「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
汝等、ナチスの末裔よ


噂のゴルフ

http://www.caricos.com/より

 フォルクスワーゲン(VW)がディーゼル排ガス偽装プログラム問題で揺れている。おらぁポルシェはいいなぁ〜、いつかは1台欲しいなぁ〜、って常々思ってんだけど、同じ始祖(F・ポルシェ博士)のVWのクルマについてはどぉにも押し付けがましくもあざとい合理精神がクドクドしくって元々好きでないもんだから、ぶっちゃけあの会社がどうなろうと知ったこっちゃない。クルマ選びについても、VWは選択の俎上にハナッから乗ったことが無い。ちなみにアウディもあまり好きではない。あんなんにバカ高い値段出す人の気が知れない。ベンツ、BMWにはゲレンデヴァーゲンとか335iとかけっこう欲しいのがある。

 しかし、好きな人は好きだよね!?VW。ゴルフを何台も乗り継いでることを妙に誇らしく語る人におれはこれまで何人か出会ってるんだが、おれからしてみりゃそもそもそんなにゴルフが良いとは思ってないもんだから、ライカオヤヂとちっとも変らん本人の俗物性が鼻に衝くばかりで少しも感心しない。ワゴンRにでも乗り継いでることを滔々と語られた方がよほどマシだろう。だって、合理的なパッケージングって突き詰めて考えると、日本の背の高い軽の方がよっぽどよく考えられてるもん・・・・・・って、おれが言ってるんなら信用ならないが、現代のスポーツカーのフォルムの元祖である、あのマルチェロ・ガンディーニがそんな理由で愛車にしてんだからそれなりに説得力あるってモンだろう。

 いささか話が逸れてしまった。ともあれVWのこの不正プログラム、コトの是非はともかく精緻さに於いては素晴らしい出来栄えである。そこまでリスク踏んでROMの書き換えに腐心するくらいなら、チャンとした浄化装置作った方がよほど早かったんぢゃないか?って思うくらいなんだけど、そうはならないのが逆説的に誇り高きゲルマン故なんだろう。何だかんだでやはり彼等はナチスと地続きなのだ(実際会社のルーツそのものがヒトラーの国民車計画によるもんだしねぇ・・・・・・)。たしかにアタマは良いのかも知れないが、プライドが高く、独善的で自制心が無く、結果的に良いコトも悪いコトもやりすぎてしまって暴走する、っちゅう点で。

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 ユダヤ人に対するナチスの蛮行は間違いなくスターリンや毛沢東、あるいはポルポト等の行った苛烈な大粛清と並んで近代の世界歴史の暗部と言えるだろうが、それについて述べるのが今回の趣旨ではない。そぉゆう身の毛もよだつとんでもないコトをやらかす一方で、その数十年の政権下では驚嘆すべきスピードで信じられないほど数多くの、そして今では一般化した仕組みが生み出されたのも事実であって、恐らくは「合理性・論理性」だけが両者をつなぐと思われるその異様なアンバランスぶりにおれは興味を惹かれるのである。

 有名なトコから挙げてみよう。まずジェット機、メッサーシュミット・Me262で早くも1941年には飛ばすのに成功してる。恐ろしいことにロケット機まで実用化しちゃってる。「コメート」こと、メッサーシュミット・Me163がそれだ。初飛行は実は1939年とジェット機よりさらに早い。これについては性能が過激すぎて、その後世界で実用化されたものはない。ロケット研究はさらに進められ、有名なV1/V2へと発展し、戦後のアポロの月旅行計画に至ってる。あ〜、ヘリコプターもそうぢゃなかったかな?
 アウトバーンはムチャクチャ有名だ。高速道路自体の嚆矢はアメリカであるが、それは名前がハイウェーってだけで高速道路とは到底呼べない貧弱な造りであった。現代において当たり前の上下線の分離、SA/PAの設置、勾配の抑制、クロソイド曲線による曲率緩和・・・・・・こんなんを世界で初めて全部やっちゃったのはアウトバーンだ。オマケに4年で4000kmも作っちゃった。そうしてインフラ作っといて走らせようとしたのがVW・ビートルだったワケであるが、実はこれについては戦後相当経つまで実現しなかったマヌケなオチが付く。
 個人的にはクソ面白くもないが、源泉徴収で給料からカッチリ税金を取り立てる仕組みにしたってナチスの発明だ。仮にも「労働者党」を名乗ってただけあって、労働者への施策はとにかく手厚く先進的だった。8時間労働であるとか、長期休暇、社会保険や財形貯蓄、男女雇用均等、若年層への労働制限なんて仕組みを作ったのもナチスである。ともあれそうした当時としては大層恵まれた環境で、ドイツ人労働者達がせっせと強制収容所建設なんかにも精出してたんだろうと思うとうすら寒い。
 変わったトコではコンサートのPAシステム、あれもナチスの発明だ。群衆に向かってヒトラーが大演説をより効果的にぶちまくるために考え出されたのである。意外なところではオリンピックの聖火リレーや、禁煙やガン撲滅のための運動なんてーのもある。どれもこれも戦後に一般化したモノばかりだ

 一方で箸にも棒にもかからぬ珍発明も数えきれないほどあった。デカ過ぎて初めから機体に皺が入ってマトモに飛ばないグライダー、陸上空母とでもいうべき通常の戦車の10倍くらいある巨大戦車、1発撃つのに何千人も必要な超巨大列車砲、もっと奇妙奇天烈なのではホントに完成したのかはムッチャクチャに怪しいが「ハウニブ」っちゅう円盤型の飛行物体・・・・・・って、コト兵器については世界各国がこれまでとんでもない珍作・怪作を生み出してんだけど、それでもナチスドイツの珍兵器のアイデアの奇抜さには際立ったものがある。

 当然ながら、全方位的にこんなことをエラいペースでやってりゃ、なるほど目の前の見せかけの状況は好転するだろう(だって例えばアウトバーンは失対事業だったのだ)が、中長期的には大きな負債を増大させることになって財源は苦しくなって行く。周辺各国への侵略は既に織り込み済みの当然の帰結ではあった。

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 さてさて、冷静になって考えるまでもなく、これらの発明はヒトラーを始めとするナチス幹部が自ら行ったワケではない。中にはシュペーアなんて建築家から党幹部に登り詰めた変わり種もいたけれど、ほぼどれもこれもいろんな学者や研究者によってなされたのである。それにナチスにしたって、民主的な選挙によって国民から選ばれたのだ。熱狂を以て。

 最近、シリア難民が地中海を渡って大量に流入している。あちこちでいろいろな衝突が起きてるのは既にみなさんニュー等でご覧になられたことだろう。難民と言えば聞こえは良いが、なるほど止むにやまれぬ事情があるとはいえ要は不法渡航者っちゃ不法渡航者だ。そしてシャレではなくドイツもコイツもドイツを目指してヨーロッパを横断中である。
 その理由はヨーロッパ諸国の中ではひじょうに景気が良いコトに加え、どんどん受け入れまっせ〜!な〜んてメルケルのオバハンが高らかに宣言しちゃったからだ。80万人もどないして受け入れんねん!?って素人でも思うよね。

 原発についても、ドイツは西側諸国の先陣切って国内の原発を停止した。国中の屋根はペンペン草やらソーラーパネルに覆われるようになった。何も知らなきゃたしかにとてもクリーンでエコな風景だ。しかしその一方で電気代が高騰し、送電量は不安定になり、あろうことかCO2の排出量が激増してることについては、一体全体どんな政治的バイアスがかかってるのか殆どマトモには報じられていない。大体、太陽電池の製作に消費される電力やCO2はその発電力からするとバカバカしいほど過大なのにねぇ。

 おれにはこれらの状況がとてもダブって見える。そしてそこにこそドイツっちゅう国、あるいはゲルマン民族の闇がある。

 自分たちは基本的に正しいっちゅう傲慢と、視野狭窄な理想主義とでも言えば良いのだろうか、「何事もそんな杓子定規に割り切れへんやんか」みたいな「中庸」とか、「まぁエエ加減この辺にしとこうか」みたいな「落し所」・・・・・・平たく言って「分別」っちゅうモンがどうにも理解できない国民性としか思えない。要はアタマいいけどとんでもなくタンジュンで野暮なのである。そしてとことん突っ走ってしまう。言うまでもなくこの辺はアメリカも同じ傾向なんだけど、ドイツの方がより強烈な気がする。

 彼らの合理精神とかいうのにしたっておれは随分マユツバではないかと思ってる。合理っちゅうくらいで理(ことわり)に合う、ってコトなんだろうけど、その理はすべてをカバーするものではないのではないし、他にもいろんな合理があるハズだ。しかし、どうにも彼らの合理には「これしかありません!これが一番なんです!」ってな主張を感じてしまう。そこに何の不安も惧れも抱いてない。実にノー天気だ。本気で「ユーバー・アーレス・ドイチェランド!」って信じてるのかも知れない。

 冒頭に書いた、VWの「押し付けがましくもあざとい合理精神」とはつまりそぉゆうことだ。ゴルフ、特に初代のパッケージが切り拓いたFF+2ボックスハッチバックの持つ明快な合理性はそらたしかに素晴らしかった。おれもそれは大いに認める。そして世界中がそう認めたからこそ、ビートル以降さしたるヒット作に恵まれず低空飛行だったVWは急速に業績を回復しえたのだろう。VW=ゴルフと言っても過言ではないほど、このクルマは会社を支える屋台骨となって行ったのも事実である。
 しかしそれだけが全てでは無かった、ってコトだ。日本的なワンボックスベースのミニバンにだって、ステーションワゴンにだって、それこそトールボーイの軽ワゴンにだってそれぞれの素晴らしい合理性は備わっている。だけど、偏狭な彼等はそのことを決して認めようとしない。もっと言えば彼等は日本車どころかアメ車も認めてないと思われる。「フォードのしょうもないボケがバカスカ拵えよってからに!」ってどっか思ってるのかも知れない(笑)。

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 まぁ、今回の件はVWだけでなくドイツにとってもそれなりに大きな痛手であることは確かだろう。だからって、それですぐに会社無くなったり、ドイツ経済が大きく傾くことはないと思う。だって半国営企業に近いお国掛かりな上に腐るほどキャッシュフローあるんだもん。

 しかし、ドイツにはナチスを生み出した素地が未だ色濃く残ってる(・・・・・・っちゅうかそぉカンタンには変わらないよね)ことを世界中に改めて知らしめた点で、中長期的にいろんな産業分野での顧客離れを呼び、経済的な体力を奪って行くことになるであろうことは想像に難くない。ドイツ車買うなら今が旬なのかも知れない。次の休みはドイツ車ディーラーに出掛けてみようかな?(笑)

2015.10.26

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