「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
停電上等


たしかにそれは近代文明の象徴であった・・・・・・。

 震災で原発がやられたせいで電気が足らんのだという。おれはめっぽう電気関係に疎くて詳しい仕組みは分からんのだけど、発電した電気は溜めとくことができないから必要に見越してすぐにドンドコ拵えなくちゃならない。それを給電量といって、こいつがまったく不足しちゃってるらしい。

 計画停電とかでピーピー言ってた震災直後の落ち込んだ時期でそれは大体1日3千万kwチョボチョボだった。それから東電は懸命に休止中の火力発電所を再開させたり、余所から貰い電気したりして電力確保に勤しんでるものの、もし昨年までのような電気の使い方をおれ達が続けると、間もなく訪れる夏の暑い盛りにはどんなに頑張っても1千万kwくらいショートしちゃうんだそうな。消費量・1日6千万kwに対して、給電量はあっちこっちから工面して何とか5千万kw、ってトコらしい。ちなみに4月の今日現在で給電量は4千万kwだから、あと1千万確保できたとしての話であるのは言うまでもない。夏で暑くなるっちゅうのにまことにお寒いことで、まったくもって覚束ないのである。

 そいでもって示されたのが「25%節電」、っちゅうものだった。四分の一、企業も家庭も電気使用量を減らしましょう、と。市民社会なんだからみんな仲良く公平に、と・・・・・・アホか、と(笑)。そんな小学生みたいな算術で上手く行ったら苦労せんわい、と・・・・・・あちこちから不満の声が噴出した。
 いくらアホな政府もナンボなんでも無茶と分かったか、もぉあっちこっちから叩かれまくってグニャグニャの東電をさらに叩いて給電量を確保させ、今度は「15%節電」と言いだした。どうやらこれはマジで行くらしい。

 そんなんで各企業は今や発電機の確保に狂奔してる。あれこれ創意工夫で頑張って使用量を15%減らすんぢゃなしに、どぉせ減らせっこないんだし、足らん分は自分たちで確保しよう、って算段だ。要するにやね、誰もちょっとも節電なんてする気なんてないっちゅうこっちゃね。

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 ・・・・・・どこまでおれたちは愚かなんだろ?こぉゆうのを世も末、と言う。

 別に25%だって良かったのである。いや、何となれば50%でも良かったかも知れない。たいへん不幸な天災であったとはいえ拡大・膨張主義一辺倒でやってきたおれ達に与えられた千載一遇の本格的な反省のチャンスを、金にあかすことしかできない企業の論理は、発電機などという何一つ工夫のない、もっとも最低の道具で潰そうとしているようにおれには思える。

 実はそれぞれがそれぞれに工夫して、なんて生温いことは考えてない。今回の震災は、日本の産業構造を大きくシフトさせるいい機会だったのに、と思ってるのだ。
 パチ屋も、自販機も、カラオケ・ゲーセン・ネカフェ・ファミレス・レンタル屋・・・・・・あ、スーパー銭湯なんかも要らないな。呑み屋もこんなに要らない。何で24時間煌々と灯りを点けたコンビニが日本全国津々浦々に行き渡っているのだ?何で広大なフロアを持つ巨大スーパーがロクすっぽ客もいないのにコンビニ並みに24時間開いてるのだ?店に入ればフタのない冷凍・冷蔵・温蔵陳列ケース、どう考えてもエネルギーの無駄遣いでしょ?オマケにそんな中でも最有力チェーンの会長の息子は現政権の要職ではないか(笑)。バカみたいな家電量販店・ユニクロに代表される巨大服屋、巨大玩具店、繁華街・・・・・・みんなみんなもっと減らせばいい。ほしたら25%なんてすぐに捻出できる、って。

 古典的な分類で第一次〜三次産業ってのがある。一次が農林水産業と鉱工業、二次が製造業、三次が流通・小売とサービスだったかな?細かいことは忘れたが、いつの頃からか一次は古臭くてダサく、三次は近代的でカッコイイみたいな風潮になって、日本の産業構造はムチャクチャに平衡を欠いてしまった。原料の作り手も加工する者もおらんのに、小売ばかりが世の中に溢れてるのである。こんな実態のないバカな状況はないと思う。それで食料自給率が40%だとか何とか騒いで一体どないせぇっちゅうねん。

 こぉいったのをジャカジャカ間引けば良いだけのことではないか。石原慎太郎は事あるごとに「タカ派」と言われるが、みんな言い淀んでハッキリ言わんことを言うてるだけのことである。
 先日の最初の停電騒ぎのとき、おれが言うまでもなくこれらの業界はかなり槍玉に上がってた。それに対する彼らの反論が奮ってる。「雇用が確保できなくなる」というのだ。実に笑わせてくれる。人件費を削るために、雇用とその向こうにある生活を散々破壊しておいて、どのツラ下げて言えるセリフだろって思うぞ。

 流通・小売業がパート・アルバイト産業であることに異論のある方はいないだろう。そして一方で、短時間だけ働きたい主婦層がそれなりに存在するのも事実だ。しかし、これだけ流通・小売が増えるとその数だけで絶対賄えるわけがない。それでも人件費は削りたい・・・・・・ぢゃぁどうするか!?
 どれだけ常用で一日フルに働きたい人でも、その条件で雇っちゃうと健康保険やら年金やら企業側でも負担が増えるもんだから、そぉゆうのに入らなくて済むくらいの時間でしか絶対に雇わないのだ。
 おれはひょんなことから母子家庭等でカーチャン目一杯働かんとアカンのに、仕事がそんなんしかないもんだから、短時間を三つも四つも掛け持ちしてる、ってな悲惨なケースを、これまであちこちの地方で実際にいくつも見たことがある。実に酷い話である。

 それが彼等の守るべき「雇用」ってことらしい。「食てチョン」とか「生かさず殺さず」のコトなんだな、雇用って(笑)。つまりはその程度のチンケさなのだ。
 そんなんとっとと削って、もう一度大きく農林水産業にシフトする、それが復興にも、戦後ひたすら歪み続けた産業構造の是正にも一番の近道と思うのだが?ああ、ついでに近年粗製乱造気味の下に「士」とか付く一群の職業も思い切って削減すれば、もっと世の中暮らしやすくなる。

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 都市部の電灯の氾濫にもウンザリだ。震災直後の節電真っ盛りの時の夜の暗さと、降るような星の美しさにおれは快哉を叫んでいたのだけれど、それも僅か数週間しか続かなかった。本当に会社帰りは電車のすし詰めには閉口しても、それを差っ引いて余りある駅からの道のりの清々しさだった。
 ところがいつの間にか上で悪態を吐いたような流通・小売がどうでもいいような看板を照らし出し、深夜営業を再開した。道路沿いのオレンジ色のナトリウム灯や公園の水銀灯、マンションの廊下の白熱灯も気付くと全てがまた灯されるようになっていた。ほとんど歩いてる人なんていないのに。

 物騒だとか何とか文句言う前に、そもそもそんな夜遅くまで出歩かんようにせんかったらエエだけではないか。夜が暗くなかったらどないすんねん?って思うぞ。夜明けと共に働き、日の入りと共に家に帰る、朝に礼拝・夕べに感謝(笑)、その当たり前をきちんとやってく、それだけで恐ろしく電気は節約できるはずだ。夜間は電力供給に余裕があるからそこまで切り詰めなくてもいい、ってな吝嗇な意見があるが、昼だろうが夜だろうが電気作るにもコストはかかるってことを忘れとりゃせんか?そこを減らすんだよ。

 すぐに「雇用の確保」の空念仏ばかり唱えず、社会全体をちょっとばかし縮小均衡・シュリンクさせるんだ、ってな視点で捉え直さなくてはならないところまでおれたちは追いこまれたのに、何一つ掴んだものを手放そうとしないこの日本国民。実に浅ましく、卑しい。

 そんな中、実に忌まわしいことに東京ディズニーランドが営業を再開しくさった。何と再開初日には1万人が並んだんだそうな。グロテスクまでに滑稽な1万人のバカ。
 おまけにエレクトリカルパレードだったっけ?夜のギンギン満艦飾練り歩きまで再開するんだという。ほいでもってあれに使う電気は夜の間に蓄電池に溜めてるから、節電ノープロブレムとかたわけた言い訳までヌかしてやがる。安い食べ物だからって粗末に食い散らかして良い、っちゅうてるんとあまり大差ない地平に居る論理だ。途方もなく電気を浪費する設備拵えといて昼も夜も関係あるか、っちゅうねん。

 ランドとシーを併せたTDRの1日の電力消費量は実に56万kwに上るらしい。ナイター1ゲームが4万kwってことを考えると驚異的である。純粋消費の1つのアミューズメント施設としてこれはベラボウなレベルと言って良い。そんなもんがどだいのうのうとこんな状況で営業してること自体が根本的におかしいのである。野球もサッカーも全部デーゲームにしてしまえと思うし、夏のクソ暑いときにスケートリンクなんて要らない。スポーツで被災地を勇気づけるのも結構だが、どいつもこいつもほざくなよ、って思う。そんなんはほんの一握りのプロ中のプロだけで十分だ。あとは有り余る体力で瓦礫の片付けにでも行ってろ。芸能人もだ。

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 ホント、これだけの震災を期に、この国を覆う詰まらない価値観が何か一つでも変わるかと淡い期待を寄せたのがバカだった。決しておれはオカルティストではないものの、最近密かに流行ってる滅亡論型の神託である「日月(ひふみ)神示」みたいにもっと猛烈に酷い目に遭わんと分からんのではないかとちょっと思ってる。

2011.04.27

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