしんば大衆を構成する一人一人はそれなりにアタマ良くても、それが大衆って集合体になるととにかくアタマが悪い・・・・・・これは昔から語られてきたことだ。どうしてそうなるかのメカニズムは上手くまだ言葉で整理できないんだけど薄っすらとは分かる気がする。最大公約数的に整理されスローガン化する主張、単純な二択状態、興奮と群集心理、スケープゴート、創造なき破壊、次々と現れる煽動屋、メディア、ブン屋、無責任で現実から遊離したインテリの理想主義・・・・・・そしてそこに長引く不況や治安の悪化、あるいは平和ボケといった色んな要素が加わるとアタマの悪さは加速する。

 フランス革命あたりに端を発した近代西欧の民主主義そのものが今、断末魔の状態にあるのではないかっておれは思う。かつてのギリシャ・アテナイのように。
 文明は進化する一方で、大衆の愚かさは何千年経とうがちっとも改まらないってコトを昨今の世間の情勢ははしなくも示している。そろそろ民主主義サイコー!みたいな安易なノリは改めるべきではないかと思う。

 EU脱退を冒頭に持って来たんでちょっと補足がてら言わせてもらうと、そもそもEUってのも実は衆愚の結果であったようにおれは思う。欧州大陸から戦争を無くす・・・・・・そらとってもエエことやわ、とおれだって思う。でもそれはみんなそぉなりゃエエなと思いながら2千年くらい片付かなかった問題でもあるのだ。なるほど先の世界大戦は悲惨だった。戦死だけでなく虫けらのように非戦闘員の何百万のユダヤ人やジプシーが抹殺されもした。もうこんなことを繰り返しちゃダメだ、善は急げ!・・・・・・ちったぁ落ち着いてユックリやれってば。
 高邁な理想主義や人道主義の熱狂に押される格好で、本当はもっと時間を掛けて醸成せざるを得ない各国の民度についての議論を置き去りにした実行プロセスのあまりの性急さ辺りがモロに衆愚なのである。結果、いざ始まってみるとジャカジャカと東欧から言葉も通じない難民だか出稼ぎだか何だか分からんのが、要は手っ取り早い金銭欲だけで万単位でイギリス本土に押し寄せてきたら、そら元からの住民は堪らんだろうと思う。そいでもって貧困国への拠出金はどんどん持ってかれる。不満溜まって当然だろう。

 つまりファシズムに向かったとかEUに向かったとか方向が問題なのではなく、右っちゅうたら右、左っちゅうたら左であとは勢い任せ、ってトコが救いようがないくらいに衆愚なのである。

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 民主主義は必然的に衆愚に堕して行く。それだけは間違いない。
 何とか防ぐ手立てはないのものか?

 残念ながら「ない」と断言せざるを得ない。何故なら上で述べた通り大衆という存在そのものが愚かであり、そんなんに依拠して成立する民主主義は本来的に重篤な欠陥を内包しているからだ。

2016.07.30

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