「シズカナカクレガ」ヘヤフコソ
食材偽装ニ思フ


さて、どっちでしょう?(笑)

 近所のコンビニにタバコを買いに行ってナニゲに雑誌のコーナーを眺めてたら、ほら!モノマガジンだとかグッズプレスだとかなんだか、買い物雑誌みたいなんあるでしょ!?あれの表紙にデカデカと「消費税アップ目前!これだけは買っておきたい100選」みたいなキャッチコピーが出てて、何かもぉウンザリしてしまった。

 いやいや、別に清貧に甘んじ高踏を気取れ、とまでは言わんが、いくらなんでもちょっとさもし過ぎやせんかい!?卑し過ぎやせんかい!?って思ったのだ。税にはこれ以上ビタ一文払う気はないけど、高額商品にはナンボでも払いまっせ〜!っちゅうコトだもんな、これって。欲望の剥き出し加減で行けばエロ本よりよっぽど猥褻な気がするで。
 そりゃおれだって割安にモノを買いたい。税金だって好きではない。厚生年金保険料はもっと好きでない。何故ならどっちもいくら払ったって何か自分に少しでも還元されてる気がしないからだ。健康保険料は、半分くらいが老人ナンタラとかゆうて拠出・・・・・・まぁ国からカツアゲされてるとは申せ、今や何かとおれも医者通いが増えて、ちったぁ払った分のメリットを享受してるような気もするな(笑)。

 それでも、そういったキモチのもう一方には恥とか中庸の感覚が欠かせないと思うのだ。まぁ、おれが古臭くて頑固なだけなんだろうけどさ。

 ・・・・・・で、今日のお題の食材偽装についてだ。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 騒動の発端はたしか大阪の名門・新阪急ホテルだったかと思う。その後もまぁ出るわ出るわ出て来るわ、おそらくは日本のビジネスホテルを除くちょっと小洒落たラウンジやレストランを備えたホテルの全てがやってたんぢゃないかと思う。しかし、おれは一向彼らを責める気になれない・・・・・・っちゅうか、絶対やってるに違いないと思ってた。
 だってさぁ〜、やらんとあんな値段ぢゃとても出せんでしょ?そんなことさえ分からないバカが自分の無知と不見識を棚に上げて、騙されただの何だのほざいて、そいでもって臆することなくのうのうと返金してもらってる。そんなに消費者っていつも被害者なんかよ?弱者なんかよ!?森永ヒ素ミルク事件とかカネミ油症事件とかサリドマイドなんかと同列に論じるなよ!?消費者庁とやらなんて要るのんか?・・・・・・と。

 ともあれ偽装の内容そのものはけっこうセコくてちょっと面白いんで、偽装されたっちゅう食材で新聞等に紹介されてたのを以下に列挙してみることにする。

    ●霜降りビーフステーキ ⇒ 脂肪注入
    ●鮮魚のムニエル ⇒ 冷凍の魚(フツー、一口食えば分かるで)
    ●フレッシュジュース ⇒ 濃縮還元
    ●朝採りレタス ⇒ 昨日の朝収穫
    ●おふくろの味 ⇒ おっさんが調理(・・・・・・おっさんのおかんの味の再現やったらおらぁ問題ないと思うがな、笑)
    ●手作り風ハンバーグ ⇒ 機械(・・・・・・だから「風」ちゃいますのん!?)
    ●国産ウナギ ⇒ 中国生まれ、日本育ち
    ●芝エビ ⇒ パナメイエビ(・・・・・・実はパナメイの方が臭みがなくて美味いって説もあるんだが)
    ●クルマエビ ⇒ ブラックタイガー
    ●地鶏 ⇒ ブロイラー
    ●伊勢海老 ⇒ ロブスター
    ●九条ネギ ⇒ フツーのネギ
    ●和牛 ⇒ 豪州産
    ●マスコ ⇒ トビッコ(味も直径も全然違うやん!?)
    ●信州蕎麦 ⇒ 別のトコ産(・・・・・・蕎麦は国内なら北海道の方が断然美味いんだけどな)
    ●手作りチョコソース ⇒ 出来合い製品

 ・・・・・・ワハハハ、書けば書くほど客がアホすぎることが良く分かるな、ホンマ。

 以前からちょっと懇意にしてる洋食屋があって、まぁそこはそれなりにお値段が張るんだけど、かつてそこのシェフと話してて実は今回のこの「業界の常識」に話題が及んだことがある。出だしは何だったっけ?ああ、メインディッシュのステーキだかローストビーフの肉質と量についてとか、まぁそんなんだったと思う。彼は元々は超のつく某有名ホテルで修業してた人だ。

 要約すれば、ここまでおれが書いたのと同じだ。曰く、「本当にそんな食材をあんな値段で出せるはずはない。そこを分かって、いい雰囲気でいい夢見れたって気持ちよく騙されてやんないと、そもそもが人件費のカタマリなホテルの高級レストラン商売なんて成り立ちっこない。大体5千円だか1万円だかで、日本や世界中の高級食材をふんだんに盛り込んだ料理なんて、いくら薄利多売ったってどぉ工夫したってムリです。一人前2〜3万は頂かないとペイできない。うちのこの牛肉、確かに小さいしちょっと薄いでしょ!?でも、本当のブランド牛使うとこの値段でもこれくらいで精一杯なんです。いや、いくらでも騙すことはできますよ。USでもオージーでも今はいろいろ肥育は工夫されてて、素人には分からないのがいくらでもあります。絶対お客さん(←おれのことね)だって分からないと思う。そしたら2倍どころか3倍くらいの大きさに出来ます。でも、うちはというか私はそれはやらない。プライドとか正直とかそんなエラそうなんではないんですけど、やらない。だからまぁ、こんな小さい店のまんまなんですけどね(笑)」・・・・・・と。

 いい話だった。

 そうそう、シャバに出てきた堀江貴文がインタビューでおれの言いたいこととほぼ同じ主張をしてる。彼が語ってるのはTVっちゅうメディアが詰まらなくなってることについてって文脈で、報道番組に関して語ってるところだ。

 「・・・・・・今日もテレビをたまたま見ていたら、ホテルのメニューの偽装事件をやっていました。芝エビじゃなくて、なんちゃらエビを使っていた、みたいな話をねちねちと。それを識者の人たちが「とんでもないですね」「ありえないです」とかコメントして。でも、僕らが聞きたいのはそこではない。ぶっちゃけ偽装されて困るかといったら、たいして困らない。多くの会社がおそらく同じようなことをやっていて、今、慌てて社内を調べさせていると思いますが、なぜそういうことが起きてしまうのか、背景を調べなければいけない。
 消費者だって、マグロのトロがその値段で食えるのかとか、ちょっと考えようよと。明らかにおかしいじゃないですか。どういうふうにそのニュースをとらえるべきかを、解説してほしいですよね。」
  (東洋経済オンライン「ホリエモンが、もしメディアの経営者だったら」2013.11.29)

 実に彼の主張は分かりやすく、肯首できる。若きIT長者のトリックスターとしての名声は逮捕・収監によって完全に地に堕ちたとはいえ、しょうむない建前の正義を振りかざしてる連中よりはよっぽどマトモである。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 冒頭のネタも、食材偽装も、グルーポンのおせち料理も、何年か前にあったユッケの食中毒も、概ねその根っ子は同じである。「金は払いたくはない、でもいい物は欲しい、食いたい、しかしその真贋や差異は分からないし学ぶのもめんどくさい、でも供する側がエエっちゅうてんだからエエんでしょ!?」っちゅう消費者の無理体な欲望や横着がかかる事態を招いている。スーパーで売られてるような安くて一般的な食品のメーカーがどこも苦しんでる(豆腐屋なんて無茶な値入要求に応えられず激減してるらしい)のも、実は同じ根だ。

 とにかく「消費者=弱者」っちゅう、硬直してステロタイプな図式はひどく癇に障る。それはポピュリズムのドグマそのものであって、衆愚政治と何ら変わるところがない。
 お客様は決して神様なんかではない、無知で横暴で強欲、かつ無慈悲な存在だとおれは昔からことあるごとに言ってんだけど、世の中の流れはどうやらそれを頑ななまでに認めようとしないみたいである。クレーマーなんてこの流れの中で生み出された怪物以外の何物でもないのに。

 食材偽装が誉められたコトか?っちゅうたら、そらまぁ決して誉められたコトではなかろう。
 無論、積極的に推奨されるべきコトでもないし、庇いだてするコトでもない。それは間違いない。

 しかし、そうでもせんと生き残れないほどになってたのも事実で、ここまで消費者の欲望が高度化・肥大化・複雑化し過ぎた今の時代に於いて、誰が本当にそのことを責める権利を有するのか?とおれは思ってる。また、アホな個々の消費者はともかくとしてその代表ヅラして散々の御高説を垂れてくださったマスメディアや識者の方々が、消費者をそのようにしたのは何なのか?あるいは誰なのか?を考えず、また頬かむりして何ら発信もしないままこのまま行くのはとてもマズいように思う。

2013.12.15

----Asylum in Silence----秘湯 露天 混浴から野宿 キャンプ プログレ パンク オルタナ ノイズまで
Copyright(C) REWSPROV All Rights Reserved