「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
平成の肥後大変


こんな時だからこそもっとあちこちの被災地に出てって盛り上げた方が良いと思うな・・・・・・

 いきなり出だしから辛口で申し訳ないんだけど、今回の熊本地震、冷静かつ客観的に考えて、それほどの大地震ではないとおれは思ってる。気象庁が「震災」っちゅう名前にはしません、と明言したのにも賛成だ。これは最初に明言しておきたい。

 いつからここまで日本人はストレス耐性が低くなったのか、ビービービービー五月蠅すぎる。実にみっともない。それは安易なヒューマニズムを煽りまくって来たメディアが悪いのか?無闇に自粛を美徳みたいに称揚するフリークスみたいな教育評論家といった一部の連中が悪いのか?ネットに蔓延する暗い自己顕示欲だけが原動力みたいな不謹慎厨や、ホンマに堅気の連中が運営してるのかどうかさえ疑わしいような押しかけボランティアが悪いのか?・・・・・・まぁ、全部悪いんだろうけど(笑)。

 そりゃぁたしかにそれなりに沢山の家がペチャンコになった。亡くなった人も約60名と一定数発生してしまった。未だにライフラインが復旧せず不自由な生活を強いられてる地域も多数ある。ストレスだって溜まりまくりだろう。紛れもなくどれも事実である。それはそれでとても不幸なコトだし、当事者・親類縁者・関係者にしてみれば堪ったモンではない。何だかんだで阪神も東日本も少しは体験した身からすればそれは実に良く分かり、同情を禁じ得ないんだけど、しかし過去のいろんな災厄と比べればやはり規模的には全然大したことないのである。
 こぉいった冷徹なスケール感を度外視して、可哀想です悲惨ですエラいこってすばっかし連呼するのは如何なモノだろうか?何かヘンだなぁ~?ってどうしてもおれは思ってしまうのだ。違和感、っちゅうやっちゃね。

 自動車で避難生活を送る人が多い、エコノミークラス症候群が続出だとか盛んに喧伝されてるけど、そもそもなんでそんなに多くの人が自動車で寝泊まりせんとアカンのだ?実はそんなん気分の問題で、ただもう家に居るのが怖いからって人が大半だっちゅうトコまでキチンと報じて欲しい。ついでに震度3とか4とかでうろたえんなよ、アンタの家はそぉカンタンには壊れませんよ、ってキチンと教えてやることの方がよほどおれは大事だと思う。
 たった一人の大学生が行方不明になってるだけの崖崩れの現場で重機を総動員してほじくり返すシーンを延々と映すことが本当に報道の使命なんだろうか?そりゃぁもちろん親御さんにしてみれば悲痛と心労の極みだろうが、それを国民がそこまで共有せねばならんのか?それよっか、これだけハデに揺れたけど実は被害が大きいのは案外局地的で、何ともない人がこれだけ沢山いまっせ~、ってチャンと伝えて欲しい。
 どこまで資格と資質があるのか分からん若くてアオい連中が、耳触りの良い「心のケア」とか称して当たり障りのないことをテレテレクドクド訊いて回るのが本当に必要なコトなんだろうか?そんな偽善の腐臭だらけの余計なお世話より、むしろこんな時だからこそ振る舞い酒でも配った方がよほど良いのではないかとおれは思う。九州だから焼酎だな、やっぱ。
 クダらなくて薄ら寒い優しさばかりを強要するACの広告垂れ流すくらいなら、刻々変化する復旧状況や支援物資の配布状況に加えて風俗街の復旧状況なんかも報じてみてはどうだろう?先着100名ソープ無料とかさ。
 くまモンだって何処に行ったのかちっとも出て来なくなっちゃったけど、こんな時だからこそ逆にあちこちの被災地に出向いてってムダに愛嬌ふりまけば、最大公約数的で良識的でちっとも面白くない慰問の娯楽よりはストレートに訴えかけれると思うけどなぁ~。

 不謹慎だ!って?ハハ、不謹慎さ・・・・・・で、それが何か?

 あのねぇ、人間は本質的に不謹慎な部分も多分に持ち合わせた矛盾だらけの滅茶苦茶な動物なんですわ。悲しいから笑いもするし、苦しいからバカやったりもする。いや、そう「したい」のだ。おれはそう思うな。なのに、そうした矛盾を矛盾のままシレッと受け止めることさえできない知恵遅れみたいな単細胞が世の中に溢れ返ってる。世も末やで。

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 勢いおれの興味は厭世的な気質も相俟って、姦しい人間界のことより、地質学的に見てこの地震の意味するところは何なのか?といった考察に向かって行く。

 今回の地震で南海トラフ地震が誘発されるなんて阿呆な意見を述べる「識者」もいらっしゃったようだが、やはりこれはもっとマクロなレベルで着実に進行してるプレート内の応力が、たまたま地盤の弱い所で解放されただけに過ぎないのではないか?ってノーマルな説に賛成だ。フィリピン海プレートは今日も元気にたゆみなくユーラシアプレートの下にジリジリと潜り込んで行っており、歪みと莫大な応力は蓄積されてってる。いやもう何て着実な努力家なんだろう、ってなくらいにこれは毎日毎日ほんの僅かずつ地面の下の遥か深い所で進行してる。応力っちゅうのは受け売りで申し訳ないけど、物質が力を受けた時に内部に発生する抵抗力・・・・・・要は「踏ん張る力」みたいなもんだ。

 今、ギターを抱えたままこの駄文を打ってるんで喩えてみれば、弦を糸巻で巻き上げて行って耐え切れなくなれば弦は切れるし、ヘッドを掴んでグイグイ前に曲げて行けばいつかネックは折れる。弦が切れるのはたいていブリッヂの駒の上だし、ネックが折れるのは殆どがナットのトコだ。なぜならそこが一番弱いからだ。
 ギターの場合ならこれで終わりだが、地面はそう簡単ではない。弱い所がバキッと言ってもプレートは相変わらず淡々と潜り込みを続け、固着した部分に更なるストレスを掛ける。

 かくしてやはりそのうち南海トラフ巨大地震は確実にやって来るんだろうし、その前にはいわば「前駆症状」として中央構造線沿い・・・・・・個人的には怪しいと睨んでる燧灘や京滋方面を震源としてかなりデカいのがあるのではなかろうか。実にイヤだが、それはもう絶対に不可避のコトなのだから、むしろ来たるべきその日に向けてどう迎え撃つかを真剣に考えた方がよほど建設的だろう。

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 もう一つの関心事は言うまでもなく阿蘇がどうなるか?だろう。

 結論から行くと、今回の地震をキッカケに破局的な超巨大噴火が起きるとおれはちょっとも思ってない。何故なら熊本~大分を結ぶ地溝帯沿いの大地震は百数十年と地質学的にはけっこうな頻度で起きてるようだし、この程度のマグニチュードの揺れがマグマだまりが全て発泡して吹き飛ぶような噴火の刺激になってるとも思えないからだ。炭酸のペットボトルを指でペンペン弾いたくらいではいっかな破裂しないのと同じ伝である。
 また、阿蘇のマグマは長い歴史の中で成分が少しづつ変わって来てる、って説もある。溶け込んだガス成分が多く、また粘り気もあって破壊力のある爆発を起こす珪長質マグマから、あまり粘らず爆発力もそれほど強くない苦鉄質マグマになって来てる、っちゅうのである。
 それにマグマ溜まりが全て噴火に繋がるか?ちゅうとそうでもない。そのまま途方もない年月を掛けて冷えて固まることだってある。それが花崗岩とか御影石とか、専ら墓石とかに使う石材だ。大理石は石灰岩にマグマが嵌入して変質したモノだったりする。つまり、何でもかんでも爆発するとは限らない。そんなんだったら石材店は困ってしまうではないか。

 ただし、気になることもある。あまりに有名なAso-4と呼ばれる噴火が発生したのは今からおよそ7万5千年前で、その時の噴出量は600~1,000㎦だった。そして火山への年間のマグマ供給量はおよそ0.01㎦(世界中これはほぼ一定してるんだそうな)だから、以降の小噴火による噴出量を差し引いたとしても阿蘇山の地下には5~600㎦くらいのマグマは既に蓄積されてると思われる。
 ちなみにその前のAso-3が13万年ほど前だから、間隔は5万5千年ほど、その前のAso-2までの間隔は1万5千年、Aso-1までの間隔が大体13万年だ。どうにもそこに明確な規則性は認められないし、噴出量と噴火間隔にも相関性はない。だから予測のしようもない、ってのが正直なトコだろう。
 ただまぁ今後、もっと直接のトリガーとなり得るような強烈な揺れに見舞われたらちょっと危ないかも知れない。

 もう一つ、みんな阿蘇ばかり気にしてるけど九重連山や由布岳、鶴見・伽藍岳といった活火山があることも忘れてはならない。これらについても注意深く見守る必要があるだろう。いずれも阿蘇ほど巨大でないとは申せ、本気出せば麓の街並みを一瞬で焼き尽くすくらいのポテンシャルは秘めている。

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 いやいや、地震だの噴火だの気にしてもどうにも仕方ない杞憂よりも、おれにはもっと切実に気になることがあったんだった。

 あの辺は素晴らしい温泉の宝庫なのだ。東端の別府をフリダシに大小様々の温泉が数え切れないほど存在する。当然ながら侘び寂びっちゃぁ聞こえは良いが、要は零細でボロボロのトコも多い。おれが最初に訪れてから30年近く経ったけど、その間にも多くの温泉が消滅して行った。それが今回の地震をキッカケにさらにペースが加速するのではないかと憂慮してるのである。
 ニュースでも阿蘇の地獄・垂玉温泉が土砂崩れで孤立したり、湯布院の旅館が軒並み休業に追い込まれたり、内牧で源泉が何ヶ所も枯れてしまったなどと報じられてる。しかし、報じられるだけまだマシと言えるだろう。それだけこれらはメジャーな存在なのだから。その陰で全国区どころか地元地方紙のニュースに載ることもなくヒッソリと廃業して行く一軒宿や村の共同浴場といった小さな温泉は、今後相当数に上るように思えて気が重い。

 何はともあれ、世に蔓延するバカみたいな自粛ブームに与する気はサラサラない。次の休みは辛子レンコンや馬刺し、地酒の「美少年」なんか買って、昔のアルバム見返しながら側方支援に努めることにしよう。
2016.04.28

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