「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
高速上の困ったちゃん達


何でこんなにエラそうなフェイスにするんでしょ?トヨタ”アルファード”

 俗に「ハンドルを握るとその人の本性が出る」などと言われる。実際、自動車で道を走ってるとそれはたしかにあながち間違ってはいない意見だなぁ〜、って気がしてくる。

 とは申せ、おれにしたって他人様に威張れた性格では決してなく、そんなんで道路上の運転マナーも推して知るべしなのであって、このようなタイトルで1章を割くのはまことに不遜の謗りを免れえないのだけれども、今回は半ば自戒の意味も籠めつつあれこれ書いてみたい。
 ただ、割り込みと追越しかアタマにない外車のマナーがどうこうとか、大型トラックが追い越しかけて車線塞いでるとか、よくある話は今さら面白くも何ともないので割愛しよう。

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 高速上の困ったちゃんを一言で要約すると「自分も周囲も見えない人」ってコトになるとおれは思う。そしてそれは単にスピード出してトバしまくる人ばかりではない。

 良くありがちなパターンで行くと、追い越し車線にへばりついたままトロトロ走って、どれだけ後ろにベッタリ着かれようがパッシングされようが決して左に避けない人。概ね100km/h以下のスピードであること、また女に多いのが特徴で、ハンドルにしがみ付くようにひどく猫背になって、前方だけをガン見しながら運転してたりするからすぐに分かる。あんな姿勢ぢゃそらルームミラーも見えんわな(笑)。
 要は怖くいわ判断力ないわでレーンチェンジが出来ず、そこから動けないのである。そもそも高速道路を走ろうとすることが間違ってると言わざるを得ない。車種的にはハッチバック等の比較的小型のファミリーカーに多い。

 同じ「追い越し車線トロトロ」でも、確信犯的な人がいる。これは上よりよっぽど迷惑なタイプで、速度的には100〜110km/hあたりをキープしてることが多い。タイプ的には初老のオッサンに目立ち、車種的には3兄弟時代のマークU/チェイサー/クレスタ、ローレル、またアコードやビスタといった二昔くらい前のコンサバな2リッターセダン、それも中下級グレードであることがひじょうに多い。
 この人たちにはおそらく「自分が正しいことをしてるのに何で道を譲らんとアカンのだ!?」どころか「おれが正しい運転マナーっちゅうモンを教えちゃるわい!」くらいな意識が強くあるんだろう。頑として退かないだけでなく、仕方なく左から抜きに掛かるとこちらを睨んだりもする。
 なるほど、実態はともかく高速道路での最高速度が100km/hに制限されてるのは事実である。それは認める。しかし、教えてあげよう。そもそも追い越し車線を走り続けることもまた道路交通法では立派な違反だし、全体の流れを無視して自己流を貫くこともこれまた明確に違反なのである。
 このカテゴリーの人は渋滞のときの動きにも特徴がある。前との車間距離を無闇に空けたがるのである。走ってるときの車間距離はある程度確保しなくてはいけないが、歩くのに毛が生えたような速度で何で10m近くも空けねばならんのか理解に苦しむ。多分、同じような独り善がりなルールがあるんだろう。渋滞でもし全てのクルマがそれだけ車間距離取ったらどないなるねん?
 病的クレーマーが初老のオッサンにやたら目立つ、っちゅうのはホンマ何だかよく分かる気がするわ。

 最近増えた気がするのでは軽自動車で追い越し車線を走り続けるケースもある。これも道交法違反ぢゃなかったっけ?ともあれ、見てみるとすし詰めで大のオトナが乗ってて、それもラテン系の濃い顔した外国人、ってパターンが多い。おそらくは南米系の「自称」日系人ではないかと思うが、チャンと免許持ってんだろうな?

 おれはこの「追い越し車線トロトロ」がなくなれば高速道路上の問題はかなり解消されるのではないかと思ってる。少なくとも大型車と軽自動車は追い越し車線に入ることを厳禁にすべきだし、「郷に入っては郷に従え」で、後ろから速いクルマが迫って来てすぐに走行車線に避けかなければ、それはそれで罰則を与えて良いとも思ってる。

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 も一つの困ったちゃんは大して速くもないのにやたらレーンチェンジを繰り返して追い越そうとする人だろう。冒頭に挙げたとおり、外車、それもベンツのAMGとかBMWのM3等でトバすんならまだいい。むしろフェラーリやカウンタック、ポルシェなんてスーパーカーだともっとジャンジャン走れよ、って逆に声援を送りたくなる。そりゃまぁ目の前にブレーキ踏みながら割り込まれりゃ怖いしムカつくし、おっかねぇよなぁ〜、とは思うものの、実際猛烈に速いんだし、ビシバシ抜かして行けるだけのポテンシャルもあるから、アッちゅう間に視界の彼方に消えてって、いつまでもまとわり付いて鬱陶しいなんてことはない。

 問題はさほど性能の高くないクルマでこれやるパターンだ。やはり2種類ある。

 一つはアルファードとかエルグラント等の「エラそうな顔した大型ワンボックス」だ。ハリアーやムラーノ辺りもここに含まれて来る。実際、これらは4リッター前後の強力なエンジンを搭載しており、従来のワンボックスからするとそりゃもう格段に速い。しかし、それはあくまでワンボックス同士での比較なのであって、マトモなスポーツセダンやワゴンと較べるとまったくお話にならないのは言うまでもない・・・・・・のだが、乗ってる本人たちにはどうしてもそれが分からないらしい。
 乗ってる人には30半ば以上の人が多いのだけど、おそらくはこれまでそれなりにクルマ好きでやって来た人が多いと思われる。つまりはトバしたい人だ。また、そんなに安いクルマでもないので経済力もそれなりにあるんだろう。メーカーがこれらの車種の顔つきを魁偉に仕立てるのも、まことにその勝ち組としての自惚れや自尊心を巧みに衝いてる。そのうちオプションでFRPで出来た「ライオン」とか「お不動さん」の顔がフェイスリフト用に出されるかもしれない(笑)。
 彼らはかなりスピードも出す。130〜40km/hでの巡航くらいなら、もぉヨユーでこなす。それならエエやんかとも思うのだが、ただ、車重がどしたって重いもんだから、なんぼトルク重視のエンジンとはいえ加速が悪く、また図体がデカく高さがあるもんだから切り返しが何とも野暮ったい。だから、スパスパと水スマシのように軽快に車列の中を渡ってくコトは出来ない。本人は得意がってるのかも知れないが、傍目にはフラフラ・ユラユラしてるワリにスピードだけが妙に乗った、とても危なっかしい運転に見えてしまう。

 ・・・・・・で、もう一つは最近気付いたのだけど、このテの運転をするパターンにカローラフィールダーとかウィングロードといった見た目だけ若向けスポーティーに仕上げて中身ファミリーカーな1500〜800クラスのワゴンが意外に多い。種車ショボいのにいろいろ外装パーツなんか付けてたりすると、もうまず間違いない。理由は良く分からない。乗ってる人には申し訳ないが、まぁ、財力や知識、経験といったいろんなモノが足りてない成熟度の低い人がこの系統の車種を選ぶことが多いからかな?と推察してる。
 逆に、もっと右に行ったり左に行ったりの乱暴運転やってておかしくないはずなのがあまり見かけない例として、ランエボ、インプレッサWRX等のスペック至上主義的なやたら密度の高い超バカっ速系が挙げられる。どうやらこの人たちは専らのフィールドが高速ではなく峠道だったりするからかも知れない。それとも痛車にするためのドレスアップばっかでほとんど乗ってないのかな?(笑)。

 ついでにトバしそうでまったくトバさないクルマも挙げてみることにしよう。何たって代表格は現行のGT−RとZだろう。だって乗ってるのん年寄りばっかなんだもん(笑)。宝の持ち腐れの典型例と言える。また、パキパキに改造された所謂「走り屋」系は、夜になると湧いてくるためか昼間の高速では滅多に見ない。さらに外車の中でもさらに値段が1ケタ違うようなクルマなんてーのもたいていは実に大人しいもんである。クラッシュするとゼニカネの問題ぢゃなく、その希少性で大損害だから丁寧に扱ってるのだと思われる。

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 おれ自身は前の4WDが鈍重だった反動で、今はそこそこ速いクルマに乗ってる。昔乗ってた401仕様のGPz900Rには程遠いといえ、それでも本気でアクセル踏めば数秒でスピードメーター振り切ってしまうような動力性能だ。国産だし、リミッターのカットもしてないから180km/hで頭打ちになるが、解除すれば多分220〜30km/hくらいまではラクに出せるだろう。100km/hあたりからの中間加速も笑ってしまうほどに力強い。また、巻き寿司みたいに高扁平のタイヤと硬くチューニングされた足回り、平べったい車体のおかげで姿勢変化や揺り返しなんかとはホンマ無縁だ。決してクッション性良いわけではないのに、ノンストップで2〜300km走ってもぜんぜん疲れない。楽チンこの上ない。

 でもメーター読みで250km/hオーバーだとか、たしか福井の武生だか鯖江ICから富山の魚津ICまで1時間(笑)とか、そんな目を三角にしてトバすようなことはもうしない。ポテンシャルはまさに文字通りのポテンシャル(潜在能力)で、ココ一発で踏みたいときの保険とか余裕と努めて思うようにしている。宝の持ち腐れっちゅう点ではおれも同じ穴の貉なワケやね(笑)。
 せいぜい例えば団子状態の集団から抜け出すとき、登りで速度が落ちて来てるのに追い越し車線にへばりついてるバカをいなすとき、そしてもちろん、上に揚げたような困ったちゃんを引き離すとき、そんなときにチョロッとアクセルを踏み込むだけだ。あとはぶっちゃけあまり褒められたスピードではないにせよ、基本的には流れに乗って淡々と走ることを心掛けるようになった。
 それは何もおれに道徳心が備わったとかではない。要は速度に対する欲求が失せてきただけのことである。

 これから先、自分自身が困ったちゃんにならない保証なんて何もない。運動能力も動体視力も判断力もだんだんに衰えてくんだろうし、その衰えに対して、それさえも判断力低下の一つの顕れで無自覚だったりすることもあるかも知れない・・・・・・って書いて実はもうとっくにそうなってたりして(笑)。
 自分では流れに乗ってるつもりで追い越し車線をトロトロ走ってみたり、先のクルマの動きを読んだつもりで無理にあちこちの車線をフラフラしたりなんてことがあるかも知れない。いやいや、それどころか近頃大流行の逆走やコンビに突入だって、絶対にやらかさない保証はどこにもない。

 ・・・・・・って、自分の、それも先のことをこれ以上書いても暗くなるんでこれくらいにするとして、ともかく、高速道路上に溢れる困ったちゃんは阿呆な行政のお陰でますます増えてる感がある。残念ながら彼等を治す特効薬はない。
 唯一できることすれば、おれ自身が2CVとか、昔のスバル360やマツダ・キャロルとかの「泣いても笑ってもスピードの出ないクルマ」に乗り換えることだろう。悪臭を断つために自分の鼻を利かなくするような逆立ちの理屈だけど。


スポーツカーが分からない人が乗る見た目だけスポーティなクルマ、って印象。トヨタ”カローラフィールダー”

2010.06.27

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