「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
Magna Graecia


観光客も激減でどぉすんだろうね?

http://historicpedia.wikia.com/より
 目下、ギリシャがユーロ圏を離脱するのかどうか?その行く末を巡って世界中が盛り上がってる。

 おれはとんと経済には疎い方なんで細かいメカニズムとかはサッパリ分からないが、今のギリシャの置かれた状況がかなりヤバいんだ、ってコトくらいは理解できる。
 要は無節操に借りまくったお金の利息が雪だるま式に膨らんで、国中のお金が払底しちゃってるのだ・・・・・・で、同じ通貨の他の国々が、「そらまぁ仲間に迎え入れた以上、体面も付き合いもあるしさ、もっと貸せっちゅうんなら貸してもいいんだけどさぁ〜、でもそんなパッパパッパ遣わんとちょっとは倹約してよぉ〜!それにもっと自分たちで働いて稼ぐコトしてよぉ〜!」っちゅうたら、「いやいやいやいや、それだけはでけまへん!うちゃぁね、元はっちゃぁ誇り高い名門の家柄なんですよ。でも金返すのはちょと待って!それともちょっと用立ててんか!」な〜んてトボけた返事なんでみんな呆れちゃってる、ってな感じだろう。

 親戚にこんな一家がおったら一族総出でフルボッコにして山に埋めるか、ニコニコしながら求める金子の5分か1割かを顔面に叩き付けて「それは手切れ金でくれてやるから、な、な、二度とうちの家の敷居を跨ぐなぁ〜っ!」とか一喝して縁切るかだと思うのだけど、国と国の関係だとムチャクチャな不義理も罷り通ってしまうのがとても不思議だ。

 ちょっとこれまでの経緯を簡単に箇条書きにしてみよう。まぁ、何千年も前の歴史をさかのぼっても詮無いので、70年代くらいからにしてみる。

 1974年 軍事独裁政権が崩壊、共和制開始。それまでギリシャは25年近く、日本に次ぐ世界第二位の経済成長率だった。
        同時にジャブジャブの公務員、恐るべきバラ撒き年金が拡大の一途を辿り始める。
 1981年 EUに参加。この時点でも経済成長率は高かったが、それを上回るインフレが国民生活を圧迫するようになる。
 2001年 欧州統一通貨・ユーロに参加。ユーロに参加するためにかなりいろいろ国としてムリしたらしい。
 2004年 アテネオリンピック開催。不手際多数で問題に。1兆円近く掛かったコストがさらに経済を圧迫。、
 2010年 国の巨額粉飾決算が明るみに。世界中で金融危機が起きる。
 2011年 欧州支援を巡り国民投票中止。財政緊縮策と引き換えの支援継続。何と若年失業率は50%!
 2015年 国民の不満を背景に急進左派連合が政権奪取。借金棒引き、緊縮政策停止を言い出して今に至る。

 今年3月末で国の借金は45兆円くらいある。日本に較べたらずいぶん可愛いんだけど、抵当もなければ現金もないから返すのは死ぬほど大変だ。
 ともあれ、僅か40年ほど、あれよあれよっちゅう間に大変な状況になっちゃった、ってワケだ。原因はいろいろ言われるが、最大の要因は、人口の1割、労働人口比だと2割5分に及ぶと言われる余りに多過ぎでマトモに働かない公務員と、バラ撒きの極致のような手厚すぎる年金制度だった、っちゅうのが大方の見方である。ちなみに怠け者で働かない国民性というのはいささか偏った見方であって、公務員はたしかにストばっか打ってロクに働かないものの、民間人は個人事業主が多い関係もあってかなりの長時間労働らしい。

 なかなか地理条件的に厳しい国であることは良く分かる。国土は狭い日本のおよそ1/3しかない上に3,000以上の島々から構成され、おまけに平地が少ないと来てる。日本では集団就職やらなんやらで実現した人口移動と集中化があんまし起きてないもんだから、色んなインフラ効率が今でもとても悪い。つまり輸送や移動にヒト・モノ・カネの労働資源を取られがちなのである。
 頼みの綱は長らく観光収入と貿易だったが、地中海は内海であるから例えば外洋に望むシンガポールのような発展は望めなかったっちゅうのもある。瀬戸内海の交易の歴史みたいなモンだ。それでも世界の金融拠点を早くからもっと誘致してたら事態はかなり異なってたに違いない。一方、観光の方は?っちゅうと、これだけは年々尻上がりに伸び続けていた。

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 おれとしてはギリシャがユーロを離脱するかとかそぉいったことは分からない。ただ、今回の騒動を見てて思ったコトだけ淡々と書いてみたい。

 まず何より、現代に於ける民主主義は畢竟、衆愚政治に過ぎないっちゅうことだ。誰の名言(・・・・・・あるいは迷言)だったか忘れたが、民主主義が成り立つには国民一人一人の高いモラルや見識が前提だという。しかし、そんなの綺麗事の理想論にすぎず、極めておめでたい絵空事であるのは言うまでもない。大衆が大衆である以上、それは本質的に暗愚で強欲で利己的な存在なのだから。
 国民投票のニュースを見てて想い出したことがある。大阪都構想の住民投票だ。おれは別に橋下徹を全面的に支持するワケではないが、大阪都構想の蹉跌と今回のギリシャの国民投票の結果はほとんど同じ構造だと思った。まぁ大阪も長く革新府政が続いたオカゲで、公務員はジャブジャブだわ、年寄りのバス代だのなんだのバラ撒きだわ・・・・・・で、倒産寸前の財政状況に追い込まれている。彼はその負の連鎖を断ち切ろう、って主張しただけである。でもそれには住民の痛みを伴う。放って置けばもっとエラいことになるけど、住民たちはその選択をしなかった。これを衆愚と言わずして何と言おう?
 ちなみに橋下時代にざらにそれが悪化したとか言ってバッシングする向きもあるが、それはいささかお門違いだろう。様々の削減策が否決されまくる中で過去債務がどんどん膨らんでただけである。
 大体、ここまで公務員が増えたのも、年金がバカみたいな水準になったのも衆愚の結果だった。選挙の度に、国民の歓心を買おうと阿って近視眼的な政策を打ち出し続けた挙句がこのザマだ。

 また、民主主義はその末期に、必ずファナティックで危険なリーダーを奉じるモノだってことが改めて分かる。
 大衆の熱狂的な支持によってナチス・ドイツが肥大化し、政権を握ったことを忘れてはならない。ナチ党とは「国家社会主義ドイツ労働者党」ってのが正式名称だ。第一次世界大戦の敗戦国となり、莫大な賠償金によって財政破綻に追い込まれ、天文学的なハイパーインフレが進行し、国中に失業者が溢れ、怨嗟と不満の声が満ち満ちる中で彼等の勢力は台頭したのである。
 驚くべきことに、少なくとも「長いナイフの夜」でエルンスト・レーム一派が粛清されるまでは、ナチは銀行を中心とする資本家を本気でブッ潰そうとしていた。つまりムチャクチャにガチな急進的左翼だったのである。狡猾なヒトラーがそれではそのうち行き詰まると読んで路線変更したのに、ホモで酒乱だったとは申せ、愚直で一本気だったレームにはどうしてもそれが理解できず、流れから取り残された挙句に消されたのだ。このことはもっと知られてもいい。
 今回の一連の騒動で何をトチ狂ったか、ギリシャはまるで最近の韓国のように古いナチスドイツ時代のことを唐突に持ち出して賠償金をせしめようとしたんだけど、おれにはそんなギリシャのチブラスという首相に新たなファシズムの萌芽を感じている。
 歴史は二度繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として・・・・・・マルクスの言葉と言われるが、正にそれだ。

 さてさて、ギリシャにはもうお金が無い。ECBだっていつまでも都合のいい打ち出の小槌ではいられない・・・・・・っちゅうか、実はギリシャに経済的にユーロに参加する資格がそもそも無かったことはおそらく他のヨーロッパ諸国も、そしてギリシャ自身も良く分かってたんだと思う。ヨーロッパ諸国はヨーロッパ資本主義とキリスト教世界の、ロシアやイスラームに対する防波堤としてのギリシャの価値に御布施を積んでたのだろう。しかし、いささか高く付き過ぎた。ギリシャは自分たちの価値にタカを括りすぎていたのである。
 ・・・・・・で、これからどうなるんだろう?多重債務に陥ったヤツにマトモなトコがお金を貸してくれなくなると、闇金が恵比寿顔の揉み手で現れるって、世の中相場は決まってる。
 ヨーロッパへの覇権拡大の足掛かりが死ぬほど欲しい中国なんて、下心丸出しで早速名乗りを上げて来た。ロシアも似たような策動を始めるだろう。やってることはホント闇金と変わらない。

 ・・・・・・で、お金の無いギリシャとしてはそんなもちょっと先の話は兎も角、当座の生活費を工面しなくてはならない。既に港湾等の国の施設なんかが売りに出されてるとも聞く。もちろん買い叩くのは中国あたりだろう。そのうち数々の古代遺跡も売りに出されかねない。あるいはさすがに完全に売り飛ばしては元も子もないからネーミングライツなんかのセコい方法に訴えるかもしれない。「上海汽車パルテノン神殿」やら「聯想集団アクロポリス」とかさ(笑)・・・・・・ワケ分からんな。

 結局、何だかんだでギリシャはトコトン痛い目に遭わされるものの、首の皮一枚でユーロに残されるんぢゃなかろうか。いやもう、不承不承、強硬なドイツだって残留を認めざるを得ないのではなかろうか。「クソッ!足許見やがって!」と舌打ちするのはおそらくメルケルのオバハンの方だろうとおれは思ってる。地理的には厳しいけど、地政学的にギリシャの価値は箆棒に高いのだ・・・・・・あ!分からないなんて言っときながら予想しちゃったよ(笑)。

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 マグナ・グレキア、あるいはマグナ・グラエキア・・・・・・直訳すると大ギリシャとは紀元前から中世前くらいまで、実に1500年くらいの間に及んだ今の南フランスや黒海沿岸辺りまでを含む植民都市郡の総称である。今は領土的にも経済的にも文化的にも見る影無くなってしまったけど、かつてギリシャは世界に冠たる存在だった。

 ギリシャはそんな過去の栄華に未だにすがり、そこに多大な郷愁と幻想を抱いてるようにおれには見える。もちろん、元祖民主主義としてのプライドも強かろう。そんな萎びたナショナリズムを断ち切らない限り、再び浮上することは到底ムリだろう。ま、死に体の状態から復活した例はいくつもある。今はギリシャを叩く側になってるものの、二度の敗戦から立ち直ったドイツなんてなんて最たるものだ。日本だってそうだ。ま、いつまでも金策にばかり奔走するだけぢゃなく、性根を据えて国民が本気出すように頑張ってくださいね、としか言いようがない。 

2015.07.11

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