レッツゴー爆食!!(T) |

やよい食堂の天丼大盛。おれが食ったチャーハンはギャラリー見てね。
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http://tom-style.net/mt/archives/001859.phpより |
映画のロケにも使われたという古びた店内には、黒い札に書かれたメニューが並ぶ。どれも値段は安い。おれは最後の数口のチャーハンがどうしても口に含めず、さっきから四六のガマのように脂汗を流している。
・・・・・・醤油の町・野田は、古くから利根川の水運で栄えた廃市だ。町のそこかしこに古い佇まいが、静かに崩れ落ちながらも色濃く残り、何気ない裏通りを歩いても、忘れていた風景に出会えるような場所である。
その一角に「やよい食堂」はある。周囲の風景に同化した古びたモルタル作りの店は、いかにも田舎町の大衆食堂といった風情で平凡そのものなのだが、一歩店内に入るとそこには、爆食の修羅場と化した異様な光景が展開されているのだった。
意を決して、おれは最後のチャーハンを口に押し込み、ワカメスープと水で無理やり流し込んだ。肩で息をしているのが自分でも分かる。そしてよろめきながら店を出て、しばらく爆食は封印しよう、と思った。
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ガキの自分、おれは病弱で偏食が激しく、とんと食べ物に興味がなかった。癇症のところがあり、少しでも気持の悪いものは全く受け付けないし、何より熱出して寝てばっかしで、そのためハラが減らず食えなかったのだから仕方ないと思うのだが、おれは親を始め周囲の人々から、好き嫌いの多さをしょっちゅう非難されていたのである。このことはけっこうトラウマとなって残り、その反動で今はどちらかといえば大食漢の方である。
ことに大盛系に目がない。何かバカバカしくも、チャレンジングなトコが良い。その一方で、食い放題にはさほど興味がない。「ほしいままに」っちゅーのは何だかいさぎよさに欠ける気がするのだ。小学校1年のとき初めて、大阪万博でバイキング食ったときには「好きなものだけ取れるなんて、何て素敵なシステムだ!」と感動したんだけどね。
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初めて大盛に挑戦したのは「王将」の「餃子10人前、食べたら無料」ってヤツだ。高校2年の頃だと思う。その数60ケ。今とは違い、当時はかなり1ケが大きかったが、おれは楽勝だと思っていた。なぜなら、普段から5人前+ラーメン+焼飯くらいはヨユーで食えてたからだ。
友人たちに宣言し、前日に「予行演習ぢゃい!」とか言って5人前を平らげたおれにはしかし、意外な伏兵が潜んでいたのだった。当時ちょうど、母親がちょっと病気で入院していたのだが、家に帰ると近所のオバハンが晩飯を作りにやってきてくれたのだ・・・・・・頼みもせんのに(笑)。
このオバハン、いささか変わった人で有名だった。どう変わってるのかというと、無理やり人を饗応して、イヤな顔すると勝手にグレて悪口を言いふらして回るようなところがあるのだ。いわゆる「好意の押し売り」ってヤツだ。断れば何言われるか分からない。おれは泣く泣く、持ってきた大量のカレーを食う羽目になってしまった。さして美味くもないフツーのカレーを、だ。
さらには、むりやり山盛りのおかわりまでさせられた。さすがの温厚なおれにも、殺意がよぎったのは言うまでもない。
翌日、宣言した以上はやらなくっちゃなんない。おれは朝も昼も抜いたが、それでも胸ヤケしまくり。最悪のコンディションでおれは餃子に挑んだのだった。制限時間は30分。
結果は負け。全部食ったことは食ったのだが、最後の2個、おれは正しく嚥下できなかった。それを認めた店員は冷たく言い放った・・・・・・「ちゃんと胃に入れなアカンで」。
その後、おれは復讐戦に挑んではいない。理由はモラルとかそんなんではない。受験勉強が忙しくなったし、そして京都に暮らすようになると、あちこちで王将の餃子タダ券が配られており、敢えてそんなリスクを背負ってまで挑むものではなくなってっしまったのだ。
特に、山科の教習所に通っていた時など、その近所に王将の工場があって、前の直営店では5人前食えばタダ。オマケに何度でもOK。そんなの昼寝しながらでもできるわなわな。おれはその店で金を払った記憶がない。
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ネットで見つけた餃子10人前の画像
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http://tomocha.net/diary/より |
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さて、大学に入るとその近く、川端通沿いに「K」というカレー屋があって、ここのカレーは尋常ぢゃない、という噂だった。そのうち友人のNだったかな?実際に凄まじい量を目撃したと言う。何でもそれはその店でいっちゃん大きいヤツで、刺身の舟盛りのような状態になってたというのだ。それを聞きつけたおれは、さっそく出かけてった。
件の「舟盛り」はいくらなんでもムリだろうから、今日は偵察がてら少しフツーのランクにしよう。第一おれは今、二日酔いだ。それに、この店は残すと、罰金に加えて、極めて屈辱的な「ハリセン」のペナルティが待ってるというではないか。
店に入ると、みんなけっこうな量のカレーを食ってる。しかし、どう見てもそれは食えない量ではない。「何ぢゃぁ、ヨユーやんけ!」とおれは心の中でつぶやいて、おれは4段階あるうちの下から2番目、たしか「ジャンボ」を注文した。
・・・・・・おれは事前のリサーチ不足を後悔した。みんなが食ってたのは「普通」だったのだ。
オッサンはうれしそうに直径40cmくらいある平皿の1/3ほどのスペースを使ってメシを積み始めた。しゃもじで貼り付けるように白米はどんどん高く盛られていく。その量、目測でおよそ2.5合から3合。ルーが薄く広くかけられた様子は、まるで島のようだった。カレーに浮かぶメシの島、だ。オマケにサラダとコーヒーがサービス。要らん、ってば(笑)。
それでもおれはハリセンの刑だけは受けたくなかったので、必死の思いでクリアした。途中でルーがなくなったのキツかった。二日酔いの吐き気とは違う嘔吐感がこみ上げてくる。スクーターで近くの左京区役所にたどり付いてトイレに駆け込んで、おれは吐きまくったのだった。 |

これ、これですよ
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http://gourmet.yahoo.co.jp/gourmet/restaurant/Kinki/Kyoto/guide/0203/WV-KANSA-8RBXO001.htmlより |
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京都は学生の町なので、大盛系には事欠かない。百万遍の角の「A」という店で洗面器のような丼に入ったカツ丼を食ったこともあるし、茶山の「S」というお好み焼き屋で軽自動車のタイヤの直径くらいのを食べたこともある。白川通の「パーラー小山」の「お化けパフェ」や、堀川北山・「ラーメン日本一」の「ド根性ラーメン」に「ド根性餃子」、千本丸太町の「金糸照り丼地獄盛」(これは実際大した量ではなかったが・・・・・・)、三宅八幡近くの喫茶「ロシナンテ」の異常なスパゲティ、その向かいの地下にあった「山城飯店」の10円増で死ぬほどテンコ盛りになる定食のご飯、下鴨本通のラーメン「H」での替え玉しまくり・・・・・・etcetc。
・・・・・・ホント、大食いってバカバカしくも、楽しく、罪のない行為だ。太るという罰は受けるけど(笑)。
食い散らかすことと大食いは、全く異なる。大食いは出されたものは全部食って残さないことが、最低にして唯一のルールだからだ。だから「でぶや」のような食い方をおれは良しとしない。
吐くのも無論、望ましくない。だから店では残さず食ったとはいえ、「K」におれは敗北したのだ。
しかし、大学を出て勤め人になってから、おれはあまり爆食をやることはなくなった。やはり、食べ物を粗末に扱ってるように思えるし、次の日の仕事に影響するし、いい歳して大食いでもなかろう、って思えてきたからだ。
美味しいものを適量食べるのが一番なのだ、腹八分目医者要らず、っちゅーではないか、と月並みなことを自分に言い聞かせて15年以上過ぎた。
それなのに、ああそれなのに、冒頭のていたらくである。
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もっと書こうと思っていたが、PCに向かって列挙しているうちに何だか胸が悪くなってきた。
おかわりはまた今度、ね。 |

ど根性ラーメンとど根性餃子、餃子は昔、一人前5ケだった
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http://yomoda-h.hp.infoseek.co.jp/diary2002_June.htm
http://rockz.web.infoseek.co.jp/Touring2002/Touring20021208.htmlより |
2005.07.18 |
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