「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
ノート馬鹿


値段が恐るべきプレミアム!(笑)アピカのプレミアムCDノート。

 札幌から東京に戻るちょっと前くらいから、仕事上でのいろんなアイデアやメモ、問題・課題等は万年筆でノートに書き留めるようになった。以前はPCにペチペチとToDoリスト作ってツブし込んだりしながら仕事を進めてたのからすると恐るべき退行ぶりで、この駄文シリーズのタイトルである”Against The World”をまさに地で行くアナクロニズムな状況である。そのことについてはしばらく前に書いた通りなんだけど、そうなると会社で支給される安物のノートではどうにも都合が悪くなって来る。特に中太字なんかだとインクが紙の裏に通ってしまうのだ。これはハッキシ言って小汚く、また見辛いことこの上ない。滲みもないに越したことはない。

 おれはちゃんとしたノートの必要性を感じたのだった。

 思えばノートをバラで買うなんてことはこの40年くらい絶えてなかったように思う。昔なら3冊100円、今なら5冊で400円とかそんな安物ばっかし使ってた。それでも一応の拘りはあって、とにかく糸綴じであることと細罫(B罫っちゅうんかな?)であること、またその罫線がページの端にまでキッチリ来て、上下にメモリ代わりのドットが打たれてることだけは譲らなかった。そうでないと使いにくかったのだ。
 ホチキス綴じだと何度も消しゴムでゴシゴシやってるうちにページが外れて取れたりする。糊綴じは背の部分が崩壊してバラバラになったりする。だから糸綴じ。アバウトな性格の割に2Hの鉛筆で細かい字を書くのと、太い罫線だとアッちゅう間にノートを書き切ってしまって不経済ってコトで6mmの細罫、罫線が端に来ていないと文字が端まで来たときに気持ち悪い・・・・・・どぉでもいいようなことばっかだな、おい!(笑)。

 そうしてかなり長い間、左端から3個目の点で縦に線を引いてノートは使うようにしてた。問題番号や大きな段落はそこに書いてインデックス代わりに見やすくするのだ。このクセは大判手帳を使う今でも残ってて、左半分の1週間のページ、大きく日付と曜日の印刷された右あたりに縦の罫線がないとどうにも落ち着かず、新しい手帳を買うとそこに縦線を引いてくのが半ば儀式のような習わしになってる。
 語学系の場合はさらに右から5個目のドットあたりでにもう一本、縦線を引く。知らない単語や熟語といったものをそこに抜き出してく。だから、リングに紙片が重なった単語カードなんて拵えたことがない。あんなモン二度手間になるだけで不便なだけだし、アタマにも入らない。それより、知らない言葉なりなんなり見掛けたら、その場でチャッチャと抜書きした方がよほどスンナリ覚えてしまう。
 枚数にも拘りがあって、80枚とか100枚といった分厚いのは苦手だ。せいぜい40枚までで、どんどん使い切って行くのが良い。

 ・・・・・・ああ〜っ、またもや脱線だ。今回は万年筆買った結果、拘ったノートに移行、だったよね。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ともあれ、そんなんでもうちょっと万年筆に適したノートってないんかい?と文具店に出掛けてったのだった。万年筆と同時に買い揃えときゃ良かった。

 最近は東急ハンズやロフトといった、ちょっと凝ったステーショナリーを扱う店が増えてることと、「男の道具」なんかを中心に筆記具が盛り上がってることもあってか、驚くほど多種多様なノートがある。書き味の滑らかさだけでなく、インクが裏に染み透る「裏ヌケ」、或いは滲みを防ぐよう、若干厚手に丁寧に漉いた紙を使った拘りのノートが各種売られていて、同じようなニーズが既にけっこうあってそれなりに市場を形成してることをおれは遅まきながら知ったのだった。当然、出掛ける前にネット上でニワカ仕込の知識も詰め込んでたのは言うまでもない。「高級ノート」ってキーワードブチ込めばいくらでも見付かることも分かった。つまり指名でまとめ買いするんならネット販売でも片付いてしまう。

 外国製ではモレスキンっちゅう薬みたいな名前のん、国産では進化を忘れて頑なにやってたら逸品にいつの間にかなってた老舗のツバメノートなんちゅうのが有名なこともそのようにして知った。アピカ、ライフ、ミドリ・・・・・・言っちゃなんだがガリバーであるコクヨの蔭に隠れてたような比較的マイナーなトコがしぶとく生き残ってる。高単価だから利ザヤも稼げて零細なところにとっては分のいい商売なんだろう。

 しかしながらおらぁ高級ノート初心者なワケで、やはりここは1つ1つ手に取って良く見てみるに限る。
 モレスキンは外国製だけあってA版サイズの展開ばかりだし、とにかくページが多くて分厚い。同じような理由でミドリのMDノートも質感はいいんだけど却下。B版の資料を積極的に仕事では駆逐して、基本全てA4に移行させてる立場のくせに、プライベートな書き物はB版でないとどうも使いにくいのだ。
 ツバメは安定して人気があるのか、おれ好みの罫線のが見つからず、無地とかナナメ(!?)とかヘンテコなんばっかしが残ってる状況だった。後のメーカーは・・・・・・たって全種類知ってるワケぢゃないんで確証はないが、大体は店頭に揃ってる気がした。あれ!?昔よく使ってたのに「極東」ってあったけど見なかったな。

 とは申せ、大量に買い込んだところで使わなきゃ意味ないので、まずは手始めに持った感じの紙質が特に厚手に感じたライフの派手な表紙のものを2冊ほど買ってみた。1冊400ナンボもしやがるが、まぁ、タバコ代のことを思えば充分安かろう。それにしても何となく製本が撓ってるのは手造りゆえか、それとも品質なのか・・・・・・大したことないんちゃうか?これ(笑)。
 落書きするのも勿体ないので、使いかけのをチャンと最後まで使い終わったところで続きとして書き始めることにする。大体標準的なページ数の所謂「大学ノート」だと、日々の雑記帳としては年に5冊前後使うペースだから、そんなに時間は要しなかった。ともあれ薄黄色い紙に何だったか書き付けて、おれはちょっとした快感を味わったのだった。

 いやもぉホンマ、とにもかくにも書きやすい。当然ながら滲まず裏ヌケもしない。ちょっと紙面のアイボリーが強すぎて殆ど黄色なのは却ってあざとい感じで、書き損じをホワイト修正すると目立つのが難点だけど、それ以外は本当に書いてて気持ちが良い・・・・・・止められなくなった。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 アナクロとはいえ、何せパピルス以来何千年も続いてるだけあって、それなりに効能は多い。

 まずはワープロやPCに慣れ親しんで以来すっかり衰えていた漢字力が甦る気がする。どこでもサッと開けばすぐ書けるのもいい。ぶっちゃけPCやPDAより全然速い。コピペもカトぺもできないのは当然とはいえ、だからっていくら雑記帳とはいえ消し跡だらけだったりするのはイヤだ。なので、書くときにちったぁ落ち着いて文章を考えて書くようになる。これは簡潔で論理的な文章力を養う点では有効だろう。キーボードでペチペチは勢いでついつい要らんことを打ってしまったりするからね。
 さらには無表情に文字列が並ぶPC画面よりなぜか後からの読み返しがラク、っちゅうのも具合が良い。あ、それと忘れてた!図を描くのん!これはマウスでゴニョゴニョ図形線描するより圧倒的にラクだ。おれは元々、単純な概念図に落とし込んで描けないような仕事はダメだって思ってて、何かと言葉よりは図に置き換えたがる方なのだ。書き方練習としての字は・・・・・・これだけはどうにも美しくならないなぁ〜・・・・・・。

 一方で劣る点が多いのは言うまでもなかろう。とにかく検索性は悪い。仕方なく表題の横に参照日付を加えたりして対応してるが、かなりこれ自体が手間のかかる面倒な作業だったりする。ただ、記憶を頼りにページを繰るようになるから、ボケ防止には良いかも知れないけど(笑)。
 あと、削除は消せば良いだけだが、挿入が根本的に不可能に近い。予め余白を少し多めに持っておいて、フキダシ付けて行くくらいしかない。強調するには蛍光マーカーでアンダーラインを引けば済むが、箇条書きは最初から余程シッカリ計算してないとグジュグジュになる。ワードを始めとする各種文書ソフトはやっぱ便利だわ〜(笑)。

 だから原稿用紙何枚にもなるようなボリュームのものを手書きで書きたいなんて少しも思わない。それに手書きでないとマトモな文章が書けない、とも思わない。そんなのはくだらなくもペダンティックな精神論に過ぎない。あくまで雑記帳の範囲を万年筆とちょっと上等のノートによる手書きにした、それだけだ。いろんな手段で書き記すって行為がある中で、ちょっとだけ敢えて不便を弄ぶことにした、ってだけだ。言うまでもなく、それがフェティシズムの一形態であることも良く分かった上でのことだ。

 買い溜める気なんてなかったのに気付けば今や机の中には4冊ほど各メーカーの新品が入ってる。どれもそこそこのお値段・・・・・・どころかその中にはプレミアムCDノートっちゅう、アピカのバカ高いヤツまで入ってる。大きさ的にはいいんだけどページ数がおれ好みではない・・・・・・にもかかわらず買ってしまったのだ。まさに病膏肓で、我ながら幼稚でアホだと思うけど、それでもやはり使い始める日が楽しみだ。ただ、あまりに分厚いから半年くらい持ちそうで、ちょっと飽きてしまうかも知れない。

 何だかんだでどうせいつか使い切るモンだし、このささやかな贅沢(だって万年筆やノート類、全部併せて1万円もかかってない)は許されていい性質のものだろうと思っている。また、何となく単なる蒐集よりは無駄ではない気がしてる。

 長くなったんでそろそろ締めなくちゃなんないな。

 まぁ、興味のない人にはまったくもって面白くも可笑しくもない話題だったろうし、いかにも小金持ちのオッサンの、高踏を気取ってるワリに浅薄な趣味炸裂みたいな内容に嫌悪の情を催された方がいらっしゃるかも知れない。お断りしておくと、おれは別に読まれてる方に奨めようって気はサラサラない。自分としてはやってみたら今のところナカナカ好い感じだ、ってコトをちょっとだけネタとして語りたかった、それだけのことである・・・・・・あ〜も〜グダグダ、全然最後のオチになってへんやんか〜(笑)。


マニアックさではツバメを遥かに凌ぐG.N.ノート

2013.10.31

----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
Copyright(C) REWSPROV All Rights Reserved