「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
離島幻想


一コマ漫画の基本中の基本である無人島

https://soudaimanken.wordpress.com/より

 「ザ!鉄腕!DASH!!」ってもう随分長寿番組で、多分20年以上続いてるんぢゃなかったっけ。番組開始当初は全員20代前半だったTOKIOのメンバーも随分オッサンになった。そして番組の中では最早アイドルとは呼べないようなムチャクチャなことをカラダ張ってやらされてる・・・・・・可哀想に殆どたいていの場合、リーダーの城島だけなんだけど(笑)。
 実はおれ、この番組がけっこう好きだったりする。あくまでバラエティ番組の枠組みを堅持して笑いを忘れず、決して説教臭くなることもなく、これまで長い長い時間を掛けて自然と深く関わっていた日本の喪われ行く常民文化に対してバカバカしいほど大真面目に向かい合おうとする姿勢が一貫してるからだ。

 東日本大震災とそれに続く福島第一原発の事故によってロケ地が避難区域に指定されたことで、人気長期企画だったDASH村が中断を余儀なくされたのは今さら言うまでもないくらい有名なエピソードだ。何たる運命の皮肉か、反現代テクノロジー的な企画が現代テクノロジーのカタマリである核の暴走によってその地を追われたのである。いささか大袈裟かもしれないけど、これは神話的とも言える展開だとおれは思う。
 しかしそれで番組のコーナーを落とすワケには行かんやろ!?ってなコトで、仕方なく流浪の旅に出るようにして出張ナンチャラとかいろんなツナギの企画が新たに生み出されたりする中で、今度はDASH島ってな長期企画が始まった。場所を見付けるまでの間スタッフは新たな候補地選定のために日本中を駆けずり回ってたんだろうと思う。

 耕作放棄地を開拓して自給自足を目指す、ってな基本的コンセプトは変わってないものの、無人島に舞台を移してからは大工仕事主体になってしまってあまり作物の栽培をやってないのはちょっと残念な気がする。不思議なことに海なのに漁もあまりやらなかったりする。何か大人の事情があるのかも知れないな。
 ・・・・・・で、この島、Wikipediaによれば瀬戸内海にある由利島ってトコらしい。45万平方メートルとかなり大きな島で、かつては漁とミカン栽培で栄え、人口もかなりあったとのことだ。

 ともあれこのようにかつては人が暮らしてたにも拘らず、今は無人島化してしまったところが全国各地に存在する。言うまでもなくその数は年々増加傾向にあり、少子高齢化、第一次産業人口の減少等によって今後さらに増えて行くのは間違いない。

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 子供の頃に家にあった雑誌で、たしか伊勢の英虞湾あたりに格安の無人島を買って週末を愉しむ男の話を読んだことがある。住むワケではないんで、別荘みたいなモンだ。島と言っても直径20mくらいで周囲は崖に囲まれており、手漕ぎの小舟を下の磯に着岸させたら、上まで梯子で上がらなくちゃならない、ってなトンでもない島である。まぁ、岩礁に毛の生えたようなモンですな。
 島の上は松がチョロチョロ生えており、それを切り拓いて小屋を建て、磯の小魚や貝を漁り、小さな畑を拵えるとかなんとかそんな内容だったと思う。いわば、上に書いたDASH島のミニ版みたいなカンジだな。
 英虞湾は複雑に入り組んだリアス式海岸の奥深くにあって波はとても静かだし、陸に戻れば意外に交通の便は良いし、まぁナカナカの選択のような気がする。

 そうそう、子供の頃と言えば、驚くような島絡みの事件(?)が立て続けに起きた。横井庄一さんがグアム島から、小野田寛郎さんがルバング島から戦後数十年の時を隔てて帰還したのである。万博よりは後だった気がするんで昭和47〜8年のことではなかったか。横井さんについては「帰還」っちゅうよりは何だか「原人の捕獲」っちゅうような雰囲気だったけど、小野田さんは流石陸軍中野学校出身だけあってか、敬礼の姿もビシッと決まっており、とても毅然とした雰囲気で密林から出て来たことを強く覚えている。
 ガキだったおれもグアム島がハワイと並ぶ大観光地の島であることは知ってたし、ルバング島が首都から大して離れてないってことをニュースで知って、そんなトコで残留日本兵が何年も生き延びることが出来たというのはとてもスゴいことに思えると同時にある種の憧れを抱いたのだった。エキゾチカ・・・・・・平たく言うと南洋趣味っちゅうやっちゃね。

 これらの事件のもう少し前あたりだとまだ戦前の「少年倶楽部」とかのノリが残ってたのか、離島を舞台にしたような漫画やアニメ等がまだまだ沢山あった。有名なトコではまずはやはり人形劇の傑作・「ひょっこりひょうたん島」だろう。あの登場人物全員、実は全員最初の火山噴火で死んでしまってる、な〜んて実はとても暗いバックボーンを持ってるのは随分後年に至って知ったのだが・・・・・・。
 子供心にもこりゃちょと失敗ちゃうかと思った「怪獣王子」なんかも離島が舞台だった記憶がある。時期はどっちが先か忘れたけど「マグマ大使」も火山島から飛び出してたっけかな?「ガッボッテンッ♪ガボッテン♪ガボッテン♪」ってラテン丸出しのテーマソングが印象的だった「冒険ガボテン島」は実写ではなくアニメだったと思うが、これまた離島が舞台。
 「社会から隔絶された絶海の孤島」は随分手垢まみれでお手軽な舞台と化しつつも、戦前から戦後の相当の長きに亘って命脈を保ったことになる。今、その延長線にあるのがおそらくDASH島であり、「よゐこ」の「獲ったどぉ〜っ!」だったりするのかも知れない。 
 一方、肝心の子供向け漫画とかの世界では、離島は最早エキゾチカではなく密室性や閉鎖性のお膳立てのためだけに使われてる感もあってちょっと寂しい。

 ともあれ虚弱で家で本読んだりTV観てることが多かったおれは、間違いなくこれらの作品を通じて「離島=厳しいけど自由なパラダイス」みたいな観念を植え付けられたと思う。

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 このところ集中的に似たようなテーマで書き連ねてるんで、まぁもぉある程度オチも見えてしまってるよね!?

 ・・・・・・いや、どっか手頃な無人島はないかなぁ〜?なんて思ってたのだ。タンジュンやなぁ〜!(笑)。予算はまぁ何となくそこそこの新車1台程度の300〜500万くらいで、上に挙げたみたいなちょっとした小屋と小さな畑が作れる程度のはないかな?・・・・・・と。場所はそれこそ英虞湾とか瀬戸内海とか、内海で比較的波が穏やかで都市部からそれほど離れてないトコが望ましい。あまり陸から離れた沖合も海が荒れたりした時に移動手段に困るだろうから、浜からそれほど遠くないのが望ましい。何なら、ワイヤー張り渡して、十津川の野猿みたいなんで行き来できるくらい近くったって良い。

 ところがこれが見事なまでにないのである。既に無人島売買は立派な不動産ビジネスとして成立しちゃってるみたいで、素人が手を出せるような価格帯の物件はとっくの昔に払底してるのか、いくら探してもちっとも出て来ない。あるのは1億とか2億とかで如何にも「リゾート開発して下さい」ってな大型物件ばっかしだ。こりゃもう知り合いとかから手繰ってって紹介者を探して個人売買で探した方が良いのではないかと思うくらいに、ない。同じようなバカなことを夢見る人が多いんだろう。

 イヤっちゅうほど現実を思い知らされると同時に、自分の見立ての甘さにもだんだん気付いて来た。行き来しようとするなら泳いでとはいかんだろうから当然ながら船が要る。いや、この場合「舟」と言った方が正解だろう。今の時代、船外機も付いてた方が良い。しかしおれは小型船舶免許も持ってないから、船の購入と同時に免許も取らなくちゃなんない。
 小さな小屋と畑なんて書いたが、吹き寄せる潮風に耐える作物なんてそう簡単に育つんだろうか?双葉が出たくらいでみんな枯れるかも知れない。思えば、瀬戸内海に点在する小島だって上に生えてるのは塩分にも強い松ばっかしではないか。
 小さな島だと台風が来れば、島全体が波をかぶることだってあるかも知れない。そんな状況で小舟が流されないようにするにはそれなりにシッカリした繋留の設備だって必要だろう。あ!水の確保はどうするんだ?天水桶を置くのか?井戸を掘るったって下が岩盤ではどうにもならんわな。かといって担いで持ち上げてなんてやっとれんだろう。漁なうったって、おれは釣り針に糸を結び付けることさえできないではないか。それに・・・・・・

 ・・・・・・そうだったそうだった。おらぁ泳ぎが苦手なだけでなく、自分の下が底知れず深いっちゅう海そのものが怖いんだった(笑)。

2016.03.05

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