「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
金も掛からにゃ手間も要らぬ


これが幻のフォアグラ弁当だ!(笑)

 おれ自身はTVをあまり観ない。まぁ、朝の出勤前は時計代わりに朝のワイドショーみたいなんを点けっ放しにしてるけれど、夜はほとんどTVに背を向けてる状態だ。一方、ヨメはけっこうTVが好きでドラマを中心に良く観てるモンだから、音声だけは耳に入って来る。つまり、おれはTVを「聴いてる」のである。たまに振り返るともちろん画面も目に入る。
 ・・・・・・これは以前も書いた通りで、個人的には情報メディアが多様化した現代においてTVなんて最早「愚者の箱」に過ぎず、消えてなくなったっていいんぢゃないかってくらいに思ってんだけど、未だにイチイチその内容に目くじら立てて、良識がどぉこぉと文句垂れるヒマな御仁が呆れるほど多いみたいである。

 近頃は日テレの「芦田、愛菜がいない」もとい「明日、ママがいない」ってドラマが孤児院や養護施設のイメージを歪めてる、なーんてケチ付けられて、その反響にビビったヘタレなCMのスポンサーが全部降りてしまい、あろうことかストーリーの変更まで余儀なくされた、なんてことが報じられていた。自主規制もここに極まれりだな。何でも売名大好きな高須クリニックが単独スポンサーを申し出たものの、これは断られたとかなんとか尾ひれはひれが付いて、もぉアホそのものなメディアの世界がブザマに右往左往する様子はよほどドラマより面白い(笑)。

 どうやら孤児院の悲惨さをことさらに強調してる、今風に言うならいささか露悪的に「盛り」過ぎたのが気に食わないと難癖付ける人が多かったようだ・・・・・・ふ〜ん、あれだけ自称「伊達直人」の美談はニュースになったのにねぇ、みんないい気なモンだ、とおれはひとりごちる。
 「タイガーマスク」にしたって「あしたのジョー」にしたってアータ、みなしごの暗ーい翳を引きずった主人公だからこそ、そのサクセスストーリーには深みがあったって思わんですか?それにそもそも「継子いじめ譚」なんかも一緒だと思うのだが、「ガキが泥沼みたいに悲惨な世界からド根性で這い上がって」っちゅうのは、世界中に共通する物語の原初の形ではないか?貴種流離譚だってそうぢゃんかよ。それともそのうちあれか!?里親からのクレームで「シンデレラ」は出版禁止か?(笑)。ええかげんにせぇよ。

 プロ芸ぢゃあるまいし、ドラマがリアリズムでなくちゃならん理由なんてどこにもない。たとえ実録を謳ってたとしても所詮ドラマはドラマである以上、どこまで行ったってフィクションである。それに過剰演出で大袈裟に盛ったドラマをそのまま鵜呑みにして悪い固定観念を抱くほど人はバカぢゃないとおれは思うぞ。

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 ファミマが発売を予定してたフォアグラ弁当っちゅうのを発売中止にしたらしい。これまた発端はTVなんだけど、番組でフォアグラを育てる様子が放送されて、それがが残酷だとかゆうクレーム電話が22件入ったんだそうな。たった22件。ちなみにフォアグラの作り方は中国人の次くらいに食べることに呵責のないフランス人の奇習として昔からつとに有名だ。無理やりガチョウの口から餌を押し込んで、肝臓肥大の状態にするのである。

 しかしフォアグラの育て方が残酷だ、っちゅうてケチ付ける人はもぉ断食でもして死ねば良い。それがイヤなら魚釣って野草でも摘んでろ。

 今の時代、およそあらゆる売られてる食材は「肥育」といって、食物として最大限効率的になるよう育てられ、出来るのだ。例えば乳牛の代表種であるホルスタインは目一杯乳を出すための品種改良が進められた結果、1日でも搾乳を欠かすと乳が張って痛くて苦しくて暴れ回るし、アッちゅう間に乳腺炎になって死んでしまう存在である。
 鶏もブタも、みんなどれも似たような状況だ。来る日も来る日もロクに運動もさせず、グイグイ食いモノばっか食わして効率良く育てられるとアッと言う間に食材に加工される。鶏シメる工場なんてまさしく工場である。パキッと首落として、逆さにして血を抜いて、羽根毟ってが見事なまでのオートメーションで行われる。屠殺場だってそうだ、電気ショック当てて頸動脈切って、タッタカタッタカ作業は進んで行く。
 キャベツだって、本来はあんな見事に球にならない。タバコとキャベツは割りと近い種類らしく、あんな感じでニューッと上に伸びるのだ。それが本来の自然なキャベツの姿であって、品種改良を重ねて凄い密度で結球するように人間が創り上げたのである。しかしその結果、収穫が少し遅れると弾けて割れてしまう。当然たちまち枯れたり、腐ったりする。

 どれもこれもフォアグラ作りと変わらず残酷極まりない。それはおれも大いに認める。しかしそれは人間のどうしようもない業、ってモンだろう。その根本に思いを致すことなくフォアグラの肥育だけをことさらに残酷だとか可哀想だとか太平楽ヌかすかすだけでなく、クレームまで入れるアタマの悪さはものすごく癇に障るし、そんな意見とも呼べない「お叱りの電話」とやらを「真摯に受け止める」とかゆう流通の、そのあざといまでの消費者へのおもねりはマコトに見てて気持ち悪い。ホントは円安が進んだせいで企画段階より原価が上がり過ぎて、利益が出なさそうなので止める理由を探してたトコに、渡りに船でクレームが入ったんでホイホイ中止にしたんぢゃねぇのか?なぁ〜んて下司の勘繰りしたくなるぞ(笑)。

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 とりもなおさず、これらのクレームは実のところ「ただのテロ」である。何だかヘラヘラニヤニヤした犯人が逮捕された「黒子のバスケ」事件、あるいはつい先日のひじょうにキャラの立った風貌のオヤヂが逮捕されたアクリフーズ農薬混入事件、入試会場や運動会等で頻発する爆破予告のイタ電等々と本質的に変わるところがない。無各性の陰に隠れて恫喝したり妨害する、っちゅう点で。否、むしろお手軽で自分がテロリストであることにおめでたいほど無自覚で、さらには自らに何らリスクを伴わない分、より性質が悪い。ひじょうに貧乏臭いテロである。まだヤクザが「コラ!われぇ〜、いてまうどぉ!」とか因縁つける方が、直接顔が見える分マシかも知れない。

 そんなのに対して、あらゆる産業や機関が矜持も何もかなぐり捨ててだらしなく屈しまくってるのが今の日本のみっともない状況だ。ニートに引き籠りにメンヘラー、派遣だか契約だか知らないがそもそも漫然と生きて来ただけの甲斐性なし、ヒマを持て余す主婦、濡れ落ち葉のクセにリーマン時代の地位と横柄さが抜けない年金ジジィ・・・・・・暮らしぶりはいろいろあるんだろうが、意見どころかその存在自体さえ一銭五厘の価値もないような連中が好き放題に跳梁跋扈しているのである。

 どこの会社にもフリーダイヤルで掛かる「お客様相談室」なんてのがあって、結構な人件費を割いて日々これらの「貴重なご意見を下さる」カス共相手に誠実かつ愚直に奮闘しているらしい。お人好しも行きすぎるとグロテスクで社会にとって害悪である。いい加減そろそろ止めたらいいのだ。そしてグズグズうるさいのにはハッキリ伝えればいい。「うるせぇんだよ!アラ探し趣味でやってんぢゃねぇよクズ!オメェの意見なんてどぉでもいいし、客でもなんでもないんだよ!死んでろボケ!」ってね。

 ・・・・・・ま、おれ個人としてはTVがなくてもちょっとも不便を感じないし、フォアグラ弁当なんてな〜んかネチョネチョ脂っこそうで一向食指が動かず、クレームでどうなろうがどうでもいいコトなんだけどさ(笑)。


マラチオンな阿部利樹氏。近年マレに見るキャラの立ったお方(笑)。

2014.02.01

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