「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
地方の終焉


夕張メロン城の全景。

http://www.yubari-wv.com/より
 夕張市が「倒産」したそうである。厳密に言うと、「倒産」ではなく「財政再建団体に移行」と言うらしい。ケッッ!言葉でごまかしちゃいけない。こんな言葉のアヤでいくら繕ったって倒産は倒産ぢゃわいな。

 実に負債総額540億円。大規模倒産と言って構わない。

 炭鉱閉山後、バブルに浮かれて地に足の着いた政策を取らず、上っ付いた観光施設による景気浮揚策ばかり取ってあちこちから金を借りまくり、返せるアテのない借金の利息を短期借入金で穴埋めするとゆう愚劣極まりない方法で、とっくの昔に破綻してた財政を長年糊塗していた結果だそうな・・・・・・粉飾決算だな、いわば。こんなことして誰も逮捕されんのかよ?

 それにしても、だ。よぉもまぁこんなにボコボコと施設を作りまくったモンだ。人口わずか1万5千人ほどの町に、「ゆうばりめろん城」を筆頭に20以上の観光施設がある。
 「元日本屈指の炭田だった」ってコト以外、何の変哲もない町に、とってつけたような掘っ立て観光施設を次々こしらえたってどうなるもんでもない、ってコトは幼稚園児でも分かりそうな理屈だが、「地域活性化」のお題目の下、公共事業の利権にまみれた人たちには、それがどぉしても理解できなかったみたいだ。
 いや分かってはいたのだろうが、目先の利益に眼がくらんでたのだろう。

 通常、民間企業が倒産すれば給与はカット、賞与はゼロ、激しくリストラ、っちゅうのが常識だが、それでも職員には結構な額のボーナスが支給された、ってーんだからホント、つくづく公務員の無能と無自覚と恥知らずな強欲ぶりには感心してしまう・・・・・・がしかし、今日のテーマとは違うので割愛しよう。今さら公務員のバカをあれこれ言ったって始まらないしね。
 持論だが、日本の公務員なんて今の半分でいい、それだけだ。ちなみに土建屋は1/5でいい。需要が産業規模を決めるのだ。業界の都合で決まるのではない。

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 コトは夕張市だけの問題ではない。

 日本の戦後の地方政治は、「陳情」という名のタカリによって、いかに地方に公共事業を持ってくるか、財源を回すか、都会からの金を落とさせるか、だけで成り立ってきた、と言っても過言ではない。
 やれ鉄道を敷け、敷いたら電化しろ、駅増やせ、特急停めろ、道路作れ、舗装しろ、バイパス作れ、トンネル掘れ、高速道路通せ・・・・・・。交通インフラが済んだら、今度は「文化」だ。文化会館、**記念館、ホール、公園・・・・・・それだけのキャパを養えるほどの人口もなければ、今さら公園なんて造らんでもいいような自然あふれる海や山の町に、だ。

 地方に行って、おれは上に挙げたような施設を見ると、何だか田舎の温泉地の観光旅館の大宴会場で、どぉでもいいようなハワイアンショーやフィリピンショーを見せられたような気分になる。山の中の旅館でイカとマグロの造りを出されたような気分になる。すなわち、ウンザリして滅入る・・・・・・ま、おれのこたぁどぉでもいいか。

 で、その金はどこからもたらされたものかと言えば、ちょっと前に別のエッセーでも書いたとおり、とりもなおさず都市部の税収からである。公共予算の配賦が税収を大きく上回る自治体がほとんどなのだ。他人の懐ばかりアテにしたこの事実をタカリ、と言わずしてなんと言おう?
 田舎は優しく心温まる人々が云々、なーんて言うけど、これだけムダ金税金でふんだくられて怒らない都会の人々の方がよほど優しいで。

 「地元に金を落とす」、おれはこの言葉が大キライだ。ちょっとは自分等の稼ぎと力だけでやってく努力をしろ。これぢゃ自衛隊の復興支援についての街頭インタビューで、「全然電気も水道もつながらない」と文句たれてるイラク民衆とちっとも変わらないぞ。

 そもそもの性根がこんなんだから、コスト意識なんて芽生えようワケがない。夕張市にしたって、誰かが金落としてくれるだろ?って大甘なところから全ての議論が始まってるからこんなコトになるのだ。

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 ともあれ戦後60年、地方にはこうして累計すればおそらくは天文学的な額の公費が注入されてきた。それで地方は良くなったのか?

 鉄道は通ったが、できたときにはすでにそれは時代遅れだった。
 道路は舗装されたが、その先にある村が過疎化の前に崩壊しかかっている。村がなくなれば無医村もないわな。
 農協は盛んに農機具の更新を奨めたが、買った機械の使い途は減反政策のおかげでなくなった。
 グリーンピアはどうなった?シーガイアはどうなった?ハウステンボスはどうなった?
 白亜の新校舎に通う数名の子供、誰もいない文化ホール・美術館・記念館、そして荒れ果てた田畑・山林だけが延々と続く。

 これが今の日本の地方の実態だ。

 なるほど、昔に比べたら良くなった、と言う人もいる。「昔は電気もガスもなくてよ、ホント惨めな生活だった」とか言う。しかしそれでもあえて問いたい。一体全体、何がそんなに良くなったのか?と・・・・・・生活水準か?便利さか?幸せ度か?ならばオマエの在所からは、どうして若者たちがドンドン去っていくのだ?担ぎ手のいなくなった祭りの神輿を、年寄り数名で軽トラで運ばねばならんのだ?

 どっからこんなんなっちゃったんだろ?。

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 おそらく全てではないけれど、田舎であることの「劣等感」がそれらの問題の根底に大きくある。個人的にはそんな気がしてる。

 東京に較べて、大阪に較べて、都会に較べて、街に較べて、内地に較べて、本土に較べて、較べて、較べて、較べて・・・・・・劣ってる、不足してる、欠けてる、と。
 ・・・・・・それって振り回してる価値観の物差しは、拝金主義そのものだ。

 その劣等感こそが自主独立の意思の放棄、なりふり構わぬ予算の要求、どう考えても不必要な開発、安っぽくもグロテスクな観光施設の林立、若者の離反という事態を招いた。
 そう考えるとスンナリといろいろなことが理解できる。

 だから自信を持とう、などと安易な世迷言を口にする気は毛頭ない。どだいムリ、だからだ。地方が、そんな自信をとても持てるような環境ではない・・・・・・からではもちろん、ない。もっとおれの意見はキツい。
 自信を持つに足りるだけの「意識」や「思想」、「価値観」が、地方の人々の中に広く涵養されてるようには思えないからだ。

 されてりゃ、鈴木宗男みたいなヤツが再選するワケないもんな(笑)。近江八幡の品性下劣な町長が、あれだけ愚連隊まがいの行為をしてのうのうと町長のイスに収まり続けてられるワケないもんな。彼等だけぢゃない、日本のあちこちでいわゆる何がしかのたいていは土建屋がらみの「推進派」が再選される実態を見れば、いかに地方部のそういったものが貧困であるか良く分かる。

 未だ貧しいのは「生活」ではない。「性根」なのである。

 ・・・・・・辛口すぎましたかね。


あまりにも誰も利用しないので発行された高速割引券。そもそも作るな、そんな道路。
http://0155.jp/より
2006.07.12
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