「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
歳末所感2008


妖怪「件」。ナンボ丑年で牛ゆうても、こんなんはイヤですな〜。

 清水寺が毎年発表する今年を象徴する漢字っちゅうのがあって、今年は「変」と決まったらしい。

 ヒネリに今一歩欠ける気もするが、たしかになるほどである。本当に今年は変事・・・・・・それもその「変」が、人の心性に関わる部分での「変」と言うしかないような殺伐として禍々しい事件の多い年だった。おれは毒気タップリに闘争的なようで根はとてもフラワーだから、こんな世の中はやっぱしイヤだ。平穏無事で暮らしていたい。

 世の流れは置いといて、個人的にも実にストレスの溜まる年ではあった。まぁ、歳取るほどに何かと余分な荷物は増えて行くから、だんだん自由になる時間が減って来るのは仕方のないことなのかも知れないが、それにしても猛烈に忙しかった。そしてその状態は未だに継続中である。そのせいでこの数年では珍しくまったく遠出できなかったことが、余計にストレスを溜めさせる結果となった。
 今だから告白するけど、サイトの活動休止を宣言をせざるをえないか・・・・・・って所まで一時は追い込まれたのである。だって、家帰って寝る時間もマトモに確保できねぇんだからどうしようもあらしまへんがな。だからたまの休日も昼まで寝てる。そりゃどこにも出掛けられんのも道理だわな(笑)。いつ頃だったっけ?夏の終わりくらいだったかな?まぁ、さほどまでに自分の時間を取ることができなかったのである。
 ギターネタが多かったのはそのせいだ。旅行に較べて手軽でチマチマしてる分、ホンの僅かな空き時間を使って気持ちを幾許かでも安らげることができる。だから随分今年は上達した。

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 さて、こんなにもおれは仕事にあっぷあっぷして溺れかけてるのに、世の中にはもの凄い勢いで失業者が激増中である。リーマンブラザーズの破綻以降、一気に表面化した世界的な金融恐慌によって坂道を転がり落ち始めた景気のアオリを喰らってのことである。なんでも、年末までに約十万人くらいが職だけでなく住むトコまで失うらしい。これは凡そ日本の人口の0.1%、千人に一人くらいに相当する。大したコトないやんか!って?いやいや、とんでもない数だ。働ける口があるだけ自分はありがたいと思わなくちゃならんのだろう。

 そんなんだから新聞やTVのニュースの表題で、毎日のように「期間従業員の解雇」だとか「派遣切り」なんて言葉を見かける。この前のバブル崩壊ではリストラなどと称して、もっぱら年功序列と終身雇用、右肩上がりの給料に胡坐かいてた中高年の正社員が槍玉に挙がったけど、今回は非正規従業員がターゲットになっている。どことなくその動きを見てると、椅子取りゲームでイスに座り損ねてるヤツを、さらにゲームから除名して部屋の外に叩き出そうとするようなエグさが感じられる。

 でも、ゆーたら何やけど、でも、これら非正規の労働者を十把一絡げにして論じるのはいささか早計、っちゅうか、誤解を恐れず忌憚なく言えば、少々間違ってやしないか?とおれは思う。

 そりゃまぁ、この寒空の下、仮住いの寮を追い出されたりなんかして路頭に迷うのはひどく辛くて切ない事態ではある。命の危険さえある。それは良く分かる。でも、だからってそれで帰省する金もない、って一体全体どぉゆうやっちゃねん!?いっこも貯金してへんのか!?国元に稼いだ金を送金してて一銭も残ってない、っちゅうなら十分理解もできるが、それなら何とか田舎に頼んで帰る金を無心すりゃエエぢゃないかと思うし、事実ほとんどの人はそうして帰って行ってるやんか。それも不可能な人って、何のかんので文句ばっか並べて仕事したくないんとちゃうん?と下衆の勘繰りの一つもしたくなる。あれこれ選ばなければ、たとえ糊口をしのぐだけにせよ間違いなく仕事はあるんだし。

 実のところ、今の非正規従業員っておおむね4つくらいにカテゴライズされるんぢゃないかとおれは考えてる。即ち企業に期間従業員で雇われてる人(A)と派遣の人(B)、そしてそれぞれの中で家庭だとか家族だとか自分以外に守るべき人がある人(a)とない人(b)・・・・・・その4パターンだ。
 ともあれこの4つのカテゴリーの内、(A)についてはこりゃそう簡単に馘首とか解雇なんてやっちゃいけない。昨今の報道に何となく違和感があって、おれは法律を調べてみたんだけど、会社が直接雇った以上はいろいろ果たすべき責任があるらしい。はい、仕事なくなったから終わりね、んぢゃとっとと出てってねっ!・・・・・・とはできない。
 (B)についてはあくまで派遣であるからして、企業はそのような責任を基本的に本人たちに対して負わない。だからこそ直接雇うよりは随分高い金払ってリスクヘッジのために重宝してきたワケである。それでも、そのうち(a)の人は心情的・同義的に非常にかわいそうな気がする。自分のことは二の次にしてでも、自分以外の人を守るために働いてるんだから。こりゃやはり税金投入してでもなんでも何とかしたらんとアカンのとちゃうか、と思う。

 問題は(B−b)な人々だ。若いのに多い。上司にペコペコしたり、スーツ着たり、髪の毛ちゃんとしたり、色んな会社の慣習に合わしたり、・・・・・・と、一つところに帰属することで発生するゴチャゴチャした束縛は金輪際イヤやし、かといって安い給料もイヤやし、努力するのもイヤやし、まぁテキトーに食えたらいいんだから同じ仕事やるならより実入りのいい派遣がエエで〜、ってな感じで将来に備えることもせず気ままな浮草稼業にドップリ浸かってた連中だ。諸君、時給がいいのにはそれなりにワケがあったのだよ。

 あまりクドクドは書かないけど、その日からいきなり路頭に迷ってる人には、そんな人が案外多いんぢゃないかな?

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 その一方で、会社ツブれかけてるのに年俸、日本円にして5億円とかとんでもない額の報酬をもらってるGMの社長とか、世界中の金を弄ぶだけ弄んで結局はそれが原因で自壊したウォール街の金のハイエナのような連中には、年収半分とかゆうてこれも日本円換算で3千万くらい貰ってたりするのがいたりする。日本にも沢山いるが、この辺のヤツ等の羽振りの良さに較べると随分せせこましい。

 根なし草のフワフワした連中も問題大ありだが、これはこれでムチャクチャおかしいんとちゃうやろか?

 ハイリスク/ハイリターン、っちゅうくらいで、極端に高い報酬とは高級会員制カジノの大穴みたいなモンなのだ。たしかにこういった連中は名門ナントカ大学なんか出ちゃったりして、MBAとか様々な資格取っちゃったりなんかもしてるのは事実だ。元々アタマが良かったことに加えて努力したのも事実だろう。でも、畢竟、経営や投機なんてどれだけ綺麗事を並べてもその本質は一種の高等な賭博に過ぎない。そしてお前等はその賭けに負けたのだ。素寒貧になれば賭場を退場するしかないのはガキにだって分かる理屈だが、これらの人々は今なお報酬に汲々としてブラ下がる。それはどう考えても許されることではないだろう。
 なのに、あろうことか、アメリカ親方日の丸主義が暴走した果ての恐慌で苦しんでるのは本人たちではなく、マネーゲームからもアメリカって国からも遠く離れた人々だ、っちゅう事実は、許す許さん以前に分からない。どう考えても理解できない。

 おめでたいプラグマティズムと御都合キリスト教の国に神の鉄槌の下らんことを!
 正義を振り回すクセに義を知らず、強欲を権利と履き違えた亡者の群れる国に災厄の降りかからんことを!

 ・・・・・・なーんて、熱くなってしまったやんか。

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 来年の干支は丑である。だから動物には牛が充てられる。災厄と言えば人偏に牛の「件(くだん)」がいる。コイツは字のままで人面牛とも言うべき半獣の妖怪である。世の中の乱れる前に普通の牛から産まれ、妖怪のクセに随分ひ弱なのだが、様々な災厄についての予言をするだけするとサッサと死んでしまう。そしてその語る不幸はすべて的中する、と俗に言われる。ウソかまことか関東大震災や太平洋戦争の前にも現れてそれらを予言したんだそうな。アメリカの牧場ではこれから先、何頭も産まれて来るんぢゃなかろうか?

 一時、ひじょうに熱中した中国の占術・四柱推命には「空亡」という考え方がある。ま、要は流行語にもなった算命占星学での「天中殺」とかイカサマ細木ババァの唱える「大殺界」なんかと詰まるところ同じなのだが、十干十二支の12年の星廻りの中で、どうにも上手く行かない年ってーのが2年づつ回って来る意味である。後の二つの占いはそれこそこの世の終わりのように書き立てておれ達を脅かすが、実はそれほど重大ではない・・・・・・で、おれの場合、子年と丑年がそれなんだそうな。つまり昨年から。おれはその期間に入ってる。月では旧暦で捉えるので厳密にはちょっと今の暦とはズレるが、大体12月・1月がこれに当たる。ハハ、何たることか、今がいっちゃん運気が落ち込んでるっちゅうこっちゃおまへんか!

 ま、ジタバタしてもあかんワケだから、詭計奇策に走ることなく来年も淡々とオーソドックスかつマイペース、細く長くじっくりと・・・・・・それこそ「牛の涎」で何事もやるしかないのだろう。ああ、そぉいやギターももう一本欲しいな。材は絶対、甘く太い音を奏でて軽量なマホガニーだ。数年前からは想像もできないが、開眼しちゃったのだから仕方ない。ああ、温泉もまたユックリ行きたいな。ああ、自転車野宿もまだ実行に移せてなかった。ああ、久しぶりに家族でキャンプもやろう。ああ、本も読みたい。ああ、DAWも中途半端なままだ。ああ、あれもこれも・・・・・・。

 ともあれ今年も一年が終わろうとしています。
 みなさまの新年が素晴らしい年となりますように。

会津名物「赤べこ」、これくらい飄々と行きたいもんですな。
2008.12.31

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