「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
肩凝り一代


これが「点温膏」だ!ヤワなのには飽きた方にお奨め。

http://www.kracie.co.jp/より

 肩凝りが酷くなったのはいつからだろう?

 元々、マッコウクジラのように頭が大きいこともあってか10代のころからそれなりに肩は凝ってたように思うが、気付けばどうしようもなくなってた。東京に越してきて数年した頃には既に肩凝りから来る手の痺れがうっすらと現れ始めていたから、昨日今日の話ではない。
 悪化させた原因だけはハッキリ分かる。スノーボードである。いや、フツーに滑っておればここまで酷くなることもなかったんだろうが、まぁそこは嬉しがりのビギナーの悪いクセで、ロクにテクニックも上達してないのに無理したのである。

 今でも覚えてる。最初は美方奥ハチだ。「ツリーランぢゃい!」とかヌかしてコースの端の森の中にチョロチョロ入ってって、そこからゲレンデに戻るのに2mほどの段差を一気に飛び降りようとして失敗したのである。イメージではそこで派手にメソッド決めて行くはずが、少々速度のノリが悪かった。
 右手を上げたままの変な姿勢でつんのめるようにして雪面に落っこちたために、右肩周辺を大阪弁で言うところの「グネて」しまったのだ。ビキッとかイヤ〜な音もした。しばらくはあまりの痛みに呻いて起き上がれないくらい痛かった。それでもようやっと起き上がって腕を振って、首を回すと案外大したことなかった。
 若さゆえか、しばらく湿布貼ってたら治ってしまった。それでさして気にも留めず、そのまま放置したのが古傷になってしまったのだと思う。

 その翌年、北陸の方のスキー場でもまた右肩をやった。練習の甲斐あってかなりの高速で滑れるようにはなってたから、まぁだいぶ進歩はしてたのだ。それでチョーシくれて、ゲレンデ端にできたリップで跳んでユックリ大きく回ってスイッチスタンスかまそうとして失敗したのである。右肩を巻き込むようにしてゴンゴロゴンゴロ2〜3回転しただろうか、まぁ、普段は凝り固まってナカナカ鳴ってくれない頸が気持ちよくボキボキ鳴ってくれはりましたわ(笑)。

 不幸、っちゅうか自業自得はさらに続く。軽いムチ打ち状態になってたのか、どうにも首の痛みが続いて頭が重い。たまに偏頭痛もして気分が悪い。そこで素直に医者でも行っときゃエエのに、軽く考えて風呂の中で頭の後ろで腕組みして頭を前方に引っ張ってみるとこれが意外なほどに気持ちが良い。スッとする。ギュウゥゥ〜、ともっかい。さらにスッとした。さらにもう一回・・・・・・とだんだん力を加えていったときだ。

 ----バッキィ〜ン!

 浴室に響き渡るほどの大きな音だった。寝起きに首を鳴らすような、そんなささやかなものではない。どだいあれは左右に曲げて鳴るものであって前後に曲げて音が鳴るなんて聞いたことがない。いやもう全くホンマ、頸の骨が折れたかと思ったよ。

 その瞬間はけっこう痛かったが、すぐに収まったし、それでより一層頭がスーッと軽くなったのも事実で、まぁ、30年間鳴ってなかった箇所が鳴ったのだな〜、と気楽に考えてたら、そのうちにこれまで以上の肩凝りに見舞われるようになって来たのである。今思えば何か辛くも留めていたものがこの頸ボッキンをキッカケに決壊したような気がする。

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 関東に越してきてからは座職中心となって肥ったこともあって、年々歳々肩凝りは酷くなる一方だ。手だけぢゃなく足先まで痺れる時がある。集中力が無くなり、どうにも考えがまとまらない。頭痛や眩暈を伴うこともある。重いっちゅうよりハッキリ痛い。ヘルニアちゃうやろか?と不安になるときもある。しかし、医者に相談してもレントゲン撮られるばかりで、「ま、まずは痩せることですな〜」などと呑気に言われて、治療は申し訳程度に頸を牽引したりするだけだ。そんなんおれが自分で頸持ち上げて引っ張ったほうがよっぽど効く、っちゅうねん。

 鍼灸院にも一時期足繁く通った。電極貼り付けてパルス流してピクピクさせたり、ヘンなソファーみたいなので強力な静電気かけたり、全身を引っ張るベッドに寝たり、置き鍼やモグサを載せたり、電気ストーヴみたいなので肩を温めたり、もちろん屈強なニーチャンにグニャグニャに揉まれたり・・・・・・とまるで拷問のような様々な処置が施されたが、しばらくの間良くなるだけで、あまり抜本的な解決になってくれないし、クセになりそうなので止めた。第一、金が幾らあっても足りない。

 そんなんだから家でもこれまでありとあらゆる湿布やら塗り薬その他を試してきた。最初にハマったのは業務用の「ハリホット」っちゅうヤツ。これ、普通の薬局では買えないのだけれど、知り合いのツテで分けてもらったらこれがもうムチャクチャに過激な温感作用。ぶっちゃけカチカチ山状態になる。貼った時は恐ろしく血行が良くなるのか症状は著しく改善する。ところが残念なことにあまりに効き目が強力すぎて続けて貼れない。かぶれてしまうのだ。また、寝る前に貼ると温かいのを通り越して熱くて痛くて眠れなくなる。オマケにいかにも昔ながらの湿布薬な匂いが凄い。東京に越してツテが無くなったのもあって、激越すぎるコイツは断念した。

 次にハマったのがフェイタスに代表されるフェルビナク系の塗り薬。いわばこのテの薬におけるニューウェーヴやね。若いんだか老けてるんだか、人気あるんだか無いんだか良く分からない高橋克典がCMやってたアレ。インドメタシン配合のバンテリンなんてーのもあれやこれや試した。フェルビナクやインドメタシンが一体どぉゆう氏素性のものかは知らないが、「1%!」とか箱に書いてあると、そんなちょびっと入れただけで効くんか〜!スゲ〜!とプラシーボ効果もある(笑)。
 宣伝文句になるほど偽りはなく、痛い時にはかなりソッコーで効く。何よりさっき書いた通り、おれの場合は凝ってるっちゅうより痛いのだから好都合ではある。しかし、しばらくして気付いたのだが、この薬には特段血行が良くなる感じがない。何だか、痛みを消してるのではなく、麻痺させて感じなくさせてるような効き方なのである。それに、1日の塗布回数が4回まで、と定められてるのも何だか不気味だし、出始めの頃はなぜか塗るタイプばかりで湿布が出されなかったのもいささか気味悪い。
 詰まらないところで「気にしぃ」なおれは、フェルビナクもインドメタシンもコワい成分とちゃうんかい!?と思えてきて、これらの常用を止めてしまった。値段が張るのも痛かったし。

 そこで再び過激温感系。ハリホットほどのサイズのものは市販されてないが、切手をさらに一回り小さくしたくらいのものなら容易に手に入る。「点温膏」「ロイヒつぼ膏」「おきゅう膏」等、名称は様々だ。置き薬でもいかにもパチモンな名前で似たようなのがある。中でも最初に挙げた「点温膏」は、寸法以外はハリホットと変わらないくらい熱く感じるのと、小ささゆえ貼る場所を少しづつずらせばかぶれの心配もないこと、それに比較的他より安いことからかなりの長期に亘って愛用してきたのだった。

 途中、家庭用の置き鍼もしばらく試してみたことがある。ホンの1mm足らずの針がちょこっと飛び出した小さな絆創膏を貼るのである。痛くもなんとも無い。思いっきり押すとちょっとチクッとするかな?ってくらいだ。しばらくの間これを貼りっぱなしにしとくと効くっちゅう触れ込みだが、おれにはサッパリだった。よく中国医学で鍼麻酔なんて言うけれど、おれには「北斗の拳」並みの荒唐無稽に思えてどうしても信じられない。余程深く打ち込むんだろうな。
 せんねん灸も試した。大きなネジみたいな形のものでモグサの詰まった細い軸の部分に火をつけて身体に貼り付けるのだ。モグサとは漢字で「艾」と書き、ヨモギの葉っぱの裏の産毛を集めて作ったものらしい。何でそんな妙な部分が効くのか良く分からないが、れっきとした日本古来の血行改善の民間療法である。
 しかし、これもおれには合わなかった。何よりジジ臭い。あと、温感が一瞬だけで効き目が何だか良く分からないのと、要は人工的な火傷であるからしてけっこう水ぶくれができて痕になるのも困る。

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 ・・・・・・とまぁ、こんな風に長年いろいろ試しては来たが、いずれもいささかハードコアっちゅうか、穏当な物が欠けていた感がある。子供の頃からの悪いクセで、きっついモンでないと効き目が薄いように思えてしまう性質なのである。だからフリスクでもガムでも歯磨き粉でもついついいっちゃん強烈なものを選んでしまう。同じノリでスノボも激堅、一時テニスにハマってたときも自分の技量を省みず、スィートスポットのメッチャ狭いのをギンギンのガットテンションで振り回していた。アホだと分かってはいてもそぉゆう性分なのである。
 だから全くフツーのものを使ったことがなかった。これって、正常位もロクに知らんのにディープなBDSMから入るようなもんだ。やっぱしモノには順序があるだろう、と、ある日思い立っていっちゃんお手軽なアンメルツヨコヨコだったかな?塗るヤツ、アレを買ってみたんですよ。

 これがたいそう良かったのである。じんわりまったりと温まるし、意外に長時間効き目が持続する(・・・・・・ちゅうか過激なものは最初のインパクトがデカ過ぎるのかも知れない)。熱すぎて眠れないこともないし、かぶれることもない。また、軽く運動して汗かくとジンジン成分が浸みて行くような気分になる、いや、実際肩が軽くなったのだ。なんか縮こまってた頸が伸びた気にもなった。
 青い鳥ぢゃぁないけれど、幸せは案外フツーのところにあったワケだな。

 ・・・・・・三流の教訓を引き出そうなんて気は毛頭ない。ただ、世の中に無数に溢れる頑固な肩凝りに悩まされている人の参考になればちょっと嬉しいな、と思うだけだ。

 良いっすよ、アンメルツとかトクホンチールとか。


昔ながらのこれ、ですよ。
2010.03.17

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