「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
2015 三信(二日目・後半)

さらに北上して浦川到着。
ここには辛うじて開通当初の原形を留める駅本屋が残っています。
ダイヤは閑散としてますね。
対向設備だけでなく側線を何本も有し、特急停車駅でもあるんですが、それでも無人駅。
電車を模ったトイレが笑わせてくれます。

もう、旧型国電なんて残ってないのに。
地味な名所案内版。

この辺は静岡〜糸魚川構造線の西側にあって地質的なポイントが多数。
それにしてもまったく人影が見当たりません。。

昔は近隣の足として賑わったことが伺われるだけに何とも物寂しい。
今や地方の駅前はどこもかしこもまるで真空地帯のようです。

日本に鉄道が再び必要とされる時代って戻って来るんでしょうかねぇ。
中部天竜から山に上がって到着したのは有名な佐久間ダム。

日本の近代土木の金字塔と称えられています。
昭和レトロな取水塔が良い感じ。
昭和31年の完成当時、記念映画は作られるわ、切手は出されるわ、と日本中が熱狂したと言われます。
目の眩むような高さです。
当時、それまでは山峡の宿場町に過ぎなかった中部天竜の町は降って湧いたような好景気に沸き返ったと言われます。
そして完成後は一大観光地ともなったのでした。

しかし今、国内でマトモな観光地として成立してるダムって黒四ダムくらいでしょう。
思えば回顧の中の「昭和」って、どれもこれも30年代ですよね。

佐久間ダムができ、東京タワーができ、黒部ダムができ、新幹線が開通し、オリンピックが開かれた・・・・・・すべて30年代のことでした。
今は閑散としてますが、かつてここに鈴なりの観光客は溢れてたのです。
そろそろ次の目的地に移動しましょう。
中部天竜から東に外れ狭い山道を行くと、眼下に天竜河岸の急峻な地形にへばり付くように廃墟群が見えて来ます。

久根鉱山跡です。
古河系で銅と鉄の鉱山として隆盛を極めましたが、昭和45年に閉山となってます。
これ、これが見たかったんですよ。

半ば土に埋もれながらもここには今なお往時のトロッコのレールが残ってるのです。
軌道幅は500mm。

当然ながらかつてはもっと縦横無尽に敷き詰められていたようです。
閉山後は坑道からの鉱毒水を中和するための施設だけが稼働しています。
昔の写真を見ると、沈砂池のこの辺に巨大な浮遊選鉱場が建っていました。

その頃に来たかったなぁ・・・・・・。
道はさらに奥に続いています。

途中には詰所なんかも残っていました。
坑道前に到着。

ドアは固く閉ざされ、中から鉱毒水が大量に湧き出ています。
・・・・・・って、あまり大きな声では言えないんですが、実はここ、敷地内全体が立入禁止なんですよね。
もちろん、落書きしたり壊したり放火したりといったDQNのヤンキーみたいなコトはしませんけど。

・・・・・・でも、どうしてもこの眼で見て、写真に収めたかったんです。
変電所は今は倉庫になっていました。
ぶっちゃけ日本はムダに立入禁止が多過ぎるように思います。
平日は中和作業の監視等で若干の人が働いてる模様。
斜面を下に下ったところにもトロッコの線路跡。
そして巨大な三連のシックナー。
左に見えるのは今は資材置場になってるホッパー跡ですね。上屋は全部無くなっちゃってます。

選鉱後の鉱石は索道で中部天竜に運ばれていました。
全てはしかし、錆びて、朽ちて消えて行こうとしています。
この後、さらに下流の山の上にある峰之沢鉱山跡にも寄ろうと思いましたが、時間が押しててパス。
川沿いに一気に天竜二俣まで下って来ました。昨年も立ち寄った町です。

腹ペコでこの辺の鰻の有名店「本中清」行ったら、もう遅くて閉まっちゃってました。
店の隣にはかつて国鉄二俣線だった頃に活躍してたC58が保存されてます。

船底型テンダーの戦後機ですね。
保存状態はかなり劣悪で、錆びまくりの蜘蛛の巣張りまくり。
C58は客貨両用の万能機などと言われ、下馬評では最後に残るSLの最有力候補でした。
しかし、何でもソツなくこなすヤツが意外に中途半端で使えないのは人間の世界と一緒で、淘汰は意外に早かったのが現実でした。
・・・・・・などと呑気に感慨にふけってる場合ではありません!

何はともあれ私たちはハラが減ってるんです(笑)。
西鹿島駅近くにこの時間でも空いてる店を見付けてそそくさと移動。
「にゅうやっこ」ってフザけたような名前ですが、ここもかなりの老舗のよう。

元は「やっこ」ってさらに老舗があって、そこが廃業する時に暖簾を引き継いだとかなんとか。
ヨメも私も鰻には目がありません。
昨今のバカみたいな高騰ぶりからすると割りとリーズナブルなお値段で頑張ってて一安心。
そして上うな重、到着。
肝吸いについては私は大好物、ヨメはちょと苦手。

輪ゴム噛んでるような食感がイヤなんだそうです。
いやぁ〜!ツヤツヤしてはりまんなぁ〜!
実に美味い。

浜松界隈はさすが鰻の町で、どこの店に入ってもそれほど大ハズレはありません。
アッと言う間に完食!
こんな遅い時間にポロッと入って来て、エラいスピードで掻っ込んで、随分ヘンな客だと思われたかも知れませんな。
温泉こそありませんでしたが、今回の旅行はひじょうに中身の濃いコース取りが出来て、個人的には大満足の二日間でした。

子供に折詰買って、あとは暮れなずむ高速を一路東京に戻りました。
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