「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
続・北国便り


雪山で標識さえも埋もれそう・・・・・・。

 2回目の冬が間もなく終わろうとしてる・・・・・・ハズなんだけど、外は猛烈な地吹雪だ。暴風雪とゆうヤツだ。こうなるともう外出さえもままならない。部屋でぽつねんと一人、無聊を託ちながら酒を啜り、手慰みにギターを弾いて時間を過ごすしかない。最近ラック式のスタンドに変えたので、取っ替え引っ替えがラクになった。1本1本の個性が楽しめていい。

 殺風景な部屋の中で、ギターの並んだ場所だけが何となく賑やかだ・・・・・・とはいえ殆どが白いボディなので、派手さに欠けるのだけれど(笑)。赤とか青とかいろんな色にしときゃ良かったかな?いや、昔っからサンバーストとかあまり好きぢゃないんですよ。

 ・・・・・・ああ、今日はそんな話ぢゃなかったんだっけ。

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 今年の冬は地元民も驚くひどさで、寒さそのものはそれほどでもなかった代わりに雪の量が実にハンパない。市の除雪作業は全然追いつかず、幹線道路でも道路脇の雪山の高さは2mを越え、延々と黒ずんだ雪の壁が続いている状態だ。裏道ともなるともうとても除雪の手そのものが行き届かず、クルマ1台が通るのがやっとのトコばかりである。ロードヒーティングの入った駐車場との段差は40cm近くもあり、スコップでスロープ状に均してても大雪の降った晩など油断はできない。ついこないだも駐車場に入れるところでハラがつかえて大スタックをかましてしまった。札幌市では除雪費の予算をアッと言う間に使い果たし、ここに来て25億の追加予算を計上したって先日ネットだか新聞の記事になってた。

 そんなネットだか新聞で「冬季鬱」なるものが存在することも近頃知った。正確には「季節性情動障害(SAD)」と言うらしいが、何となく分かる気がする。
 連日のように降り続く雪、雲が低く垂れ込めた陰気な空、色彩感のないモノクロームな風景、滅多に顔を出さない太陽、強烈な冷え込み、一瞬たりとも気を抜けない滑る道路、連日の雪払いや手作業での除雪、ナカナカ暖まらないクルマの車内・・・・・・旅行でたまに出掛けるのならともかく、これが来る日も来る日も続くのでウンザリする、ストレスが溜まる、気が滅入る。

 仕事を終えて部屋に戻れば、室温は僅か2℃だ。すぐにコートやスーツを脱いで部屋着に着換えるのは気鬱なだけでなく、本当に危険でさえある。ファンヒータのスイッチ入れ、炬燵を入れ、晩飯の支度がてら鍋に湯を沸かし、湯割りウィスキー作るために電気ポットにも湯を沸かす。そうして部屋の中に熱源を複数確保して人心地ついてからコート類を脱がないと、寒くてやってられない。どだいファンヒータが温風を噴き出すまでに5分くらいかかる。
 朝はまだ夜の間に暖房点けっ放しにしてるせいで、室温もそこまでひどくはないけど、それでも起きたらすぐさまフリース等を着こまないと動く気になれない。あろうことか最近階下の住民が引っ越してしまってせいで、さらに冷え込みやすくなってしまった。
 しかし、それでもこれはまだマシな方である。もっぱら独身や低所得層向けの木造や軽量鉄骨のアパートだともっと冷え込む。暖房を切ると冗談抜きで卓袱台の上の湯呑に入った飲み残しのお茶が凍るという。そんなんだから敷金や家賃は安いけど、灯油代がかかって結局何のこっちゃ分からんくらいに月々のコストは嵩んでしまうのだそうな。

 本当に厳しい期間は12月半ばから3月半ばの3ヶ月少々と分かってはいても、この状況はやはりキツい。

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 そうそう、昨年の春に腰を悪くして以来、どうも思い切りスノボで滑り倒すのも躊躇われる状況となってる。だから冬場の愉しみが一つ失せた気分なのである。

 ホント、あれは辛い体験だった。まず初め、突然ある朝布団から起き上がれなくなった。もぉ痛いのなんの!壁に手を付いて立ち上がるのに10分くらいかかるんだから堪らない。慌てて整形外科行って電気あててもらったりマッサージしてもらったりしてる内にちょっと良くなった。それから1週間ほどした頃だろうか、あれは一過性のモノだったんかって気もし始めた休日の朝、顔洗おうとしてついウッカリ前屈みになった。その時だ。
 思いっ切りギックゥ〜ッ!って来た。あまりの痛さにおれはそのまま洗面台の前にしゃがみ込んで動けなくなったのだった。とにかくもぉお笑いみたいに身動きができない。おらぁこのままここで動けず死んでしまうんぢゃねぇか!?って思うくらいの激痛をこらえながら洗面台の前の寒い所で約3時間、そのまま腰抜けっぱなし(笑)。何とか這って炬燵に入って温めてたら夕方には少し動けるようになった。

 そのまま大人しゅうしてれば良かったのだけど、翌日以降の仕事に差し障っちゃイカンと思って、死ぬ思いで腰痛ベルトを買いに行ったのが結果的にはさらに悪い方向に向かせてしまったのである。
 いやいや、その日は良かったんだ。ベルト巻いたらウソみたいに痛みが取れた。こりゃあチョーシいいや〜、って翌日もカチッとベルト締めてた。スタスタ歩ける。いやぁ歩けるってありがたいことだ!などと喜んでたら、夕方になって何となく太ももに違和感が出始めた。妙だなと感じた時には手遅れで、さらに翌日になると、痛みと痺れがごっちゃになったのが膝にまで来てマトモに歩けなくなった。腰は大分収まっては来たものの、より一層ヒドい痛みでビッコ引きまくりなのである。とにかくフツーに歩けない。このままイザリになってしまうのではないかっちゅう不安にさえ襲われた。
 再び整形外科通いが始まり、最終的に治るまでに1ヶ月半も要してしまったのだった。

 爾来、腰はどうもいつも重ダルいような感覚が残ってて、隙あらばいつでも再発して差し上げまっせ〜!とでもメッセージを発信してるようでキモチ悪い。寒いとよりヤバそうな感じがする。そんなんでどうも以前より思い切って動き回るのが怖くなったのだ。動かいないと余計悪いんだけど、動いてていきなりギックリ腰来たら目も当てられないモンな。

 さらに何たる不運か、今年は休日に吹雪くことが多い。地吹雪になるとまったく前は見えないんで、あちこちで多重衝突事故が発生する。こちらのクルマに車体後部の凹んだものがひじょうに多いのは、要は雪道でオカマ掘られる率が高いからである。冒頭にも書いた通りで、そんな日は部屋に引き籠もってるしかなくなってしまう。そんなんでせっかくの休日なのに雪降る外を眺めながら、何だかんだと部屋の片付けや買い物でお茶を濁すことが増えてしまった。貴重な休みがこれでは実に詰まらないが、腰やら命やらクルマの修理代金には代えられない。

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 仕事のグチは止そう。そりゃぁ忙しいのはイヤだし、常々遊んで暮らしたいと真剣に願ってもいるのだが、人間、先立つモノがなくっちゃお話にならない。まぁ、仕事がなくて困るよりは随分マシだろう。そんな1憶2億とか高くもないけど、300万400万とか低くもない程度の年収をおれはこれで得ており、この歳で今更他に手っ取り早く同じ収入を得る術もない以上は仕方ないのだから。それにおれ自身が何か実務や作業に追われてるワケではない。おれはあれこれ指示し、進捗を確認し、いろんなことをアサインしたりコーディネートするだけだ。

 それよりも私事で困ったことが昨年の暮れあたりから突如降りかかってきた。まだ結論も出てないし状況も整理できてないんで、生半にここで書くワケにも行かないが、遠隔地に住まうおれだけでは対応しきれず、ヨメも巻き込まれてけっこうそれぞれ東奔西走してるのだ。最近、ブログの更新さえままならなくなることが増えた原因の一つがこれである。まぁ金銭沙汰でも訴訟沙汰でもなく、ひたすらめんどくさいだけなんだけど・・・・・・。

 詰まるところ、単身赴任ゆえの悲哀や苦労を、どうしたことかここに至っていっぺんに味わされてるのである。「な〜にが札チョン族だ!?札幌の二度泣きだ!?いつの時代の話や!?」ってな気分だ。今までノホホンと暮らしてきたツケが回ってきたって見方ができるのかも知れないけれど、ノホホンと暮らすにもそれなりに努力が必要なんだけどよぉ〜!神様ホトケ様よ!アンタ等ってそんなに世知辛くも吝嗇な存在なのかよ!?と思わず悪態を吐いてしまいそうになる今日この頃なのである。

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 吹雪は収まったものの、窓の外では今なお深々と雪が降り積もっている。太郎の屋根にも次郎の屋根にも雪は降り積むのである。67年ぶりの記録更新とかいうハンパない量で。もう3月だというのに。

 この1年半ですっかりおれは酒量が増えた。髪は寒さのお蔭か意外なまでに頑張ってるけど、一方でめっきり白髪は増えた。髭までごま塩になってきて情けないことこの上ない・・・・・・ハハハ、まるでこれでは「人間失格」のラストだな。

2013.03.17

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