「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
また来るんか?


間違いなくおれたちは今、地震活動期に入った日本にいる。

 どんな低劣な魂だって時には名言を吐く。

 戦後の日本社会に咲いた最大の悪の華は何かと問うた場合、オウム真理教の引き起こした一連の陰惨な事件を挙げる人はかなり多いと思われる。あれほどの悪行を尽くしてもう17年も経つのに、未だに教祖の死刑が執行されないこの日本っちゅう国は実に惨めで滑稽だ。
 それはともかく、旧・上九一色村で繰り広げられたあの大捕り物の直前、京阪神地方は未曽有の天災に見舞われている。言うまでもなくそれは阪神大震災なのだけど、それに関して彼等は面白いことを言った。

 ----神戸で地震が起きた、つまり神の戸が開いたのです・・・・・・と。

 そこで止めときゃちったぁシブいのに、それだけで済ないのが、とてつもなく兇悪なくせにどこまで行っても間抜けで戯画的だったオウム真理教らしく、後に続けてすぐニコラ・テスラの人工地震兵器がどぉたらこぉたらとかトンデモ科学なことをいっぱい持ちだす。二流三流の知性とはしょせんこんなもん、紛うかたなき阿呆である。こんな痴れ言を真剣に信じてた信者が何千人もいたと思うと、薄ら寒くもソラ恐ろしい。
 しかしながら、その後の日本を襲った数々の大地震からあの阪神大震災を振り返ると、少なくとも出だしのセリフだけは、たとえ結果的とはいえ示唆に富んだ至言であった。

 神の戸が開いてゾロゾロ出て来たのがもちろん、荒ぶる疫神、禍ツ神の類であったことは言うまでもない。

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 もうすぐ東日本大震災からまる1年になろうとしている。戦後民主主義の果ての醜悪な小市民的エゴイズムによって、三陸沿岸部に残る膨大な瓦礫の撤去さえ遅々として進まず、政治は完全な判断停止状態に陥った感さえある。何だかヴァイマル憲法下のドイツを想起させる状況だ。橋下知事っちゅうか市長っちゅうか、快哉の拍手を以て迎えられるのが良く分かる。本来ならば古来、震災の後に訪れてしかるべき富の分配である復興景気も特に感じられず、相変わらずウダウダと何一つ決まらない閉塞的な状況ばかりが未だに続いている。本当に困ったことだ。

 しかし、地上がそんな混乱しまくったワケの分からん状況でも、大地は極めて規則正しく、確実に、そして淡々とその運動を続けている。大陸移動説、プレートテクトニクスは正しいのである。だからどしたってその内また、大きな地震はやってくる。問題はそれがいつなのか?ってコトだ。

 おれはかなりそれは近い将来に差し迫ってるのではないか?と思ってる。これで正確な場所と日時が分かれば、おれはしがないサラリーマン渡世などとっくに辞めてTVに出てるだろうけれど、まことに残念ながらそこまでは分からない。ただ、過去の歴史が東日本大震災クラスの地震がワンショットで済まないことを物語ってる。それはWikipediaで「地震の年表」っちゅうページを見れば何となく見えてくる。世界の、あるいは日本の海溝型の巨大地震の多くが、数十時間〜数年間と間隔の違いこそあれ、一連のシリーズとなって発生しているのだ。最近ではスマトラ沖大地震とその後に亀裂を伸ばすかのように発生したいくつかの地震なんかが正にそうだ。

 まぁ、学者の領分に足を踏み込む気はないし、おれはそこまでの知識も持ち合わせていないから、科学的に語ることはできないけど、とにかく何かがおかしい。
 まず近年の日本の太平洋岸各地の火山活動がおかしい。桜島の噴火・爆発回数の増加は尋常ではない。すぐ傍の霧島連山・新燃岳だって溶岩がすり鉢型の火口をムリムリ埋め尽くして、黒いプリンみたいな形になってしまった。三宅島はそれまでおよそ50年に1回くらいの規則正しい噴火パターンだったのが、それが崩れ他と思ったら3千年に一度という珍しい形式の大噴火で、火口陥没型カルデラを形成してしまった。もう少し古くまで見てみると、雲仙普賢岳や九重連山が何百年ぶり、木曽御岳山は有史以来の噴火を起こしている。
 これはかなり尋常でない状況だろうと言える。そらまぁ、明治以降だけ見ても磐梯山の山巓が吹き飛んだり、桜島が島ぢゃなくなったり、昭和新山が盛り上がったり、いろいろそれなりに大きな噴火は日本各地で起きてるのだけど、それらを考慮してもなお、ここに来てかなり各地が活性化してるような印象を受ける。

 最近では富士山ヤバくね!?ってな議論までが急速に持ち上がってる。やれ湧水が凄いだの、雪が例年になく少ないだの、ムチャクチャ眉唾だけど、激しく水蒸気らしきものが上がってただの、地下室の温度が尋常ではないだの、古井戸から温泉が湧きだしただの、熱海の源泉温度が上昇してるだの、といろんな異変がまことしやかに囁かれている。中でも信憑性として確実なのは、ひじょうに微かなものとはいえ三合目付近でこれまでなかった噴気が見られることを気象庁が認めたことだろう。ちょっと前まで富士山が「休火山」とされた理由の一つに、「地熱・噴気活動が見られない」ことががあるだけに、かなり不気味な気がする。
 確実にあの巨大な裾野の地下10〜15kmあたりには相当大きなマグマ溜りがあること、また噴火するときはマグマの粘性が低いためか、どえらいスピードで上昇してくるもんだから、前兆から噴火までがアッちゅう間だってことが、これまで富士山について科学的に判明してるんだけど、ともあれそれが最近周辺で立て続けに起きる中規模の地震でガンガンに揺すられまくってるのである。いつ何時、プロ野球優勝時の約束事であるビールかけみたく、揮発成分が発泡して溶岩がビューッと噴き出してもおかしくはない気がする。あとはどのタイミングで王冠が外れるかだろう。

 なお、あくまでヤマ勘だが、おれは東北の蔵王・栗駒・鳴子の動きに注目してる。わりと前の噴火からの間隔があいてることと、どうも過去の活動も東北海溝型巨大地震に連動して動いてるっぽい気がするからだ。競馬で言えば3点で流して買ってる感じかな?(笑)。あと、穴馬は鳥海山と岩木山あたりだろうか。

 地震の方でおれが最も気になってるのは、山梨県東部での地震が近頃とみに増加してることだ。あくまで学説の一つにすぎないんだけど、どうやら関東一帯の応力が高まってくると、地質的に弱い箱根の北方あたりからあの辺にかけてがまずボチボチと崩れ出すんだそうな。
 方向じぇんじぇん逆なトコでは、東日本以降、房総東方沖を中心にした地震も激増してる。微小地震を捉えるHi−NETっちゅうのん見ると、銚子近辺なんてもぉ真っ赤っ赤状態。いささか大袈裟の誹りは免れ得ないのを覚悟の上で言わせてもらうと、その周辺部まで含めると群発一歩手前くらいまで来ていることが分かる。理屈から行っても、太平洋プレートがあれだけ派手に動いて、ほいでもってそれと拮抗して押し合いへし合いしてるフィリピンプレートが踏みこらえて留まってるのが房総沖から小笠原諸島にかけてなんだから、一方のバランスが崩れた今、堪え切れなくなってドーン!は大いにありうるように思う。
 ちなみに、関東大震災の前震が房総東方の群発地震であったことは有名な話だ。そしてさらに余談だが、この群発が大地震の前兆か否かで、日本の地震学の嚆矢・大森房吉と弟子にして最大のライバル・今村明恒の決裂は決定的になった。あくまで保守本流で慎重な態度を崩さない大森に対して、あんさんのハッキリせんのにはもぉ付きあっとれまへんわ、って血気盛んな今村がキレたのである。結果的に大森が負けたのは歴史が証明してる通りだが、今村もかなりエイヤァではあった。
 また、まだハッキリとした大地震との法則性は立証されていないが、地磁気の異常と大地震には何らかの関係があると言われている。この点でも房総半島は実に気味の悪い状況となっており、数年前から方位磁石がまともに北を指さなくなってるポイントが幾つも存在しているんだそうな。あ〜コワ、つるかめつるかめ。

 方向逆といえば、阪神以降の大きな地震を、南西諸島や伊豆の沖合、千島等を除けて本州近辺の内陸型に絞って見てると、阪神大震災を皮切りに、東日本・西日本とかわりばんこのように大きな地震が起きているような印象を、おれは受けていた。それも東日本大震災が元で長野の栄村や富士宮、最近ではあな珍しや佐渡等、日本のあちこちが節操ないくらい揺れまくったので良く分からなくなっちゃったが、何となく西日本がちょっと一休み状態に思える。まぁ、完全なあてずっぽうだけどね。

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 さらには以前も述べたようにリュウグウノツカイやサケガシラを始めとした、見た目チョーキモい深海魚が今なお各地で上がってる。つい先日は、隠岐の海岸にキュウリエソっちゅう小型の深海魚が何十万匹も打ち上げられたんだそうな。そのちょっと前には暖かい海に住むはずのマンボウがどぉしたことか秋田の海岸に打ち上げられた記事も見た。
 また、海ではないが、琵琶湖の湖底は今や、ボコボコと湧水とガスの噴出で沸き立った鍋の底のようになってるらしい。以前はなかったのが数年前から徐々に出現し、今では至る所で泥が舞い上がってるとのこと。オマケに恐ろしいことに、僅かながら湖底の水温も上昇気味だと言う。泉脈が貧弱ゆえに生き残りを図る中でソープランド街となった雄琴も、今ならふんだんに溢れる源泉を誇る本格的温泉地になれるかもしれない(笑)。
 ネットに溢れるカラスが鳴いたやら猫が騒いだ、はてはヘリコプターが飛んでったとか、前兆云々言う前にオマエ、アタマの中を一回ちゃんと診てもらえ!と言いたくなるような「異変」とはどこか違うものを感じてしまう。

 とは申せ、これらの事象はただもうタロットカードの不吉なカードが次々と並んでってるようなもんで、ぢゃぁどうなんだよ!?っちゅう直接の因果関係を示すことも、いついつどこどこでこれくらいのことが起きますってことも証明できない。悲しいかな、明確な因果律を示さねば前兆は前兆とは呼べないのだ。こと地震に関していうならば、ごく僅かの例外を除くと現状ではあらゆる予知は後予知なのである。
 しかし、間違いなく言えるのは、東日本大震災でこれまでの静穏期に蓄積したすべての歪みが解放されたワケではさらさらなく、さらなる次の破局への幕が開いたってことだろう。そしてそれがひたひたと迫ってることを、各地から伝えられる異変はおぼろげながらに指し示している。

 備えあれば憂いなし、実は案外地震そのもので死ぬことは少ない。慌てず騒がず、キチンと各自がその時に向けて迎撃態勢を整えるしかない。

 2012.02.26

 
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