「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
無各性の砦の陥落


・・・・・・だそうです。残念。

http://www.2ch.net/より
 ニワカには信じがたいことだけど、あの「2ちゃん」がもうすぐ差し押さえ(!?)を喰らうのだそうな。ホンマかいな?

 なるほどさまざまな賠償請求訴訟判決をあまりにも無視/黙殺し続けてきたので、まぁいよいよ、という感もある。何のかんので日本は法治国家ってコトか(笑)。これから実際どうなるのかはちょっと見当がつかないが、何がしかの法的措置が取られ、あとは膨大な数に上る有象無象のサポーターをも巻き込んでの延々と続くいたちごっこになるのでは?っちゅう予測がもっぱらなされてる。
 世の中には「ザマミロ!いい気味だぜ!」って溜飲を下げておられる方も多いかも知れない。

 そりゃま〜おれだって勝手にスレにURLさらされ、カチンと来ること書かれてイヤな思いしたことはある。ホームページこしらえてる人で「全くそんな経験無い」って方が少ないんぢゃないだろうか。でもまぁ自分の場合、おかげさまで、っちゅうか、あまりネタとして面白くなかったのか、粘着されることも凸撃されることもなく、すぐにしぼんでしまった。
 そうしてまずまず平穏無事に過ごせているから太平楽を並べることもできるのかも知れないけれど、でも、おれはある種の必要悪としてだけでなく、もちょっとポジティヴな意味合いで2ちゃんねるのような「場」は存続すべきではないかと思ってる。あ、結論言っちゃった!(笑)。

 そう。必要なんだよ。積極的に擁護する気はないけれど、このような「場」のない世界は却って薄気味悪い。ウソの清浄だ。

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 ・・・・・・とは言ってみたものの、おれはコアな「ねら〜」ではない。月に数回覗く程度で、まずめったに書き込むこともない。祭りになってるスレなんて暴動の野次馬ぢゃないけど、おっかないので遠巻きにして見てるだけだ。それにどだい真剣に読んでも大半は無意味なことばっかだし、隠語や意図的な誤字だらけだし、大体においてみんな好き勝手に言いたい放題の無法地帯だから、その根拠がホントに確かなのかどうかも分からない。つまり情報ソースとしての価値や意見として役立つものはロクにない。

 ただ、ここには一つだけ真実がある。このアナーキー極まりない状態は人間の負の感情も含めた本音だ、ってコトだ。

 言うまでもなく社会や会社、家族といったあらゆる組織や集団は建前で動いてる。理想や積極性、秩序や規律といったものに支配された世界だ。それは、たとえ犯罪組織においてもだ。犯罪組織は目的が悪事であるだけで、その遂行プロセスは極めて理性的で生産的なものなのである。こうしてあちこちに錦の御旗ははためき、何がしか整合性のある共通目的を持って社会は日々大過なく運営されている。

 しかし、建前がストレスを溜めて疲れさせるものであるのは今さら言うまでもないことだろう。残念ながら全ての人間が前向きにのみ生きられる動物ではないのだ。おれだってそうだ。無気力や無責任、憎悪、嫉妬、敵意、暴力、陥穽、翻弄、讒言・・・・・・数々の負の感情やそれに基づく行動は、どうしようもない業としてほとんどの各人にあるワケだし、往々にして快楽でさえある。
 なぜをそれを誰もが顕在化させないかといえば、要は保身、それだけなのである。本当に恣意的に生きることができりゃぁこんなに楽しいことはないだろうけれど、一人で大っぴらにやっちゃうと、アイツはワガママだの常識ないだの吉外だのアタマおかしいだの、と袋叩きにされたり村八分にされたりするし、もし誰もがそうなってしまうと、今度はそれは同時に絶えざる生命の不安という戦々恐々の状態の中に身を置くことに他ならないからだ。何だか言い切っちゃうと寒々とした気分になるけど、それが事実だ。

 こうして蓄積されたストレスの捌け口として、2ちゃんが大いに機能してきたのは自明のことだ。

 今は情報化時代である。おおむね若い世代がやはり中心だが、世代的には意外な広がりを持って社会全体の情報リテラシーが上がってる。そんな状況で、昔ながらの「便所の落書き」でストレスの溜飲が下がるワケない。より高度な仕組みの器が必要とされない方がおかしい。
 500年前なら五条川原の落書なり狂歌で住んだものが済まなくなってきてるのだ。あ、15年くらい前までは「ソ連の小噺」なんてーのもあったよな(笑)。

 以上が「必要悪」としての存在意義だ・・・・・・って、まぁおれが拙い言葉で力まずとも誰もが思ってることだろう。

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 さて、遠巻きにして色んなスレを眺めてるだけのおれなのだけれど、いつだったかあることに気づいて驚かされた。

 おぼろげではあるものの「秩序」や「ルール」、「連帯意識」、つまりは「モラル」みたいなものが段々と醸成されてきてるのだ。「私怨」だとスルーされるし、あんまししつこかったら「粘着」とみなされるし、空気の読めない発言やスレ立てはボッコンボッコンにやられたりする。小細工を弄してバレたりしたらもっとタイヘンだ。
 何一つ明文化されたものなんてないのに、行き過ぎを自然と諌めたり、やんわり諭したり、ときには手荒くシバき上げたり、無視したりするシステムの成立。

 ・・・・・・それって「社会」そのものぢゃん。

 映画やドラマにまでなった「電車男」の例を引くまでもなく、人間は負の感情だけの動物でもないのだ。それに、真の無秩序や孤立に耐えれるだけのストレス耐性を備えた人間もそうザラにはいない。エントロピーは増大するだけではないのだ。

 個人的な話で申し訳ないが、以前、2ちゃんではないけど同様の匿名掲示板に勝手に画像を1枚のダイジェストに(それもチョーヘタクソに)されて「うp」されて、あれこれ興味本位かつ的外れに取りざたされそうになったことがある。
 言いたいことはあったけれど、ここでノコノコ出て行って発言・反論してもそれこそ「降臨」とか言われてよけいにややこしくなるだけだ。それどころか、すべてが手の込んだ売名行為とか勘違いされたりでもしたら、「祭り」「炎上」・・・・・・うわわ!結果を想像するだに恐ろしい。仕方なくおれは静観(・・・・・・たって内心オロオロしながらだけど、笑)するしかなかった。
 ところが、だ。しばらくするうちに、何でか知らんがそのスレ立てた本人に対する非難が続出して、その内スレごと全部消えてしまった。細かい論旨は忘れてしまったけど、いくつかはかなり理路整然としたもので、要は「ネット上で発表するリスクも踏まえてコンテンツ発表してるところを無闇にいじるな」といった意見だったと思う。
 すごくありがたかったし、ネットの世界も捨てたもんぢゃないなぁ〜、とシミジミ感じた。

 この事実をどう読み取るかは人それぞれだろうし、その流れや判断ポイントを手放しで是と評価すべきなのかどうかもむつかしいが、それでも、情報化社会と背中合わせに失われた「村的な紐帯」のようなプリミティブで本来的なコミュニケーションを学習させる場として2ちゃんねる、あるいは類似の掲示板は機能してると言えないだろうか?

 これが2点目の意義だ。おれって甘い?(笑)。

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 ともあれ今後色々な法整備は進むだろうから、もし2ちゃんねるが命脈を保ったとしても、これまでのような無軌道な放埓が許される場として存在することはむつかしくなってくるだろう。しかし情報化社会そのものはさらに拡大・高度化することはもはや疑う余地がない。そんな中で人間の負の感情が行き場をなくして深く沈潜して行くことは、それはそれで何だかとても恐ろしいことのように思う。

 辟易しつつも、一方でその突き抜けた書込みに胸のすく思いでいる人はやっぱし多いと思う。無くなっちゃダメだよ。絶対。

2007.01.15

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