「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
ILLUMINATED 666・・・・・・或いは輝けるグロテスク


ネットで見つけた電飾まみれの例。ハッキリ言ってキチガイやな。

 クリスマスが近づいて電飾の家が町のあちこちに目立つようになってきた.。何でも聞くところによると、地域によっては住民同士の見栄の張り合いで電飾戦争状態となってるところまであるという。あまりに各戸の光が明るすぎて夜でも真昼のようになってしまい、電飾の意味が失せてしまってる町まであるらしい。歌舞伎町ぢゃあるまいしねぇ〜。そのうちイルミネーションの派手さを競い合うあまりイザコザが起きて殺人事件にまで発展したりして(笑)。
 今のところうちの近所ではそこまで過激な様子は見られないけれど、それでもあちこちの家で日本人のアホさ加減の象徴のように、列なったLEDは煌々と輝く。防犯上の効果ぐらいはあるのかもしれないな。

 ・・・・・・この書きようで分かるように、言うまでもなくおれは自宅を電飾で光らせる、なんちゅう悪趣味で得体の知れない習慣が大嫌いである。こんなことに血道上げてる家はみんな漏電で火事になってしまえばよいのにくらいに思ってる・・・・・・とまで言えばいささか言いすぎだろうが、夜、駅からの帰り道にこいつを見かけると何ともウンザリするし、私の家はこんなにミーハーでドアホです、と宣伝しているようにしか見えない。ましてや、こんなことする家がエコとか抜かしてたらドツキまわしてもいいと思う。
 そういや最近楳図かずおがトレードマークの紅白ストライプの外観の家を建てる、ってーのに反対した住民たったの2人(笑)から訴訟が起きてたけど、そいつらの家が万一この電飾ハウスならおれは絶対許さない。自己瞞着もはなはだしいトコだろう。まさか間違ってもそんなこたぁないよね?原告のわずかたったのお2人さん?

 話が脱線したが、一体全体みなさん何がそんなに嬉しいのだろう?何をそんなに浮かれてはしゃいでるのだろう?おれには到底、理解できない。

 かかる愚行に及ぶ原因をツラツラ考えるに、思い当たるフシとしてはやはり、「庭付きの新築一戸建てを買った」ってことが最大要因なのではないかと思う。家買って嬉しい、っちゅう気持を昇華するだけの表現力もないまま、自己顕示欲に駆られてゴテゴテと飾り付けるのではないかと。
 なるほど歴史保存地域みたいな古くからの町並みでこんなバカさらしてる例は寡聞にして聞かない。たいていが薄っぺらな新興住宅地だ。それに5軒長屋ぢゃ電飾もヘチマもないもんな。マンションでも、ベランダにチマチマと飾り付けてる例は散見されるが、そんなに一般的ではないし、何かベランダ専用の実物大(笑)の鯉のぼり見るようで、何とも貧乏臭い。貧乏なのはうちも負けじと電飾飾ろうとするその精神構造だけで沢山や、っちゅうねん。

 安っぽい電気仕掛けを喜ぶ子供がいる家庭、って線も考えられなくはないかもしれないが、それくらいの年齢の子供がいて一戸建てを買って、あまつさえ電気と資源の無駄遣いに過ぎないこんな電飾にお金を注ぎ込めるだけ家計に余裕のある家がそうザラにあるとは思えない。平均的に言って、小学生以下の子供を持つくらいの家庭の可処分所得はそんなに高くはない。だから、子供がいることだけを理由に電飾を這いずりまわすケースは多くはないような気がする・・・・・・え!?まさか奥さん、これのためにパートに出てます、って?

 いずれにせよ、新興住宅地にステロタイプな家を購い、自分の城(笑)を所有したことを、夢の終着駅のようにはしゃぎまわってるからこそできるワザなのではないかと思う。

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 こうしてあらん限りの悪態つくと、オマエそりゃ〜広い一戸建てを持てないモノの僻み根性ぢゃねぇのか、と言われるかもしれない。事実、たまにおれも一戸建てが欲しいな、と思うときもあったりする・・・・・・が、しかし、その指摘は当を得てない。
 大体この家買うときも一戸建てにしようかどうか、ヨメと一緒にかなり思案したほどなのだ。加えて、今の住居にしたって実はそんなに狭いわけでもない・・・・・・どころか、フツーに暮らすのなら十分以上に広い。これまでウサギ小屋とかなんとか自分んちについて記してきたけれど、それは単なるネタで、ホントはけっこうな広さがあったりする。ただまぁ困ったことに、それ以上に本やら楽器やらアウトドアグッズといった類のものが果てしなく増殖してるのだけれど・・・・・・あと、以前から地下室が欲しいと思ってるが、これだけは一戸建てでないとどうにも実現がむつかしいな。

 ぢゃ何でそぉせぇへんかってん!?とさらにツッコミ入れられそうだが、要は単に一戸建てを買った後にやらなくちゃならないもろもろの作業が「めんどくさかった」のだ。たまにクルマを洗ったり、網戸を洗うのでさえ億劫で仕方ないのが、朝な夕なに雨戸開けたり閉めたり、水まいたり、庭の手入れするなんて、想像するだけで寒気がする。真っ平ゴメンだ。広さにしたって、よしんばより広い家を手に入れたところで、遅かれ早かれモノは増え続け、早晩手狭になることは間違いないだろうし。

 誤解を避けるためにくどくど書いたけど、つまり一戸建てに対する憬れも嫉妬も、おれにはないってコトだ。いや、むしろガキの頃からおれは、「いつかは一戸建て」を目指して倹約に励む親の姿がイヤでイヤで仕方なかった。所詮は家っちゅうたって道具である。何か必要あってこその道具ではないか。

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 あまりに強迫的に意味とか理由を考えすぎなのかも知れない。実態としてはあまり何〜んも考えず、流行りモンだからと家をコテコテに電飾まみれに仕立て上げるだけの人や、隣がやったもんだから負けちゃおれんと、どぉでもいい敵愾心燃やしてキンキラキンにする人、あるいはそうして近所がみんな不気味にイルミネーション氾濫させる中で、自分ちだけ真っ暗なのもあらぬ噂を立てられやせんかと体面気にして、あるいは取り残されたようで寂しくて、不承不承要らぬ出費を愚痴りながら付和雷同してる人、なんてーのもかなり多い気がする。三番目はナサケないっちゃナサケないが、暗愚な大衆の無言の暴力に屈せざるを得なかったとしたらまことにお気の毒様、っちゅうより他にない。
 電飾ハウスはわりと密集する傾向にあるから、案外今書いた図式が正解なのかもしれない。主体的に自らの意思で始める人は少ない、と。

 面白いか面白くないかの二元論で「真っ暗よりピカピカしてる方が綺麗し楽しいやん」みたいな、まことに単純極まりない、脳髄あたりでの思考とも呼べない判断する人間はどうしようもなくクダらないが、いるんだから仕方ない。それにむしろそんな連中の方が、晦渋な表情で電飾ハウスをあげつらう人間よりはよほどとっつきやすいし、電飾のようにその人柄は明るかろう。論理性は今の世の中ダサい、ウザいんだしぃ〜。また、最初に1軒だけでやった家は、そのアッパーなお祭り野郎ぶりはそれなりに評価したっていい。

 でも、少なくとも言える。町中に1軒や2軒、イルミネーションの家があるだけならまだ良しとしよう。それが、そろいもそろってピカピカと、住宅地一帯が繁華街のようなけたたましい満艦飾になって明滅してるのは、そこにどんな理由があったにせよ最早グロテスクっちゅうより他はない。実に実に呪わしい光景だ。そのうち防災放送使って「ジングルベル」とか「きよしこの夜」まで鳴り始めたりしたらどうしよう。え!?山下達郎?(笑)

 ともあれクリスマスそのものにおれはほとんど興味がないけれど、せめてその聖夜とやらは静かに暗がりの中で迎えたい。


※表題はThrobbing Gristleのライブブートレグ「RAFTERS」収録の曲のタイトルによる。実はそれだけで深い意味はない(笑)。
2007.12.03

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