「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
A Great Destruction Is Coming


日本の活火山分布。ものすごい数です。

https://gbank.gsj.jp/より

 ベタな喩え話から始めてみることにする。

 ここにビンゴの台紙があるとする・・・・・・といっても通常の5マス×5マスで合計25個の穴が空けられたものではなく、その10倍以上の54マス×54マスの巨大なモノだ。ビンゴはタテヨコに加え、斜めでもOKだからこれで2916個の穴と110通りのビンゴの組み合わせが出来るはずである。ちなみにガラガラと回る籠から転がり出る球に記された数字は1から10000までとなっている。だから回すのはかなり重い。
 このビンゴはかなり辛気臭く、1年の間に転がり出る球は1個だけだ。そして上手く行けば毎年1マスづつ穴が空いて行く。もちろん、ビンゴであるからして何年も何年もスカが続くこともある。ただそれではあまりにも悠長で間が持たないのでいくつかの特殊ルールが設けられている。
 まず、110通りの組み合わせのうち、1つの列だけは太い赤枠で囲まれており、ここがビンゴになると超大当たりである。また、各列には小当たりも設定されている。列によってけっこうこれには差があって、とにかく1個出ただけでOKの列もあれば、7つくらい並ばないとダメな列もあったりする。これはナカナカ盛り上がるだろう。小当たりはまぁ「うまい棒」1本くらいからちょっと気の利いた中元や御歳暮のギフトといったトコだろうか。ただ、待って待って7つ空いたのにうまい棒1本のこともあれば、1個空いただけで望外のギフトセット、なんてこともある。
 大当たりはベンツやBMWの大型高級車1台くらい。超大当たりになると、なんと豪華客船による世界一周旅行3年間と破格の内容だ。そしてそれより何より、このビンゴの最大の特徴は、全ての穴が空くまで延々と続く、ってコトだろう。

 いずれにせよ1万年、これをシンネリと続ければ超大当たりも必ず出る。

 日本には活火山が110個ある、と言われる。上に挙げた喩えはその噴火の起こる確率を分かりやすくビンゴに置き換えてみたのである。ただ、気象庁指定の110はちょっと大袈裟な気もしてる。最初はたしか70いくつだったから、大盤振る舞いで増やしまくったのだ。例えば広島の三瓶山なんてホンマにこの先噴火するかはかなり疑わしいんぢゃないかと思ってるんで、あくまで模式図的な説明ではあることをお断りしておく。

 赤枠で囲まれたビンゴの超大当たりとは、言うまでもなく日本列島で大体1万年に1度くらいの頻度で起きると言われる破局噴火のことである。最近では7500年前に鹿児島の沖合の鬼界カルデラで起こり、西日本の縄文文化に壊滅的なダメージを与えた。
 こう書くと何かもうそれだけでドキドキしてしまうんだけど、地殻変動が大きい日本では実はそこまで巨大な、100万年に1度クラスの噴出量が実に1000㎦に及ぶような破局噴火は起きえないなんて説もある。どんな火山であれ1年間に地下から供給されるマグマの量はおよそ0.15㎦で、それが破局噴火に必要な量にまで蓄積されるにはなるだけ動きの無い場所でないとムリなんだ、ってな内容だった。なるほど日本列島最大の噴火はたしかASO-Ⅳと呼ばれる9万年前に起きたものだが、600㎦くらいの規模だったからちょっと小粒ではある。とは申せ、何が本当なのかは良く分からない。
 小当たりはある程度のサイクルで起きる小~中噴火を指す。1個で小当たりなのはさしづめ桜島や諏訪之瀬島みたいなしょっちゅう噴火してる火山であり、ある程度数が揃わねばならないのはもう少しサイクルの長い山だろう。

 しかし、くどいようだが1万年くらいのスパンで考えると結局全部目は揃い、ビンゴになってくのである。これはひじょうに怖い事実である。

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 東日本大震災以降、東北の火山を中心に全国的に火山活動が活発化している。最近では箱根山で微小地震が相次ぎ、大涌谷の噴気も激しくなって、御嶽山で沢山の人が亡くなった責任を問われたのに懲りた気象庁は早々に立ち入り規制を掛けてしまった。昭和28年の早雲地獄の火山性の地滑りなんかと比べて正直そこまで大騒ぎするレベルではないと思うんだけど、それでもとにかくレベル2らしい。

 たしかに震災以前と以降を比べると、件の気象庁の警報発令中の火山の数は激増した。以前の常連は桜島、諏訪之瀬島に硫黄島や福徳岡ノ場くらいだったのが、今は何と14の火山で発令されている。警報は発令はされてないものの、微小地震が増えたりして活動が活発になったと思われる火山は他にも沢山ある。西之島新島だって今も少しづつ成長を続け、東京ドームの50倍とか60倍とか、随分立派な大きさになった。どうせまた並みに洗われて削れるんだろうけど。
 そんなんで、いつも鵜の目鷹の目でネタ探しに奔走してるマスコミなんて、もぉ明日にでも大噴火が起きるような勢いであることないこと並べまくってる。実に見苦しくも浅ましい。

 断言しても良い。明日にも突然は急にいきなりだしぬけにドカーンて来ることなんて絶対に、ない。ナカナカ予測が難しく、不可能でないかとまで言われる地震とは異なり、火山の噴火はその規模が大きければ大きいほど、明瞭な前兆現象を伴うものなのだ。何だかんだで日本の火山は世界の観測レベルからすれば随分シッカリ見られてる方である。噴火騒ぎの度に機器類の不備や貧弱さが取り沙汰されてしまうのは何だか気の毒になってしまう。

 しかし、火山はウソをつく。来るぞ来るぞ~!と見せかけておいてそのまま終息してしまうことが大半だ。この判定がひじょうにむつかしい。フツーの25マスのビンゴでだってあるっしょ?よっしゃぁ~っ!リーチだぁ~っ!って思ってたらアレレ!?その後まったくカスりもしなくなってトホホホな~んてね。あんな風に来るぞと見せかけといて、鳴りを潜めてしまうのはフツーにあることなのだ。

 今の日本の状態は決してリーチが並んでるようなクリティカルな状態ではない。さっきの特殊ビンゴで言うと、小当たりのリャンシャンテンがいくつか台紙上に出来上がってる程度な状況だろう。まぁ、口永良部島は小当たりでもかなり上のクラスで、かつイーシャンテンくらいかな?って気もするが・・・・・・。

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 ぢゃぁヤバくはないのか?っちゅうとそうでもないのがこのビンゴの鬱陶しいトコで、やはり空いた部分が増えてくれば確率論的には危ないのである。今は千年ぶりくらいの活動期に入ってるなんて言われてるが、言うなればしばらくは永いこと何年もスカ続きだったのが、この何年かはとにかく読み上げられた数字で台紙に穴がプチプチと確実に空いてってるような状況なんだろうと思う。

 これではタイトル通りにならないんで、後はヤマ勘も含めたおれの思うところをツラツラと書き連ねることにしよう。

 まず、それなりの規模の噴火------噴火規模を表すVEI指数で言えば4~5程度の噴火------はやはり近付いてると言わざるを得ない。80年代初頭に提唱されて広まったVEI指数は段階が0から8まであって、数字が一つ上がるごとに10倍になって行く対数指数となっており、大雑把だけどワリと良く大きさを表現できるってことで、今ではかなり一般化したものだ。
 具体的にVEIで4から5とはどれくらいなのか?っちゅうと、山体崩壊で有名な1980年のセントヘレンズ山の噴火、あれが「5」である。何年か前の欧州便の飛行機が難渋したアイスランドのエイヤフィヤトラヨークトルの噴火が「4」・・・・・・つまりそれなりに巨大ってコトだ。「8」なんてなるともぉこの世の終わりみたいな超巨大噴火で、何十億年に及ぶ地球の歴史の中でも50回くらいしか起きてないらしい。
 なぜ近付いてると断言するのかといえば、単純に発生頻度である。この100年くらい日本列島では静穏期間が続き過ぎてるのだ。もう少しデカいのがあってもおかしくないくらいに時間は経過してるのに、これまで動きが少なかった。そしてそれはそれだけ地下にマグマが蓄積されたことを意味している。そこに千年に一度の大震災だ。いきなりワッサワッサ揺すられまくったのだから、刺激されないワケがないではないか。

 ではそれが具体的にいつ頃になるのか?は何とも分からない。M9クラスの地震後の数年内には巨大噴火が起きると言われてるのは、この100年で見れば統計的にはある程度有意で間違いなかろうが、過去何千年何万年のスパンで漏れなくそうだったかは何一つ立証されていないのである。
 大体、億年単位の地球時間の中では5年10年なんてもぉ誤差にも入らないくらいの僅かなズレに過ぎない。1000km離れた場所に行くのにナビをセットしたら到着地点が1ミリずれましたぁ~!ってなくらいの話なのだ。ましてや4つのプレートが複雑に重なり合って、その動きも未だ解明されていない日本列島と、単純に2枚のプレートがぶつかり合うだけの他の地域を較べることはむしろナンセンスではないかとさえ思ってしまう。
 もちろん、もう少しミクロな動きでの周期性は存在してるので、何でもかんでも億年持ち出して煙に巻く気はないとは申せ、5年以内に確実、なんていくらなんでもちょっと暴論のように思う。

 最後にどこの火山か?ってコトになる。あくまでおれの推す順序で行こう。

 1位はなんたって定番中の定番、桜島だろう。大正噴火からの経過年数、噴煙高度3000m級の爆発の常態化、山体膨張と全ての指標が着々と大噴火に向けた動きを示しているようにおれには見える。これで錦江湾中央部の若尊あたりに動きが出て来るとかなりリーチぢゃないかと睨んでる。
 2位は口永良部島だ。桜島の南方、屋久島の真西にあるこの小さな島は今かなり切迫した危険な状態にあると思う。どうやら阿蘇を北端として南に延びるラインの地下深くには「プレートの裂け目」みたいなものがあるんぢゃなかろうか?
 3位は現在のところ誰もノーマークの北海道は苫小牧の樽前山に一票。静穏期間が長くなってるんで、北海道沖でプレート型地震が今後発生すれば、かなりマズいのではなかろうか?
 4位は富士山。噴火すれば話題性では一番だろう。おれだってちょっと見てみたい気がする。ここももっと頻繁に噴火しておかしくないハズなのに静穏期間が延びすぎてるのがおれの根拠だ。水が噴き出した、河口湖が水位低下を起こした、林道が崩れた、氷穴が溶けた等々いろいろメディアはかますびしいが、おれ的にはどぉでも良いコトのように思える。直下の低周波地震と傾斜の変化を注意深く観察することがすべてではないかと思う。
 5位はむつかしい。それなりに若年期から壮年期の火山でヤバそうなトコはいくらでもあるし、どうにも絞り切れない。

 逆に来たって大したことなさそうなのは、冒頭にも言った箱根山、また急に火山性微動の増えた浅間山もいろいろ心配されてるが、この1万年くらいは明確に7~800年周期での大爆発の傾向を示してるんで、あと数百年は大丈夫だろう。蔵王や吾妻にしたって起きたとしてもそんな大噴火にはならないのではなかろうか。むしろおれ的には今は東北では岩手山や岩木山の方が危ない気がしてる。草津白根もあったって大したことなかろう。

 ・・・・・・なぁ~んて鹿爪らしく書いてみたものの、要はビンゴ。来そうで来ないのがビンゴ、来なさそうで一気に来るのもビンゴ、神様が胴元のこの厄介なビンゴの台紙には穴が空き続けている。ああそうだ!言い忘れてた。実はビンゴはとっくの昔に始まっており、実は籠の中のボールの数はあと残り1/4くらいになってるんだった・・・・・・。 

2015.05.28

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