「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
STAP騒動記、あるいは愚者の黄金


「愚者の黄金」と呼ばれるパイライト。

〽草津よいとこ 一度はおいで
〽ア ドッコイショ
〽お湯の中にも コーリャ 花が咲くヨ
〽チョイナ チョイナ

〽忘れしゃんすな 草津の道を
〽ア ドッコイショ
〽南浅間に コーリャ 西白根ヨ
〽チョイナ チョイナ

〽朝の湯けむり 夕べの湯もや
〽ア ドッコイショ
〽草津は湯の町 コーリャ 夢の町ヨ
〽チョイナ チョイナ

〽お医者様でも 草津の湯でも
〽ア ドッコイショ
〽惚れた病は コーリャ 治りゃせぬヨ
〽チョイナ チョイナ

〽草津よいとこ 里への土産
〽ア ドッコイショ
〽袖に湯花の コーリャ 香が残るヨ
〽チョイナ チョイナ

〽積もる思いと 草津の雪は
〽ア ドッコイショ
〽解けるあとから コーリャ 花が咲くヨ
〽チョイナ チョイナ

 一体全体何なんだ!?この幼稚さと醜さは!?科学技術の最先端のハズなのに、当事者だけでなくメディアや評論家まで含めて登場人物があまりにガキばっかな感じだ。

 世間を大いに騒がすSTAP論文捏造問題だが、あちこちのニュースからコトの次第を整理するとおおむね次のようになるらしい。

 ・・・・・・小保方晴子なる若手の女性研究者が論文を発表した。細胞に外部から刺激を与えるだけで、未分化で多能性を有するSTAP細胞に変化するという画期的な内容で、従来のESやらiPSより作成法が劇的に容易であり、再生医療に大いに役立つノーベル賞間違いなしの発見である。オマケに見た目が従来の所謂「女性研究者」のイメージからすれば、随分可愛らしい童顔だったこともあって、メディアは湧き立った。
 ところが発表直後から、論文の画像が別の関係ない論文からの使い回しだったり、データに改竄があることが次々と判明して、結局、論文は撤回される運びとなった。つまり、事実上捏造であることがほぼほぼ確定してしまった・・・・・・。

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 ぶっちゃけおれは理科にとんと疎いので理屈は良く分からないが、初めから何となく違和感があった。ちょっと前に三行ブログにも書いた通りで、根拠もヘチマもなくただもう単純に、そんなすごい神の御業のような細胞の変化が温い酸の湯に漬けるだけで起こるんだろうか?っちゅう疑問があったのだ。それなら草津や玉川等の強烈な酸性泉に浸かってれば人間はたちまち変身できるやんけ!みたいな。なるほど、恋の病以外は何でも効くとまで称された湯なんだから、何か起こるのかも知れないが・・・・・・(笑)。

 それでもまぁ起きた、っちゅうんだから起きたんかなぁ~、スゴいなぁ~、くらいに思ってたら、根拠となる実験結果やら何やら、明らかにもう捏造の誹りを受けても仕方のないような事実がボロボロ出て来たのである。どだい、日々の研究ノートがロクに取られてないっちゅうではないか。飽きっぽいガキの落書き帳ぢゃあるまいし、半年で数ページってアータ、おれみたいにいい加減なサラリーマンでも日々の忘備録は半年で大学ノート数冊になるんでっせ。どぉ考えてもこりゃヘンだ。

 今のところ、再現実験は世界中の誰も成功していない。小保方自身も精神状態がどうのこうのとゴタク並べて逃げ回って、自ら自説の正しさを証明する再現実験にはいっかな取り組んでないようである。まぁ、未来永劫彼女は再現実験のメンバーに加わることはないだろう。そしてそのまま、「ホントに出来たんです」とか「一生懸命研究に取り組んでたんです」な~んて、ガキの言い訳みたいな笑うに足りる戯れ事をこれからもクドクドと繰り返して行くに違いない。

 しかしそれはまぁ、ああいった結果の約束されないその割に期待される仕事をしてれば往々にしてあることなのである。気持ちは何となく分かる。それは言われたことだけ疑うことなく忠実にやってる人には決して分からない精神状態だろう。

   ●結果を求められる重責と焦り。
   ●いい子・デキる子で育ってきた故の選良意識。
   ●強烈な自己愛・自己憐憫・自己暗示。
   ●自負っちゅう名の鼻持ちならない矜持と高慢。
   ●傾注した努力となかなか出ない結果とのジレンマ。
   ●専門バカとしての非常識と無知。
   ●虚栄心と紙一重の野心や功名心

 ・・・・・・だから許してやろうよ、ってワケではない。そんな気持ちは毛頭ない。どれだけ弁明したって、彼女の行ったことは科学の皮を被った単なる詐欺行為である。やはり、いい歳ブッこいた社会人としてはそれなりに厳しく断罪されなくてはならないんだと思う。ただ個人的には指弾するつもりはない、ってコトをお断り申し上げておく。それだけでなく、少し気の毒だな、とも思う。

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 でもこのテの研究って畢竟、山師と本質的に何ら変わらないのである。鉱脈を見付けるか見付けないか?見付けた鉱脈の品位がマトモかどうか?それだけだ。一か八かの勝負、丁半博奕もいい所なのである。
 しかし、山師って言葉ががいかがわしい者の代名詞として使われるくらいに蔑まれた、社会的身分の低い存在であるのに対し、こぉいった研究者は何だか知らんが結果の出ないうちからそれなりに社会的身分も高く羨望の眼差しで見られることが多い・・・・・・まぁ、変人に見られることもそれなりに多いだろうが(笑)。ともあれそこに、このデキの悪いスラップスティックコメディーのような騒動の一番の根がある。

 研究者なんて所詮山師なんだ、白衣着た(彼女は割烹着だったけど、笑)博徒なんだ、って醒めていささか自虐的な視線がおれたちにもメディアにも、そして小保方自身にもあれば、こんなバカげた騒ぎは起きてなかった。

 そうそう、山師といえば鉱物がらみで「愚者の黄金(Fool’s Gold)」っちゅうのがある。パイライト(黄鉄鉱)のことである。これはこれでたいへん綺麗な結晶で、川底なんかを目を凝らして見るとけっこう見つかることが多い。もちろん金なんかちょっとも含まれておらず、硫黄と鉄が半々くらいに混じっただけのものだ。
 もちろん過去には、性質の悪い山師にこれを「黄金です」と騙された人も多かったろう。しかし一方で、必死で金鉱を探して山の中を駆けずり回っても見付からず、疲労と憔悴と貧窮に追い込まれた中でいささか精神的平衡を欠いて、これを金と信じ込んでしまった山師も沢山いたに違いない・・・・・・おれの言いたいコトはもうお分かりだろう。

 どれだけ時代が進み文明が発展しようとも、愚者の黄金は形を変えて、絶えず我々の前に立ち現れるのである。

 ・・・・・・ん!?オチがないって!?

 いやいや、草津周辺にはかつて露天掘りの鉄鉱山があったのだ・・・・・・で、それが黄鉄鉱なら綺麗かつ無意味に話がまとまったんだけどね~。しかし、調べてみると残念なことにどこも産出するのはみんな黄鉄鉱が酸化変性した褐鉄鉱ばかりだったようである。褐鉄鉱っちゅうと何かって思うが、要は赤錆のことである。ちなみに社会問題にもなっている八ツ場ダムが建設予定の吾妻川もこのため何となく赤いのである。

 どうやら酸で細胞はあまり変化しないようだけど、愚者の黄金をただの赤錆に変えるくらいの力はあるみたいだ・・・・・・と、牽強付会にオチに持ってって今回はお仕舞い。

2014.06.17

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